信州・生活者ネットワークだより 2022 4.17号 より
記事を抜粋してお届けいたします。
避難について考える
2019年、令和元年台風19号災害では「本当に100年に一度なの?」「気象変動ってこういうこと?」と感じた方も多いと思います。当時、福祉避難所がうまく機能しなかったと報道を目にしましたが、機能以前にそういう仕組みがある事を初めて知った方のほうが多かったのでは?
こういった実情を踏まえ、信州ネットで調査を進めてきましたので報告いたします。皆さんが避難について真剣に考えるきっかけとし、参考となれば幸いです。
自主避難の体験記
2021年8月14日(土)前日から降り続いていた雨が朝から強くなり、奈良井川の水が増水していました。川の堤防がえぐられ、20メートル先で堤防のアカシアの木がどんどん流されていく様子を目の当たりにしました。町内会長、公民館長、防災委員の判断により地区で自主避難することになりました。決定は午後1時、午後5時過ぎには町内公民館へ避難。この時点では松本市からの避難指示はでていませんでした。奈良井川は「長野県」の管理で「市」ではないため、細かな情報が松本市に届くのが遅く、連携の難しさを感じました。あくまでも地区の自主避難ではありましたが、市職員が防災用の水、毛布など届けてくださいました。松本市から避難勧告が出されたのは、翌15日午前6時でした。
災害発生時、行政で判断し早期に避難指示を出すこと、こと局所的な災害においては特に難しいのだと実感しました。(松本市 M・I)
福祉避難所の聞き取り調査
福祉避難所=特に配慮を必要とする方のために2次的に開設する避難所
◆令和元年台風19号災害時、福祉避難所で直接、長野市職員へ聞き取りを行いました。
・発生から5日後、避難所で必要性が認められた為、福祉避難所が開設された。利用者は5名
・日中はもともと利用していたデイサービスを利用。避難所でのヘルパーの利用も可能。
・食事は3食弁当で、汁物は自衛隊の炊き出しのもの。車のある人は外食もしていた。
※少し移動すれば一般の生活ができている災害の範囲であった。
・職員配置は3交代制で、日中は福祉課職員2名、介護福祉士協会から2名。夜間は福祉課職員2名、鹿児島の団体から2名であったが、職員が介護する必要はなかった。
・情報や娯楽としてテレビがあるとよい ※福祉避難所には無かった
・介護が必要な人は施設への入所で対応。障がいのある人は、普段からつながりのあるグループホームやショートステイを利用。普段からのつながりがない人への支援は難しい。
・聴覚障がい者は【デフネットながの】という団体が支援。(連絡すると来てくれるし、避難所を廻って支援している)
・入浴の介助は介護福祉士協会が支援。
・障がい者や要介護者については、保健師、福祉課などがそれぞれ状況を把握しているが、情報共有がいきわたってるとは言えない。
⇒災害時の聞き取りは、議員だからこそ出来たことです。一般の避難所でも聞き取りを行い、即時に対応できることを中心に、議会で提言いたしました。
(代理人=長野市議会議員:小林史子)
わたしの自治体はどうなっているの? ネットのある3市の調査結果です。
【2021年5月、災害対策基本法が改正され、個別避難計画策定が市町村の努力義務となりました】
岡谷市 福祉避難所 11施設(土砂災害警戒区域内にある施設5 浸水想定区域内にある施設1)
「介護3~5及び障がい者1~2級」の方々を、各区の民生委員を通して「避難行動要支援者登録」しており、危機管理課と社会福祉課が連携して支援を行っている。
◆2021年8月大雨災害における福祉避難所の利用状況 8月14日~8月20日
2施設、3世帯(5名)で利用 事前に市に電話連絡があり、市と避難所で調整後直接入所
