私は彼の顔を見た。なんとなく今まで見たことのない種類の顔立ちだった。

 二人で、あれこれと、話をしながら歩いていると、彼が、

「自分も坊さんになりたくて、お遍路をしているんです。」と言う。私は、

「ほう、ほう。」

 何かいい方法はないかと、彼と話をしながら、しばらくの間、一緒に歩くことになった。

 県道のゆるい上り坂が続いたころ、彼が少し休もうと言うようになったので、道沿いのお菓子屋さんによって、休息をすることにした。

 彼は、スーッと、店の奥の方に入ってゆき、品物をみるようなふりをしている。そこの棚には、酒のつまみのスルメなどが並べてあった。私は、少し離れた所から、

「スルメが好きなの?。」と、彼に声をかけた。彼は、ニッコっとしながら、手を少し振った。『違うのか?。』と私。

 私が、何か安いものを買おうと、店のおばさんの方を向くと、おばさんはきょとんと奇妙な顔をして、私を見ている。

『どうして』と、私は、怪訝に思う。

 私は、ポテトチップスを買おうと思い、菓子の棚まで行った。帰ってくると、彼とおばさんが椅子に座って普通に話をしている。『なんだ、普通だ。』

 ただ、おばさんは、私とは話をしてくれなかった。・・・つづく。