知覧という場所は、
鹿児島県の山あいにある。
お茶も取れ、
綺麗な水が流れて、
水路には鯉も泳いでいる。
江戸時代より以前から、
この地を治めるために、
武士たちが住まいを構えた。
その名残りの武家屋敷があり、
(現在でも、この武家屋敷に住んでいる子孫もいらっしゃいます。)
大河ドラマなどの撮影場所としても使われている。
今では素敵な観光スポットだ。
風情がありますわぁ。
ワタシも娘も、
武家屋敷の佇まいを堪能し、
(ワタシは、
「蔵、好きなんだよな、ワタシ。
白壁とか黒い柱とか重たい扉とか、なんかエエやん。
蔵に住みたい。」
と言うと、
娘は、
「蔵は住むところじゃなくて閉じこめられるところです。」
と冷たく言いましたw)
何匹も見かけたアイソのある地域猫を撫でて、
そこいらに置いてある灰皿、大きなスタンドタイプのもの、
のところで喫煙した。
喫煙者で猫好きの母娘にとって、
なんて優しい街だw
武家屋敷からすぐそばに、
当時、特攻に行く青年たちがよく利用した食堂があり、
現在では、
宿坊と記念館になっている。
この食堂を経営していた女性の生涯は映画にもなっていて、
特攻隊員たちはこの食堂で、軍の検閲を離れて、自由に語らったり、
家族への手紙を託したりした。
この小さな記念館で、
娘からちらっとは聞いていたものの、
ワタシは特攻という狂気の沙汰の現実に涙を流した。
そしてその場所から歩いて30分ほどの、
知覧特攻平和記念館へ行った。
娘は訪れるのが2度目だ。
知覧平和記念館は、
元は飛行場で、
知覧だけでなく数カ所、九州に特攻のための飛行場があった。
全員で2500名くらいだったか、
特攻隊として亡くなっている。
沖縄近海に、
たくさんの軍艦が来るようになり、
もちろん本土の各地でも空襲され、
沖縄を渡してしまうと大変なことになる、
という日本軍の焦りから、
飛行機に通常の倍の爆弾を積み、
敵の飛行機の爆撃や軍艦からの砲弾を避けて、
目指す軍艦に突っ込んで行く。
狂気だ。
戦争というものがすでに狂気なんだが。
まず最初に、平和記念館の隣の神社で、線香を供えた。
神社から平和記念館に入る通り道に、
当時の宿舎を再現した場所があり、
宿舎は敵に見つからないよう半地下で、
真ん中は土の通路になっていて、
通路から50センチほど立ち上がった畳の部屋は
対称に左右に別れていて、
80センチくらいの幅の小さな布団が、
通路側を頭にして、
左右それぞれ7、8枚敷かれている。
(言葉だけで説明すんの、ムズいね。)
出撃の3、4日前にここに連れてこられてこの宿舎で過ごし、
家族に手紙を書いたり、
酒を酌み交わしたりして、
飛び立ってゆく。
壁に貼られた説明の文章には、
布団をかぶって泣く青年も多かった、
と書かれていた。
胸が詰まるよ…。
20代、
ヘタしたら17歳の男の子だぞ。
未来があったろうに。
そして館内に入り、
海に沈んでいた引きあげられた飛行機の残骸や、
飛行機の模型、
服装、
どうやって特攻隊として選ばれるのか、
家族に残した手紙や遺品の数々、
記録に残された隊員の顔写真、年齢、出身地などを見つめて2、3時間過ごし、
重たい気持ちで館を出た。
建物のすぐそばに塀で仕切られた喫煙所があり、
タバコを吸いに行こうとして、
ワタシは連れ立っていた娘に、
「選ばれて名誉だ、嬉しい、と書いている人もいたね。」
と脱力して言うと、
気づかなかったが塀の陰に30代くらいの男性がおり、
ワタシの発言に食いつくように、
ね、を言い終わらないうちに、
「検閲があるからですよ」
と、
怒気を感じる口調で言った。
ワタシはびっくりして、
その後に言おうと思っていた、
「本心だったのかな…。」
という言葉が出てこなかった。
その男性は早足で建物の中へ消えて言った。
(職員だったんかーいっ。
にしても、なんかちょっと歪んだ正義感とプライドを、
この男性に見た気がした。)
娘も、
何も言えなくなった、
とワタシに後に話した。
気おされる、
という感じだったよね、アレ。
「もっと勉強してから来いや、平和ボケしとるチャラチャラした母娘がよ。」
と咎められた気がして、
なんだか凹んだわ。
ワタシ、
ただでさえ娘に、
「空気の読めないおばはん」と言われ、
職場でも、
たぶんワタシのそういうところを嫌って冷たくする若い子がいるんだから。
だから不謹慎なワタシたち母娘は、
その「検閲があるからですよ」を、
会話のところどころに挟んで笑った。
笑いにしてしまわないと、
ずっと根に持つぞ、ワタシはっ。
何が言いたいかって、
ワタシは誰かの犠牲によって成り立つみんなの幸せ、
はイヤだ。
誰かに、
常識とか良いことは、こういうことだ、
と誘導されるのもイヤだし、
同調圧力もキライだ。
特攻を美談にするのも気に障る。
人間は、
普通に生存本能はあるはずだし、
その懊悩葛藤諦めヤケクソに、
胸が痛む。
特にワタシは、
自分に正直に生きたいものだと思ってそう振る舞っているし。
(それによって空気の読めない人と思われ、
嫌われたりしているようだが…w)
みんな思うところは違っていいの。
そのそれぞれ違う価値観の人間が、
どうしたら争わずに済むのか、
個人のシアワセが、
みんなのシアワセに重なる世界が作れないものかと、
ワタシは思いました。
…合掌。