お友達の方向け
・コニカミノルタ(4902)投影しない「プラネタリウム」は何がすごいのか(1)(2)(3)
アポロ11号が月面着陸を果たしてから50年。東京都文京区にある宇宙ミュージアムTeNQでは、7月中旬から民間月面探査を目指すiSpace社による特別展示が開催されるなど、国内の科学館でも関連イベントが開催されている。
プラネタリウムを導入している各地の科学館ではアポロ11号や月面を描いた作品を相次ぎ投影。夏休みを過ごす人たちを宇宙に誘い、夢やロマンをもたらしそうだ。そんなプラネタリウムの世界で今、技術革新が起きつつある。
オフィス向け複合機大手のコニカミノルタの子会社でプラネタリウム機器を製造・販売するコニカミノルタプラネタリウムは、7月からドーム型のLEDディスプレイの販売を開始する。
従来のプラネタリウムはドーム型のスクリーンにプロジェクターなど投映機から発した光を映し出して映像を流す。それに対し、ドーム型のLEDディスプレイは、光や映像を投影することなく、画面上に直接星空を映し出すことで、より高画質の映像表現を実現できる。
今回販売するLEDドームシステムは中国の南京を拠点にLED商品を製造・販売する南京洛普(LOPU社)が世界で初めて開発したものだ。LEDドームシステムはA4サイズほどのLEDパネルを組み合わせることでドーム型のディスプレイにしていく構造。日本の計測技術研究所が輸入総代理店をつとめ、コニカミノルタプラネタリウムが日本と韓国で独占販売する。
とはいえ、プロジェクターでも質の高い映像表現はできている。代表的な例が、東京・お台場に開館したデジタルアート専門の美術館「チームラボボーダレス」だ。
デジタルアート製作会社のチームラボによるもので、セイコーエプソンがプロジェクターを提供しており、開館からわずか5カ月で来場者が100万人を超えるなどプロジェクターの投影映像の質の高さを見せつけた。
今年4月には富士フイルムが空間表現や演出に特化したプロジェクターを投入して、プロジェクター市場に参入。同社の光学・電子映像事業部の飯田年久事業部長は「空間演出という分野を強化することで飽和したプロジェクター市場を拡大させられる」と強調する。
一方でコニカミノルタプラネタリウムの藤掛曜平取締役は「プロジェクターの投映による映像では限界があった」と指摘。プロジェクターの場合、スクリーンに光を当てて、その反射光を受けることで映像を見ている。あくまで反射光であるため、きらきらと自ら輝く星空を再現する必要があるプラネタリウムでは自ら発光するLEDパネルのほうが適しているのだ。
またドーム型では映像が乱反射することやスクリーンが曲面や球状であるため、投映すると局部でひずみやゆがみが生じる。現在は複数台のプロジェクターを使用して映像の合成を行い、事前に起きうるゆがみに対応する映像を制作して対応しているが、完全にゆがみは取り除けないという。
LEDディスプレイならムラなく映像を出すことができ、「プラネタリウムの映像コンテンツを制作するグラフィックデザイナーが思ったとおりの映像にすることができ、より幅広い映像表現が可能になる」(藤掛氏)。
日本プラネタリウム協議会によれば2015年時点で稼働中のプラネタリウムは国内に330基(設置数は455基)あり、観覧者数は2017年度に872万人と2007年度の730万人と比較しておおむね増加傾向にある。市場自体は堅調なため、プラネタリウムは毎年約10件の更新や新規設置の需要があり、コニカミノルタプラネタリウムも数件受注している。直近では7月18日にオープンした沖縄県石垣島の「いしがき島星ノ海プラネタリウム」を手がけた。
コニカミノルタは20年前からLEDパネルによる映像表現の構想を練っていたが、開発負担が重すぎることがネックとなっていた。今回、LOPU社が開発したものを販売することで、高額な負担を回避して長年の構想を実現させる。
それでも既存の主流となっているプロジェクション方式と比較するとドーム型LEDシステムの導入コストは割高だ。販売を開始するラインナップの中で最大となる直径20メートルのものでは、導入にかかるコストがプロジェクション方式だと一般的に5億円程度とされるのに対し、LEDシステムでは10億円程度になるとみられる。
コスト面を考慮すると、LEDへの更新は容易ではない。そこでコニカミノルタはプラネタリウム以外での用途拡大を目指す。テーマパークのアトラクションなどアミューズメント向けだ。LEDパネルを組み合わせる構造のため、大きさや仕様を一部変えることができる。観客が映像に没入する感覚をもたらすアトラクションへの需要に対応できそうだ。
