ステーションを降りると、すぐ目の前にそびえ立つ高層マンション。
彼女は何の迷いもなくそこへ入っていく。
(ええええええ!?)
「こ、ここが葉室さんの家なの?」
「そうよ」
「そっか…」
それ以上会話は続かなかった。蒼子はエレベーターに乗り、23を押す。

「安心して。別に殺す訳じゃないから」

(微笑みつきでそんなこと言われると余計に怖いよ…!!)

2314号室のドアをカードキーで開け、蒼子は中に入ると大きな声で人を呼んだ。

「ルアン、ルアーン!仕事よ!!」
(仕事…!?)
失神寸前の恋を、蒼子は相変わらず強引に引きずっていく。
(僕、殺されるの!?)
玄関の扉を閉め、リビングのドアを開けると

「…アラごめんなさい」

2人の少年がいて、ポッキーゲームをしていた。
「お帰り」
「あっ、てめーバカ!喋んな!!」
黒髪の少年の、口の端からぽろりとポッキーが落ちる。
彼は蒼子と、その横にいる恋を見つけ、不思議そうな顔をした。
が、言葉には出さず蒼子を見る。
「仕事」
「記憶…?」
「そうよ」
少年は、今度は恋を穴があく程見つめた。その顔はやけに端整で、
しかしおかげでますます恋は居心地が悪くなり目を背けたとき。

「なぁんだぁ?蒼子、お前またそれかー。そんなボンボン丸出しのトロそーな奴に、
一体何を目撃されたんだ?」

と、横から茶々を入れてきた声があった。ポッキーゲームをやっていた、もう一人の少年である。
こちらは茶髪で、つり目気味のくりくりした目がよく動く。
とりあえず蒼子は一部始終を話した。少年2人は黙って聞いている。

「ふーん…じゃあさ、明日になったら仕返しとかされるんじゃねえ?」
「返り討ちにしてやるわよ」
「でもさあ、そのボンも現場にいたわけじゃん?あらぬ疑いをかけられて一緒にボコられる
なんてことも、ないとは言い切れないなぁ?」
「だからわざわざ連れてきて、ルアンに…」
「無理矢理記憶を改竄させられた上に、まるで覚えてないことでボコボコにされるなんて
踏んだり蹴ったりだなあ。なぁ、ボンボン?」
「リーヨン、あんた…何が言いたいの」

リーヨンと呼ばれた茶髪の少年は、にやりと笑った。


「賭けをしねぇか?」



「エンジェル・ミズキーック!!」
 止めの一撃を刺し華麗に着地した少女は、倒れ呻いている男たちを見てはっと我に返った。
「…やっちゃった!!」

電子産業が発達した、近未来大都市スペリオル。の、高層マンション街を通るモノレール。
その中で。
「あの、本当に…誰にも言わないから…えっと、その」
 首をつかまれ、無理矢理座らされている少年と
「うるさい」
同い年くらいの少女。
少年は、名を中御門恋といい、少女の方は葉室蒼子という。
「見られたからにはタダじゃ生かしておけないのよ、中御門君」
恋は震え上がった。たった今、彼女の恐ろしさを目の当たりにしてきたばかりだったからだ。
時刻は半時間前にさかのぼる…



葉室蒼子にとって、今日という日は人生を変えるかもしれない(蒼子称)大事な大事な日だった。
彼女の、人生のバイブルというべきマンガ「エンジェル学園」(略してエン学)最新刊の発売日だったのだ。
放課後、蒼子は喜びに顔を弛緩させきって校舎を出た。そのまま裏手の門へと向かう。

何故、裏門か。

容姿端麗、成績優秀、ミステリアスな高嶺の花、というイメージを努力して周囲に植え付けた蒼子にとって、今のこの顔は見られてはならない顔であったのだ。
…それもこれも、ある「秘密」を隠し通すためで。
(うふふー。三浦ミズキの新しい必殺技、どんなのかしらーん…)


ドンっ


「いてっ!!」
うっとりしていた蒼子には、足下に気を配る余裕はなかった。
「おいおいねーちゃん、この学校のボスに向かってぇ、今のケリはひどくなーい?」
(チョップかなー、エルボーかしら…)
「タテついてるって思われてもぉ、しょうがなくない?」
(あん、ついにビームとか編み出しちゃったりして?)
「おい、聞いてんのかクソ女!」
 彼女の本性は決して温厚ではない。楽しい妄想の時間を醜い男たちによって阻まれてしまった蒼子の理性はぷっつんと音を立ててキレてしまった。
「……ごちゃごちゃうっさいのよウザオ共!!」
そして冒頭に戻る。

つまり葉室蒼子の「秘密」とは
訳あって幼い頃より磨きに磨きをかけた、その高すぎる戦闘能力だった。
大の男10人ほどなら素手で1分、といったところだろうか。通常では考えられないバトル少女。
しかし、そんな姿を一般人の目にさらすわけにはいかない。私は普通の女の子になるのよ!!…そんな誓いをたてて高校に入学し、約2年間、破られることはなかった。
その時。

「ひ、ひっ!!」

どさっ、と音がして蒼子がそちらを見ると
カバンを地面に落とし、怯えきった表情でこちらを見ているクラスメイト。
「…中御門君」

中御門恋は見てしまったのだ。
クールビューティーとウワサのクラスメイト、葉室蒼子が上級生の番長グループを相手にケンカしていた。
しかも、こてんぱんにノしていた。

「…………」
彼をじっと見つめていた蒼子は何を思ったか、突然恋の襟首をつかんでずんずんと歩き出した。もちろん本屋に立ち寄り、エン学を購入することも忘れない。恋はその間ずっと蒼子に振り回されっぱなしだった。

さすがにモノレールに乗せられるときは多少の抵抗は見せたものの、蒼子のひと睨みで大人しくなってしまい。
…そして今に至る。

(ええーっ、僕、結局どこに連れてかれるの…?)

恋の不安を乗せ、モノレールは行く。
オンタリオ、というステーションで、蒼子は立ち上がった。恋も、引っ張られて立ち上がるハメになる。
「降りるわよ」


ランナーズハイ!!



近未来、主人公の少女はずっとひた隠しにしてきた事実を
クラスメイトの男子に見られてしまう。
なんとか彼の記憶を抹消したい(この辺が近未来)主人公は
無理矢理家に連れ込んで、同居人に事の顛末を話すも、

実はその同居人たちは…!!



<登場人物>


 葉室 蒼子 (はむろ そうこ) …一応主人公。異様な戦闘能力を誇る。でもそれをずっと隠していた。成田運送会社をジャックして逃走…?


 中御門 恋(なかみかど れん)…おぼっちゃま。とっても穏やか。でも適応能力が非常に高い。


 リーヨン・エシュワール…政府の特殊警察。物事をひっかきまわすのが大好き。

 ルアン・リトワール…同じく政府の特殊警察。暗い。

 榊 (さかき)…成田運送会社社員。蒼子に半ば誘拐された。パーキングエリアでいつも女に言い寄られる。でも相手にしない。運転手
 
 浮舟(うきふね)…やっぱり成田運送会社社員。トラックの倉庫から出てきた。女に言い寄るけど相手にしてもらえない。

初めまして!結城小夜子と申します。

今日からこのアメブロで小説を連載したいと思いますので

どうぞよろしくお願いします。

読んでやってくださいませ。