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<不透明なマーケットに出来高減少の日々>
鈴木一之です。先週から今週にかけて、日本では出来高の減少と取引の不活発さが目立ちました。売買代金は2兆円割れの状態が続いています。
マーケットの先行きに対して、はっきりと方向性を示すことが日に日にむずかしくなっています。メキシコへの関税を突如発表する、トランプ政権の強引な政権運営に対する警戒心ばかりとは言い切れません。
次なるイベントの発生を待っているだけなのでしょうか。それがFRB(米連邦準備制度理事会)による利下げなのか、6月末の「G20・大阪サミット」での新たな動きなのか、そこでの米中首脳会談の実現なのか、あるいはイラン訪問を敢行した安倍首相の外交手腕なのか、ひょっとしたらそれらすべての実現なのか。
いずれにしてもマーケットは息をひそめて事態の推移を見守っており、完全に動きを止めています。小型の材料株を中心に空中戦と言われるような展開が繰り返されています。
<極端な様子の後には大きな変化が・・・・>
株式市場の先行きが不透明極まる状態になり、先行きの見通しが立てにくくなる状況というのは、以前にも何度も経験してきました。2016年6月の英国・国民投票の直前、あるいは2016年11月の米国・大統領選の直前など、繰り返し何度も訪れたことです。
今回もそれらの時とよく似ています。そのたびごとに、まったく予想もしなかったところから新しい流れが生まれてきた経緯があります。その後の展開は当初のマーケットの予想とはかなり異なっていました。
目下のところ市場関係者の想定しうること、視野に入っていることは、実際には大半のものがすでに株価に織り込まれているようです。アルゴリズム取引全盛の現在、予想が現実のものになったとしても、もはや簡単には株価は動かないという事実です。
マーケットを動かすにはまるで予想もしなかったところから、新しい力が作用しないとなりません。そのような誰にとっても新鮮味のある材料が、買いにも売りにも必要なのですが、それを事前に予想することは非常にむずかしいことです。
まして市場がここまで膠着してしまうと、投資マインドを動かすのは容易ではありません。これはマクロ経済環境において、人々の心にしみ込んでいる「デフレ・マインド」の払拭と同じくらいにむずかしいものです。
<今、気を付けなければならないことは世界景気>
現時点において特に気をつけなければならないのは、世界経済がじわじわと後ずさりしている点です。6月相場はスタートの段階から、中国の経済環境が再び悪化方向に向かった月でもありました。
5月末に発表された中国の5月PMI(購買担当者景況感指数)は、3か月ぶりに分岐点とされる「50」の大台を割り込みました。
あらめて指摘するまでもなく、米国が中国に対して2000億ドル分の輸入品への関税を25%に引き上げた影響が出ています。
米国の商務省は5月の時点で、ファーウェイを「エンティティ・リスト(EL)」に加え、安全保障上の懸念から米国から製品輸出をファーウェイに対して禁止しました。
この措置がてきめんに影響していると見られます。中国の5月PMIの中でも、輸出に限定した新規受注は「46.5」まで低下しており、12か月連続で「50」を下回っています。
トランプ政権は日本をはじめ同盟国に対しても、ファーウェイ製品の使用を控えるよう圧力を強めており、それが世界のスマホ販売に影響を与えています。
スマホ市場はすでに新興国を含めて大きなピークを越えたと見られています。禁輸措置も加わってファーウェイは、今年度2.5億台を計画していた当初のスマホ販売計画を、9000万台にまで下方修正したと見られています。スマホに続いて年後半のパソコンの販売計画にも軌道修正が迫られています。
<中国の景気減速の影響があちらこちらで顕在化>
この影響が中国のみならず、日本、アジア、欧州、さらには米国にも影響し始めています。今週になって世界の半導体、電子部品メーカーの株価が下落基調を示しましたが、受注動向に影を落とし始めているようです。
貿易紛争の長期化を見越して、日本企業の自動車部品メーカーを中心に、静かに中国市場から生産拠点を日本、あるいは米国に移しています。6月14日の日本経済新聞には、韓国のサムスン電子、現代自動車、LG電子らが中国での生産拠点の見直し、人員削減、配置換えに動いていることを伝えています。
こうなると中国では雇用の悪化は避けられません。中国政府は景気対策でカバーしようとしますが、それだけでは覆いきれないほどの景気鈍化リスクが出てきます。
そして中国の景気後退は、今では世界の景気後退リスクに直結しています。米中貿易紛争が米中間にとどまらず、次第に世界経済に直接影響を及ぼす時間帯に入ってきたように感じられます。
「G20」が開催されるまでの2週間、株式市場は下押し圧力の強まる公算が高いように見られます。押し目買いのチャンスはそこでやってくるように考えられますが、「売りは早かれ、買いは遅かれ」の相場格言に沿って、ここは事態の推移を見守りながら慎重な対処が求められるように思います。日本エムディエム <7600> 、フリュー <6238> 、eBASE <3835> 、ラクスル <4384> 、クボタ <6326> に注目しています。
