私は、力を抜くようにして、歩きの乗りを良くする。
段々、段々、歩きのスピードが早くなっていく。
いつもだと、背負った荷物のせいで、走る気も起きないのに、私は小走りで走り抜けていく。
息苦しくもない。
非常に冷静だった。
視覚的な変化は、まだ起きていないが、スタスタと走り続ける。
海と街並みと工場と、風景を見ながら、スタスタ、スタスタ、スタスタ、スタスタ。
頭を一定の高さに保ちながら走り続ける。
このまま走り続けると、後で、身体が痛いんだろうなぁ、これ以上苦しむと心を立て直す事が出来ないかもしれない、などとの余計な心配がよぎる。
それが、因となって、今の気持ちの中に、スピードを抑えようとしている意識があって、膝のあたりで、抑制の力が働いてることを感じた。
『倒れるまで行け。』
余計な心配よりも、強い思いが、お告げのように身体の中をはしる。
さらに体は速くなって、
バタバタと走る。バタバタ、バタバタ、走る。バタバタ、バタバタ、走る。…づづく。