神社を、七時に出発する。町中から県道を歩き、田舎道を数キロ歩いて、

第三十四番種間寺(本尊・薬師如来・おん ころころ せんだり まとうぎ そわか)大師堂(南無大師遍照金剛)をお参りする。

 その後、私は、門前で托鉢しようか、どうしようかと、迷いながら、門の方へ歩いていった。お金の事はあまり考えたくはなかったのだが、やっぱりねぇー、手持ちが少ないもんだから、心配にもなるのだ。

 すると、納経所の出口あたりで、私はお婆さんに呼び止められた。お婆さんは、すぐ近くのベンチに座って、手ぬぐいを頭からはずし、自分の隣を手でトントンと叩いた。「あんた、ちょっとここに座んなさい。」と言う事らしい。彼女はこの寺の掃除をされにこられていたようだ。

 私がベンチに座ると、お婆さんは、

「私もね、若いころにお四国を廻ったことがあるんですよ。腸の病気になって、二回も手術をして、三回目がいやでいやで、泣いてばかりいたんですよ。それで、家で寝ていてもしょうがないと思うようになって、この寺のお薬師さんに、少し楽にしてください、楽にしてもらえたら、八十八か所を歩いてお礼参りさせていただきますから、とお願いしたんですよ。」と言う。私も、病気平癒の御祈祷は、前の寺でよくしていたので、つい、興味があって、

「そうしたら。」と合いの手を入れてしまった。お婆さんは、

「そうしたら、一週間ほどして、本当に少し楽になったんです。」と言う。・・・・つづく。