◇コロナ下の拡張財政が招く「ドルの信認棄損」が悪くない理由 | 12/8Emergency発令「8/1510時看板犬ぽんたが13歳で心不全で他界。生き霊を飛ばしていた経験を天国でフル活用天国と地上と行き来自由!」

12/8Emergency発令「8/1510時看板犬ぽんたが13歳で心不全で他界。生き霊を飛ばしていた経験を天国でフル活用天国と地上と行き来自由!」

2月23日0時をもって、Emergency再発令。引き続きCOVID-19「非常事態宣言」。6月30日をもって、Emergency警戒に移行!

6:01 配信

財政拡張によってドルの信認が棄損し、ドル安になることは、必ずしも悪いことではない(写真はイメージです) Photo:PIXTA

 

● なりふり構わぬ金融・財政政策 政府債務とドル信認の関係とは

 世界各国はコロナショックに対抗すべく、なりふり構わず金融・財政政策を集中投下している。財政政策で言えば、約8兆ドル規模の対策が全世界で講じられていると言われている。これは世界のGDP(約80兆ドル)の10%相当であり、文字通り未曽有の規模だ。

 また、その4分の1以上が米国の経済対策(2兆ドル強)に由来していることも注目されている。こうした措置は、資産価格の先行きにいかなる影響を持つだろうか。

 世界中でいよいよ金利が消滅していることを踏まえれば、ショックの終息に合わせて株式を筆頭とするリスク資産価格に資金が流れることは、容易に想像がつく。では、為替市場におけるドルの立ち位置はどのように変わってくるのか。政府債務とドルの信認という定期的に注目されるテーマをこのタイミングで考察しておくことは、非常に重要であると筆者は考えている。

 というのも、過去6年にわたってドル高が続いてきたのは、金利が消滅する世の中にあっても、米金利だけは相対的に水準が維持されてきたからだ。しかし、その米金利も3月の怒涛の利下げによって全て吐き出されてしまった。

 コロナショックを受けた有事が続く限り、ドル需要は相応に残るのかもしれないが、ポストコロナの金融市場では、膨張した米政府債務に焦点が集まる可能性があることも留意したい。市場のテーマは急に変わるものであり、今から考えても早過ぎることはない。

 すでに通貨スワップ市場では一連のドル資金供給オペが奏功し、ドルが対ユーロ、対円でプレミアム(すなわちドルが余っている状態)に転化している。ドル調達難とドル高をリンクさせて議論が進んでいたのはもう一昔前の話だ。

 現在、米国について報じられる拡張財政の規模とIMFの世界経済見通しで示されている予測値などを合わせて試算すると、2020~2021年の米国の政府債務残高は名目GDP比で130%に迫る勢いである。これは120%弱まで積み上がっていた第二次世界大戦直後(1945年)を優に超える水準である(図表1参照)。

 ドル相場と政府債務残高の間にはある程度安定した関係が見出せるが、これはフローの財政収支との間で見ると、さらに軌を一にしているようにも見える。少なくとも2019年から2020年にかけて、GDP比で▲3.6%だった赤字が▲15.4%へ4倍以上に膨らんだことに伴って、ドル相場がこれから下落しても全く不思議ではない(図表2参照)。

● ベースマネーと共に急増する ワールドダラーが示唆するドル安

 また、危機時の財政・金融政策対応とドルの信認というテーマでは、リーマンショック直後にワールドダラーという概念がしばしば耳目を集めた。これはFRBのベースマネーとFRBの管理するカストディ勘定の残高合計である。ここでカストディ勘定とは「FRBが保管・管理する海外投資家が保有する米国有価証券の残高(Custody Holdings, Securities in Custody for Foreign & International Accounts)」である。

 あくまでイメージに過ぎないが、このワールドダラーが「米国内外に流通するドルの総量」を測る計数として用いられている。直感的には、ワールドダラーとドル相場には負の相関が予想されるところであり、実際にそうだったように見える(図表3参照)。

 FRBの無制限量的緩和を背景として、ワールドダラーはベースマネーと共に急増しており、前掲図の米財政赤字の動きと合わせて見れば、3月に見られたような「非常時のドル買い」が再発するケースを除いて、当面ドル相場が上昇する展開は考えにくいように思える。

 もちろん、理論的にはベースマネーが増えたからといって、貨幣供給量(マネーストック)が増えるとは限らず、それゆえにドル下落も予想する筋合いにはない。しかし、直情的な為替市場でこうした論点が材料視される展開は、十分警戒する価値がある。

 

● 米国政府の果敢な対応を評価 穏当なドル安は世界にとって「正義」

 最後に強調しておきたい点だが、筆者は米国の拡張財政路線の結果としてドルの信認が棄損し、ドル安になったとしても、それ自体が悪いことだとは思わない。「信認が棄損」というフレーズにはネガティブな印象を持たれやすいが、それでも米国政府がこれほど迅速かつ大胆に動かなかった場合、事態はより深刻化していたはずだ。そうなれば、ドルの信認以前に世界経済の信認が問われる展開になっただろう。

 また、「過度なドル安」が「非ドル通貨の大幅上昇」を意味する以上、各国の通貨当局がそのようなドル安をいつまでも放置するはずがない。為替介入なのか、金融緩和なのか、それとも資本規制なのかは国ごとに異なろうが、自国通貨高(ドル安)に対して何らかの処置は採られるはずだ。

 だとすれば、ドルの信認に疑義が生じるリスクを冒してでも米国政府・中央銀行(FRB)は動くべきであったし、実際に動いた。FRBの利下げペースは市場で評価されていないが、ドル資金供給に関する果断な動きは高く評価されている。

 世界におけるドルの総量(のイメージ)が膨張するに従い、穏当なドル安が進む可能性は高いというのが筆者の基本認識である。一方で、それが暴落という展開に至り、しかもそれが定着するような事態は、米国以外の通貨当局が容認しないだろう。どの国も過度な通貨高は回避したいものだ。

 新興国を中心として世界中がドル建て債務を積み上げた「ドル化した世界」では、むしろドル高が継続的に続く展開の方が、対外債務の返済可能性という論点に注目が集まり、市場を不安定にさせる懸念があるだろう。目先の危機脱却を考えたとき、多少ドルの信認が棄損しようとも、米国政府が果断な対応をしてくれた方が、世界経済にとって正義と言えるのが実情かと思われる。

 (みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト 唐鎌大輔)


出典:ダイヤモンド・オンラインダイヤモンド・オンライン
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