歩いて5分のT医院に着き、下りるとき、支払いを忘れかけた。
お義母さまを車から下ろすことに気がいっていたから。
お義母さまは、ちょっとあんた、お金っ!と、怒って自分の財布からお金を出した。
これが最初の、易怒だった気がする。
T先生は、さらっと診察して、お嫁さん、これから大変やで、火の元とかな、と言った。
アタシはお義母さまが採血される後ろに立ちながら、子供のようになってしまったお義母さまの、老い、の現実に、涙がこぼれた。
T先生は、紹介状を書くから、脳の検査を、大きな病院でしてもらいなさいと、予約をしてくれた。
介護認定の意見書は、この受診で完了したから、病院から役所へ提出してくれるそうだ。
一ヶ月ほどで、介護認定が下りるだろう。
その日はお義母さま宅へ帰り、もろもろの家事をし、午後からのスーツ屋の仕事に行った。
脳の検査の予約の日は、アタシは午後から飲食の仕事で、(当時収入が足りなかった我が家、アタシはwワークをしていた。)息子に頼んだ。
午前中にお義母さま宅で診察のための用意をし、息子と入れかわりでお義母さま宅を後にしたのだが、
お義母さまはなぜ自分が病院に行かなければいけないかがわからない。
あなたは認知症です、脳の検査が必要なんです、とも言えない。
お義母さまは行きたくない、と息子にダダをこね、予約の受診は出来なかった。
息子はひたすら、おばあちゃんのおしゃべりを聞いただけだった。
それから1日2日たっただろうか、
お義母さまが、また旦那に、電話で腰が痛い、と訴えた。
その様子を聞きながら、アタシは旦那に言った。
なぁお父さん、もうお義母さんを1人にしておけないんじゃない?
アタシたちは仕事をやめるわけにはいかないし、とりあえず神戸に呼ぼうよ。
旦那は仕事を休んで、お義母さまを迎えに行った。