今回は、女性の挿入障害についてです。
診断基準では、膣けいれん・ワギニスムス、性交疼痛症などや性嫌悪症という名称で呼ばれています。
このような方は我慢しないで相談にすぐに行っていただきたい。
例えば、(相談すぐに来なかった例)
結婚して20年になるが閉経後(年齢的には若い)から2年間セックス拒否している女性。
結婚から2年ほどたった時、夫が冗談で妻の身体の特徴のことを言ったのですが、奥さんが前から自分でも気にしていたことなのでとてもショックを受け、旦那さんにどうしてそんなことを言うのかと喧嘩になった。が、旦那さんは自分が全面的に悪かったと思い丁寧に謝ることで解決したのですが、その後、夫とのセックスが嫌だなと思い始めたと同時に挿入が痛くなりはじめる。
ただ、夫はこの20年間は普段からやさしく、子育ても手伝ってくれまた、とても自分のことを好きでいてくれるし、セックスも特殊なことを要求するわけでもないのですが、この20年間はセックスをするときには嫌だなという思いと飛び上がるほどではないが痛みがあるためにしたくないとずっと思っていた。
セックスセラピーでは認知行動モデルという捉え方で問題を考えます。
認知行動モデルというものを用いて簡単に説明すると
『状況』としては、夫に冗談で自分の身体についてネガティブなことをいわれた。その数日後、仲も直ったしセックスをしようとしたとき。
ネガティブなことをいわれた後の一回目のセックスの時
『認知(その瞬間に浮かんだ考えやイメージ)』:「嫌だな」や「私が嫌だなと思っている身体を見られるのか」
『行動』:自分からはアクションを取らない
『気分』:・不安 ・嫌悪感
『身体化』:・筋緊張 ・膣が濡れない
『スキーマ』:まだ作られていない
『状況』として、2回目以降のセックスを求められた場面では(上記の図で示す)
『認知(その瞬間に浮かんだ考えやイメージ)』:「嫌だな」や「また、痛いのを我慢しながらやらないといけないのか」「私が嫌だなと思っている身体を見られるのか」
『行動』:・挿入時に腰が引ける ・自分からは動かないようにする
『気分』:・嫌悪感 ・不安 ・悲しさ
『身体化』:・膣が濡れない ・筋緊張
『スキーマ』:・痛いの嫌だな ・私が我慢すればいいのか ・断ったら嫌われるかな
『スキーマ』とは、人(あなた)が蓄積してきた体験や知識の集合体のことをいいます。
もう少し簡単に言うと【思い込み】や【先入観】【ルール(こうしないといけない等)】などのことをいいます。
『スキーマ』はその瞬間に起こる『認知』や『行動』に強く影響を及ぼします。
今回の場合は、始まりはコンプレックスに思っていた身体のことを夫にいわれた。それがはじめは『認知』のみに影響を及ぼしていたが、嫌だなと思いながら我慢をし続けた結果『スキーマ』にまで影響を及ぼすようになった。
『スキーマ』は脳の長期記憶であり固定化した考えや脳内のネットワークの固定化の問題である。
それが、一瞬で今の『認知』にも影響を及ぼすことになる。
『スキーマ』は約6か月程度で形成されると考えられるのでその前には相談に行ってもらいたい。
慢性痛などと同じで、先ほども書いたように脳のネットワークが固定化してしまうことで問題が生じていると言えます。
さて、このご夫婦は夫が協力で辛抱強く取り組んでくれたために2年8カ月で問題解決いたしました。
離婚するケースもあります。
また、嫌だなという思いを我慢して3年間(1年以上)はやっていたがもう無理となって相談に来たりする場合も『スキーマ』の問題に発展しているために解決には時間がかかります。
我慢した期間が長ければ長いほど解決には時間はかかってしまいます。
ただし、我慢しないで来ていたと仮定すると、違和感を感じてから1か月~2か月ぐらいで相談に来られている夫婦・カップルを参考にすると問題解決までに1回~5回程度の回数で解決しております。
理由は『スキーマ』まで影響が及んでいない段階で相談に来られたからです。
このような方は『スキーマ』が作られる前の段階で、すぐに相談に行かれることを勧めます。
・挿入はできるが、「相手に悪いと思って、痛いのを我慢している」
・今まで普通に気持ちよくセックスができていたが、何かのきっかけであるときから嫌悪感や痛みがある方
・男性に嫌われたくないと思って痛いのを我慢している方
・SEXを求められればするのだが、何となく以前からセックスに対する嫌悪感をもちながら行っている方
・痛いときもあれば痛くないときもあり、どうして痛くなるのかがわからない方。
今回は認知行動モデルで女性の挿入障害について書きましたが、もちろん男性側の問題も同じです。
ただ、男性側で途中からしなくなった問題や未完成婚(男性側・女性側ともに)で悩まれている方は、『スキーマ』に蓄積された知識が間違っていることが問題になっている場合がほとんどです。
なので、すぐに相談に行かれることをお勧めいたします。
千田 恵吾