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<不透明なマーケットに出来高減少の日々>
鈴木一之です。先週から今週にかけて、日本では出来高の減少と取引の不活発さが目立ちました。売買代金は2兆円割れの状態が続いています。
マーケットの先行きに対して、はっきりと方向性を示すことが日に日にむずかしくなっています。メキシコへの関税を突如発表する、トランプ政権の強引な政権運営に対する警戒心ばかりとは言い切れません。
次なるイベントの発生を待っているだけなのでしょうか。それがFRB(米連邦準備制度理事会)による利下げなのか、6月末の「G20・大阪サミット」での新たな動きなのか、そこでの米中首脳会談の実現なのか、あるいはイラン訪問を敢行した安倍首相の外交手腕なのか、ひょっとしたらそれらすべての実現なのか。
いずれにしてもマーケットは息をひそめて事態の推移を見守っており、完全に動きを止めています。小型の材料株を中心に空中戦と言われるような展開が繰り返されています。
<極端な様子の後には大きな変化が・・・・>
株式市場の先行きが不透明極まる状態になり、先行きの見通しが立てにくくなる状況というのは、以前にも何度も経験してきました。2016年6月の英国・国民投票の直前、あるいは2016年11月の米国・大統領選の直前など、繰り返し何度も訪れたことです。
今回もそれらの時とよく似ています。そのたびごとに、まったく予想もしなかったところから新しい流れが生まれてきた経緯があります。その後の展開は当初のマーケットの予想とはかなり異なっていました。
目下のところ市場関係者の想定しうること、視野に入っていることは、実際には大半のものがすでに株価に織り込まれているようです。アルゴリズム取引全盛の現在、予想が現実のものになったとしても、もはや簡単には株価は動かないという事実です。
マーケットを動かすにはまるで予想もしなかったところから、新しい力が作用しないとなりません。そのような誰にとっても新鮮味のある材料が、買いにも売りにも必要なのですが、それを事前に予想することは非常にむずかしいことです。
まして市場がここまで膠着してしまうと、投資マインドを動かすのは容易ではありません。これはマクロ経済環境において、人々の心にしみ込んでいる「デフレ・マインド」の払拭と同じくらいにむずかしいものです。
<今、気を付けなければならないことは世界景気>
現時点において特に気をつけなければならないのは、世界経済がじわじわと後ずさりしている点です。6月相場はスタートの段階から、中国の経済環境が再び悪化方向に向かった月でもありました。
5月末に発表された中国の5月PMI(購買担当者景況感指数)は、3か月ぶりに分岐点とされる「50」の大台を割り込みました。
あらめて指摘するまでもなく、米国が中国に対して2000億ドル分の輸入品への関税を25%に引き上げた影響が出ています。
米国の商務省は5月の時点で、ファーウェイを「エンティティ・リスト(EL)」に加え、安全保障上の懸念から米国から製品輸出をファーウェイに対して禁止しました。
この措置がてきめんに影響していると見られます。中国の5月PMIの中でも、輸出に限定した新規受注は「46.5」まで低下しており、12か月連続で「50」を下回っています。
トランプ政権は日本をはじめ同盟国に対しても、ファーウェイ製品の使用を控えるよう圧力を強めており、それが世界のスマホ販売に影響を与えています。
スマホ市場はすでに新興国を含めて大きなピークを越えたと見られています。禁輸措置も加わってファーウェイは、今年度2.5億台を計画していた当初のスマホ販売計画を、9000万台にまで下方修正したと見られています。スマホに続いて年後半のパソコンの販売計画にも軌道修正が迫られています。
<中国の景気減速の影響があちらこちらで顕在化>
この影響が中国のみならず、日本、アジア、欧州、さらには米国にも影響し始めています。今週になって世界の半導体、電子部品メーカーの株価が下落基調を示しましたが、受注動向に影を落とし始めているようです。
貿易紛争の長期化を見越して、日本企業の自動車部品メーカーを中心に、静かに中国市場から生産拠点を日本、あるいは米国に移しています。6月14日の日本経済新聞には、韓国のサムスン電子、現代自動車、LG電子らが中国での生産拠点の見直し、人員削減、配置換えに動いていることを伝えています。
こうなると中国では雇用の悪化は避けられません。中国政府は景気対策でカバーしようとしますが、それだけでは覆いきれないほどの景気鈍化リスクが出てきます。
そして中国の景気後退は、今では世界の景気後退リスクに直結しています。米中貿易紛争が米中間にとどまらず、次第に世界経済に直接影響を及ぼす時間帯に入ってきたように感じられます。
「G20」が開催されるまでの2週間、株式市場は下押し圧力の強まる公算が高いように見られます。押し目買いのチャンスはそこでやってくるように考えられますが、「売りは早かれ、買いは遅かれ」の相場格言に沿って、ここは事態の推移を見守りながら慎重な対処が求められるように思います。日本エムディエム <7600> 、フリュー <6238> 、eBASE <3835> 、ラクスル <4384> 、クボタ <6326> に注目しています。