すでにユニバーサルスタジオジャパンの人気アトラクション「ハリー・ポッター・アンド・ザ・フォービドゥン・ジャーニー」や7月に東京ディズニーシーでオープンした新アトラクション「ソアリン」など映像没入型アトラクションは国内外で人気を博している。
映像没入型アトラクションの大半がプロジェクターによる投映式とされる。画質と輝度がより高まれば没入感は増すとみられ、LEDドームシステムの拡大余地がある。中国では製造元のLOPU社がアミューズメント施設で導入実績をもっている。ほかにもパイロットの訓練などでも使用される産業用シミュレーターにも商機があるとみられる。
街頭の映像広告や大型のデジタルサイネージのディスプレイは液晶ではなくLEDが主流となっている。そのため、特殊な形状の建造物やレストランの天井などで大型ディスプレイを設置する際にも商品を提供できる可能性はある。
ただ、コニカミノルタとしてプラネタリウム以外の用途への販路の本格的な開拓はこれからの話。今回販売するドーム型LEDシステムもまずはプラネタリウム向けでの受注獲得に力を入れる。LEDドームの寿命は10万時間で、年に3000時間(1日約8時間)使うとしても30年使用可能だ。デジタル機器の更新などで近年プラネタリウムは3~10年に1回更新を迎えることが多い。長期間の使用であればコスト面で決して高額ではないことを売りにする。
コニカミノルタはプラネタリウムで放映する映像コンテンツを制作しており、LEDシステムだからこそ出せるコンテンツを増やすことで導入への相乗効果を狙うとする。また同社は2017年からVRにも注力しており、没入型映像表現の制作を強化している。
藤掛氏は「最初の数年は厳しいだろうが、まずは実績を増やしていき次につなげられるようにするのが目標だ」と話す。コンテンツ力を合わせて新しい映像体験をプラネタリウムで広げ、ほかの用途に展開できるかが焦点となりそうだ。
アポロ11号が月面着陸を果たしてから50年。東京都文京区にある宇宙ミュージアムTeNQでは、7月中旬から民間月面探査を目指すiSpace社による特別展示が開催されるなど、国内の科学館でも関連イベントが開催されている。
プラネタリウムを導入している各地の科学館ではアポロ11号や月面を描いた作品を相次ぎ投影。夏休みを過ごす人たちを宇宙に誘い、夢やロマンをもたらしそうだ。そんなプラネタリウムの世界で今、技術革新が起きつつある。
オフィス向け複合機大手のコニカミノルタの子会社でプラネタリウム機器を製造・販売するコニカミノルタプラネタリウムは、7月からドーム型のLEDディスプレイの販売を開始する。
従来のプラネタリウムはドーム型のスクリーンにプロジェクターなど投映機から発した光を映し出して映像を流す。それに対し、ドーム型のLEDディスプレイは、光や映像を投影することなく、画面上に直接星空を映し出すことで、より高画質の映像表現を実現できる。
今回販売するLEDドームシステムは中国の南京を拠点にLED商品を製造・販売する南京洛普(LOPU社)が世界で初めて開発したものだ。LEDドームシステムはA4サイズほどのLEDパネルを組み合わせることでドーム型のディスプレイにしていく構造。日本の計測技術研究所が輸入総代理店をつとめ、コニカミノルタプラネタリウムが日本と韓国で独占販売する。
とはいえ、プロジェクターでも質の高い映像表現はできている。代表的な例が、東京・お台場に開館したデジタルアート専門の美術館「チームラボボーダレス」だ。
デジタルアート製作会社のチームラボによるもので、セイコーエプソンがプロジェクターを提供しており、開館からわずか5カ月で来場者が100万人を超えるなどプロジェクターの投影映像の質の高さを見せつけた。
今年4月には富士フイルムが空間表現や演出に特化したプロジェクターを投入して、プロジェクター市場に参入。同社の光学・電子映像事業部の飯田年久事業部長は「空間演出という分野を強化することで飽和したプロジェクター市場を拡大させられる」と強調する。
一方でコニカミノルタプラネタリウムの藤掛曜平取締役は「プロジェクターの投映による映像では限界があった」と指摘。プロジェクターの場合、スクリーンに光を当てて、その反射光を受けることで映像を見ている。あくまで反射光であるため、きらきらと自ら輝く星空を再現する必要があるプラネタリウムでは自ら発光するLEDパネルのほうが適しているのだ。
