日本昔話で、悪い人が使う言葉は「しめしめ」 | 奥歯にものは挟まずに

奥歯にものは挟まずに

認知症の義母をきっかけに、ふざけたブログを書き出して、
義母を見送りました。
イケてて笑える(笑われる)ババアを目指して、日々の暮らしを綴ります。

介護認定のために、お義母さま宅近所の、T医院へ行ってまいりました。


ケアマネ から、インフルエンザの予防接種もしてくれる、と聞いていたので、
あまり出かけたくなさそうなお義母さまに、
注射もあるし、行きましょ、と、着替えさせる。
二階のタンスから、首元にファスナーがついた、ハイネックのトップスを出した。
もちろん、素敵、よく似合う~、と褒めておく。
さらにお出かけ気分を高揚させるために、アタシはタオルでお義母さまの顔を拭き、ニベアクリームをすり込んだ。
すんなりとお出かけしはったよ。


お出かけすると、足元がフラフラする、と、お義母さまは毎回言う。
杖は年寄りくさくて気に入らないお義母さま、カートを引きずり、アタシの腕を掴み、健康な人なら5分かからない道を、ゆっくり歩く。
うん、すり足歩行に近いけど、足が痛い、っておっしゃるけど、まだ自分で歩けるかな。
やっぱりフラフラしてるけど。

待ち時間にお義母さまに、
このあいだ往診に来てくれた先生が診察してくれるんか?
とたずねられたので、
(往診に来た先生=ケアマネ )
今日は院長先生だよ、と適当に答える。


T先生は、60代かなあ、お義母さまににこやかに質問していく。
「今朝何たべたんや?」
「缶詰とパン、ですねんわ。」

「ええなぁ~。
昨日は何食べた?」
「えっと、もうみなさんがいろいろ作ってくれはりますねん。そのお汁に何か入れて煮ますねん」
「ええなぁ~」
(先生はアタシに小声でヘルパーさんか?とたずねた。)

「お義母さん、手あげてみて。
そうそう。
指で丸作ってみて。
そう、ぐーっとチカラいれておいてやー。
ぐーっと。ぐーっと。」

「お義母さん、覚えといてな。
桜、電車、猫。
あとで質問するからな。」

「お義母さん、100から7引いていったらどないなる?」
「え、100からいくつ引くて?
は?7?
えっと93。
えっと…86
ええっと……63」

「はい、ありがとう。
お義母さん、今は何日や?」
「10月17日です。」
(正解は越後製菓、いらんボケですな、じゃなくて、
19日)

「今年は何年や?」
「ええっと、…そんな急に言われてもわかりませんわぁ。」
「そうか。」

「お義母さん、さっき言った言葉、覚えとるか?」
「ええっと、何でした?
何かおっしゃいましたやろか?」
「ああ、ええねんよ。
予防接種接種しましょか。
はい、終わりましたで。」


とまあ、こんな感じでした。
(トンチンカンなのに、がんばって一人暮らしをしているお義母さまを、やはり少しかわいそうに思った嫁。
ちょっとだけ、切なくなりますよ。)


アタシはお義母さまの認知の程度が、去年より悪くなっていることを確信した。
去年は桜電車猫も答えていたし、引き算、あっていたからね。
そして、もうひとつのことも確信していた。
お義母さまは、きっとそう言うに違いないと。


病院からお義母さま宅へ帰り、
いつもどうりのことをし、アタシはお義母さまに、
そろそろ帰るね、と告げた。

お義母さまは、いつもアタシに、
「あんた、電車賃!」とサイフを出す。
今日も出したお義母さま、
「あんた、お財布に10万円入ってんねんけど。」
「来た時に目の前でサイフに入れたやぁん。もうそろそろお金なかったやろ。
今日は持ってきてん。」
「そんな、あんた、あんたにお金使わして
…」
(それはアタシがお義母さまの口座から下ろした、お義母さまの年金だ。
アタシのお金ではないのだけれど、もう説明するのも面倒だし、説明したところでわからないのだ。)


お義母さまは泣かんばかりに感激していた。

アタシはお義母さま宅を去った。

アタシはくっく、と笑いながら帰る。
複雑な笑いだ。
やっぱり、やっぱり、【アタシからお金をもらった】、と思い込んでいる。
そう思い込むと思いましたわ。

病院での質問で、
アタシは、
ああ、こりゃダメだ、と思ったもん。
薄々わかってはいたが、お義母さまは、もうお金の管理はダメだ。


アタシは、
【それはお義母さまの年金だよ、勝手に下ろしてきたんだよ】と言わなかっただけだよぅ。
軽く、罪悪感はあるけど、
思い込んだのはお義母さまですからねー。
知りませんよー。

ごめんね、お義母さま。
そして神様、ありがとう。

アタシはもうお義母さまの通帳は、お義母さまに見せないと決心してますから。



お義母さま、お金はなんとなくある、って思ってくれてたら、
もうそんでエエのよ。
けど、感激せんとって欲しいねんけどもな。
感激されたら、心苦しいやんか。



でも、まあ、
しめしめw
と思っておくことにするわ。
しめしめ、て、日本昔話でしか、聞かない言葉だな。

しめ、しめw