店のおばさんに、無視されて、私は、坊主の遍路は迷惑なのかなぁ、と思ってしまう。

 私は、話しかけても、無視されたので、買う予定のポテトチップスを見ながら、『これはかさばるし、リュックに入れても、中身が粉々になるだろう。』と、思った。それで、ガムを買うことにした。なので、ポテトチップスを元の棚に返して、ガムを持って、レジに行った。すると、おばさんが、もうレジにいた。『あれ、彼と話いていたんじゃなかったの?。』と思う。私が、ガムをレジに出して、

「いくらですか?。」と聞くと、おばさんは、きょとんとしている。なのでもう一度、「いくらですか?。」と聞きなおすと、おばさんは、「百二十円です。」と答えてくれる。私は、百二十円を支払った。

 さて、私は、岩手からのお遍路さんの彼と、今日は、一日中、いっしょに歩くものだと思っていた。彼はどこからみても健康そうだった。

 けれども、二人で店を出たところで、彼が、

「自分はこの体だから、先に行ってください。」と、腰のあたりを擦りながら言う。私は、

「えっ、・・・・この体?。」顔をみると、

「この体だからと、早く歩けないから。・・」と、すまなそうにほほ笑む。

 彼が、しきりにそう言うもんだから、私は、妙な気分になって、一人で歩き始めた。『速く歩けないからって。私は、ウオカーズハイになって、歩いていたつもりはないんだけれども、、、。』

 ふっと、振り返ってみると、彼が、店の前の道路を挟んだ向こう側のベンチの赤い座布団の上に座って、にこにこしながら見送ってくれている。日光が赤い、と言っても、朱色なのだが、その座布団にあたって、温かそうだ。

 その温かさと彼の笑顔に、私は安心して、ふたたび歩き始める。・・・・つづく。