またドーム型では映像が乱反射することやスクリーンが曲面や球状であるため、投映すると局部でひずみやゆがみが生じる。現在は複数台のプロジェクターを使用して映像の合成を行い、事前に起きうるゆがみに対応する映像を制作して対応しているが、完全にゆがみは取り除けないという。
LEDディスプレイならムラなく映像を出すことができ、「プラネタリウムの映像コンテンツを制作するグラフィックデザイナーが思ったとおりの映像にすることができ、より幅広い映像表現が可能になる」(藤掛氏)。
日本プラネタリウム協議会によれば2015年時点で稼働中のプラネタリウムは国内に330基(設置数は455基)あり、観覧者数は2017年度に872万人と2007年度の730万人と比較しておおむね増加傾向にある。市場自体は堅調なため、プラネタリウムは毎年約10件の更新や新規設置の需要があり、コニカミノルタプラネタリウムも数件受注している。直近では7月18日にオープンした沖縄県石垣島の「いしがき島星ノ海プラネタリウム」を手がけた。
コニカミノルタは20年前からLEDパネルによる映像表現の構想を練っていたが、開発負担が重すぎることがネックとなっていた。今回、LOPU社が開発したものを販売することで、高額な負担を回避して長年の構想を実現させる。
それでも既存の主流となっているプロジェクション方式と比較するとドーム型LEDシステムの導入コストは割高だ。販売を開始するラインナップの中で最大となる直径20メートルのものでは、導入にかかるコストがプロジェクション方式だと一般的に5億円程度とされるのに対し、LEDシステムでは10億円程度になるとみられる。
コスト面を考慮すると、LEDへの更新は容易ではない。そこでコニカミノルタはプラネタリウム以外での用途拡大を目指す。テーマパークのアトラクションなどアミューズメント向けだ。LEDパネルを組み合わせる構造のため、大きさや仕様を一部変えることができる。観客が映像に没入する感覚をもたらすアトラクションへの需要に対応できそうだ。
すでにユニバーサルスタジオジャパンの人気アトラクション「ハリー・ポッター・アンド・ザ・フォービドゥン・ジャーニー」や7月に東京ディズニーシーでオープンした新アトラクション「ソアリン」など映像没入型アトラクションは国内外で人気を博している。
映像没入型アトラクションの大半がプロジェクターによる投映式とされる。画質と輝度がより高まれば没入感は増すとみられ、LEDドームシステムの拡大余地がある。中国では製造元のLOPU社がアミューズメント施設で導入実績をもっている。ほかにもパイロットの訓練などでも使用される産業用シミュレーターにも商機があるとみられる。
街頭の映像広告や大型のデジタルサイネージのディスプレイは液晶ではなくLEDが主流となっている。そのため、特殊な形状の建造物やレストランの天井などで大型ディスプレイを設置する際にも商品を提供できる可能性はある。
ただ、コニカミノルタとしてプラネタリウム以外の用途への販路の本格的な開拓はこれからの話。今回販売するドーム型LEDシステムもまずはプラネタリウム向けでの受注獲得に力を入れる。LEDドームの寿命は10万時間で、年に3000時間(1日約8時間)使うとしても30年使用可能だ。デジタル機器の更新などで近年プラネタリウムは3~10年に1回更新を迎えることが多い。長期間の使用であればコスト面で決して高額ではないことを売りにする。
コニカミノルタはプラネタリウムで放映する映像コンテンツを制作しており、LEDシステムだからこそ出せるコンテンツを増やすことで導入への相乗効果を狙うとする。また同社は2017年からVRにも注力しており、没入型映像表現の制作を強化している。
藤掛氏は「最初の数年は厳しいだろうが、まずは実績を増やしていき次につなげられるようにするのが目標だ」と話す。コンテンツ力を合わせて新しい映像体験をプラネタリウムで広げ、ほかの用途に展開できるかが焦点となりそうだ。
「会社四季報」は、会社四季報オンラインで申し込みの上、お買い求め下さい。年間予約購読は3つのメリットがあります。1.ご自宅や勤務先に直接お届けします。2.買い忘れがありません。3.売り切れによる買い逃しがありません。東洋経済新報社 予約サービスセンター 0120-206-308 (受付時間:平日9:30-17:20) 
※投資の最終的な判断はご自身でお願い致します。
このブログに掲載の情報は、投資を保証するものでは一切御座いません。

※投資の最終的な判断はご自身でお願い致します。
このブログに掲載の情報は、投資を保証するものでは一切御座いません。