一般避難は3か所で68世帯165人の避難があったが、各区とつながる地域連絡員(市職員)を設置しスムーズな避難が出来るようにしている。今回の災害では、不足していた段ボールベッドを他自治体から送ってもらい対応。(現在は十分備蓄済み)近隣6市町村との相互応援協定締結。
◆市の防災ガイドを刷新し、各区で住民説明会を開催予定だったが、新型コロナの影響で開催できず。災害後、危険区域の住人にアンケート調査を行ったが、自ら避難する意識は非常に低かったので、出来るだけ早く説明会を開きたい。
長野市 福祉避難所の担当課は福祉政策課
・これまで地域でつくっていた個別の避難計画は、市が5年かけて作ることになった。
・要配慮者は市全体で3万8千人。毎年1000人くらいずつ増える見込み。
・「私の避難計画」の作成はケアマネに委託
・福祉避難所に指定されている事業所はあるが、実際の開設は難しい。
◆課題と対応策
① 一般の避難所で生活することが困難な要支援者は施設への緊急入所を行ったため、福祉避難所の利用は高齢者のみとなった。様々な要支援者を受け入れるには専門的スタッフや機材が必要。
⇒専門スタッフのいる民間福祉施設や福祉関係団体との協定等を一層進める。
② 家族や友人と離れる不安などがあり、積極的に福祉避難所を利用したいという要配慮者が少なかった。⇒「長野市避難所運営マニュアル」に、「一般の避難所に福祉スペースを確保すること。同時にホテルなども利用する。」と記載。
③ 医療や介護の専属スタッフを手配する準備が出来ていなかった。⇒令和4年度「長野市地域防災計画」の見直しに合わせて、マニュアルの検討行う。
④ 福祉用具の準備が出来ていなかった。⇒福祉用具の備蓄もしていく。福祉避難所開設時には、運営スタッフに現金を預け、必要な物品を購入できるようにする。
松本市 防災対策は「危機管理課」、避難行動要支援者名簿の管理は「福祉政策課」、見守り安心ネットワークは「松本市社会福祉協議会」福祉避難所は「福祉政策課」
◆災害発生直後は指定避難所⇒保健師によるスクリーニングに基づき、市と提携している福祉避難所に移送。災害時の福祉施設として「高齢者福祉施設」「障がい者福祉施設」「市外施設」合わせて70ヶ所を福祉施設として指定。「災害発生後3日目をめどに開設を基本とする」となっており、その間、自宅又は避難場所での対応となる
これで本当に機能するの???
皆さんお気づきですね・・・
じゃあ、どうすればいいの?
行政の方も「専門職が参画しても、要支援者と避難支援者とのマッチングが困難な場合がある」
「福祉避難所は2次避難所なので、直接避難はできない」「福祉避難所として協定を結んでいても災害時に福祉避難所となるということではない」とおっしゃられています。
そしてこうも・・・「本人が居心地の良いところ、どこに避難したいかなんです。学校?放課後デイ?ホテル?知人宅? それを一緒に考えていきたいんです」
そう!!!!それを考えることが「わたしの避難計画」なんです。
お家に配慮を必要とする人がいなくても、いざという時に【どうするか?どうしたいか!】を
決めておきましょう。下の票は一例です。「マイ・タイムライン」で検索すると、⇒国土交通省や⇒県のものもヒットしますので、使いやすそうなものを選んで作成してみませんか?
【行政は何もしてくれない】という考え方ではなく、いざという時に【どういうことをやってもらう必要があるのか】を考え、その為に積極的に準備をしておきましょう。
一例です。
⇒横浜市のもの 別に⇒わかりやすい版もあります。
長野市福祉政策課のもの
まずは、ハザードマップを確認し、どこに避難するかを決める所から!水害と地震では避難所が変わる場合もあるので要確認です。
台風19号災害では、私の最寄りの避難所は床上浸水しました。ハザードマップにも ×水害 〇地震と記載されておりました。確認しておいてよかった。ホテルや親戚のお家などに避難された方も多かったです。(報告者:山岸綾子)