▲ 乳ガンの聖地
スイスにザンクトガレンという場所がある。
表記のSaint Gallがシンボリックに示すように,キリスト教文化の聖地と言ってもよい。
世界遺産のザンクトガレン修道院で有名・・・・・って,さも知っているようなことを書いたが,行ったことはない。
この聖なる地が,実は医療関係者の一部で崇められている。
それは,乳ガン関係者たち。
乳ガンの第一線の研究者達の国際的な集まりが,二年に一度ここで開かれている。
この「ザンクトガレン会議」で決められた(主に早期)乳ガンの診断治療方針が,その後の国際的なスタンダードになっている。
まるで,乳ガン医療者の掟を決める宗教会議の如し。
乳ガン関係者のメッカ,お伊勢参り。
そう,ここは乳ガン医療者の聖地なのだ。
▲ 広まる教え
ここは聖地からはるか東の果ての果て。
ちっぽけな島国の,さらに僻地の僻地。
こんなところにもザンクトガレンの信者がいる。
先日,自分が関係する市中病院で,外科の○田先生が病理にやってきた。
なんでも,とある乳ガン患者さんの病理検査に関して,話があるらしい。
聞けば,この患者さんの乳癌の治療の方向が決まらない。
「ザンクトガレンでは,この患者さんはケモ(=化学療法)の選択に悩むケースとされてます」と○田先生は説明してくれる。
「ふむふむ」
自分は,ザンクトガレンなど初めて聞いたわ・・・的な態度で拝聴する。
「それでですね,病理切片でのMIB-1陽性率が重要となってくるワケでして・・・・・なんとか測ってもらえませんか」
簡単に言えば,乳ガン組織内のたくさんのガン細胞の中で,増殖している細胞の数をかぞえてくれ(=MIB-1陽性率)という依頼なようだ。
その数は,化学内分泌治療の適応の決定に大いに参考になる。
「このMIB-1の重要性って,ザンクトガレンで決まりましたからね」
○田先生は,さも当然のようにザンクトガレンを強調する。
まるで,えっそんなことも知らないの?ザンクトガレンの言うことを聞かないと異端やぞ,ってな感じだ。
▲ 直輸入の弊害
ザンクトガレンの「教え」は,自分もある程度は知っている。
MIB-1が大事なのも分かる。
やってもムダとは言わない。
けれども,本邦の現状を無視した「直輸入」はどうかと思う。
まず,乳ガンのどの場所を幾つ数えるのかとか,MIB-1を染める免疫染色の施設差とか,事前に解決すべきことがある。
それに,もう少し本音を言えば,そこまでも我ら病理医に求められると,相当な負担増になる。
MIB-1陽性率を出すのは,実は時間がかかる。
こんな固まっていない土台の上でMIB-1導入に踏み切っても,現場の反発や混乱を招くだけだ。
それに,ここで承知したら,胃癌や大腸癌方面からも同様のことを言われるかもしれん。
そうなったら,完全に首が回らなくなる。
▲ 教えは尊いが・・・
今回のケースは「特別に今回だけは」ということで,MIB-1を測定することにする。
これからも似たケースはあるだろうし,MIB-1陽性率をずっと無視するワケにはいかないし,たぶん簡易測定法のようなものに落ち着くんだろう。
しかし,妥当なる決着にはもう少し時間がかかる気がする。
尊いザンクトガレンの教え。
それは,残念ながら極東の僻地にまでは完全にはまだ浸透していない。
次回のザンクトガレン会議で,「従わないモノは火炙りに処す」とでも決まれば,しょーがない,従おうと思う。
柄にもなく,電話で若手女医さんに怒鳴りつけてしまったことがある。
それは,とある日の業務がとっくに終わった遅がけの時間。
皆が帰り支度に忙しい夜の7時ころ。
プーッ・・・プーッ・・・プーッ・・・
何の前触れもなく,病理部内に突然,そしてしっかりとアラームが鳴り響く。
それを耳にしたモノは,いっせいに殺気立つ。
っん・・・何事!?
オイオイオイオイ・・・なんやねん。
悪い冗談ヤメっちゅーねん,今頃。
それもそのはず,
このアラームは,術中迅速を知らせるものだから。
手術中に提出された組織標本を,すぐに顕微鏡でのぞいて診断をする「術中迅速」。
この術中迅速検体が提出された場合,その組織標本を作る技師さんと診断を請け負う病理医は,その検査のあいだ束縛される。
たかが30分くらいなんだが,拘束は拘束だ。
それも仕事だから文句は言わないが,でも所詮それは業務時間内での話。
8:30から17:30までは辛抱する,という話。
その後は知らん,ハッキリ言って。
トゥウェンティーフォーアワーズアデイ,セブンデイズアウィーク・・・ってな世界では無い。
そこのところは承知しておいてもらわんと困る。
その不文律に挑むように,アラームがふてぶてしく鳴り響いている。
Gクンが諦めたようにダムウェイター(手術室と病理部をつなぐ簡易エレベーター)の扉を開けると,そこには術中迅速検体が到着している。
「シノ先生・・・術中迅速が来てますが,どうしましょうか?」
「何科から?」
そりゃ手術なんて,時間通りに行かないコトがあることなど,こちらも承知だ。
時間外になってしまっても,できるだけは協力する。
でも,それには連絡してくれないと困る。
それって当り前だし,最低限のマナーだろう。
「提出科は・・・○○科です」
「う~ん・・・まっ,しょーがないから,やってあげよっか」
「・・・ハイ・・・」
いつも素直なGクンにしては珍しく,歯切れの悪い返事だ。
見過ごせないルール違反。
さっすがにこれにはちょっとひとこと文句言わなきゃなぁ・・・・・
技師さんたちの視線と聞き耳を意識しながら,手術室に電話をかける自分。
電話に出たのは,某外科所属・若手女医さん。
「ハイ,なんでしたでしょうか?」
「今,術中迅速を提出されたよね?」
「ハイ」
「あのー,これって非常に困るんやけど」
「はぁー?」
時間外で手薄になった手術室で電話を取るのは,その手術関係者の最も下っ端であるモノの勤め。
下っ端はこういう雑用をこなさなきゃいけないし,叱られるのも仕事。
「あのねぇ・・・連絡無しに検体を提出するのはルール違反やし,だいたい時間外の夜7時に検体提出して当り前のように病理がやってくれるって思ったら大間違いやと思うけど」
「ス,スミマセン・・・知らなかったもので・・・」
「こんな当り前のこと,医局の中でしっかり周知しておいてもらわんとダメやん!」
「ハイ」
「そんなことするんならお宅らの迅速はもうやらへんで,ぅんなもん時間外のものまで受けてたら,ウチら帰るに帰れんやん,技師さんなんて帰り支度終わってるし・・・」
ちょっとアピールするつもりが,オートクリン的に怒りが増幅し,劇場型パフォーマンスに陥った自分。
とばっちりを受けた女医さん。
溜飲が下がった?Gクン以下病理技師一同。
これも仕事だからしょーがない。
言わねばならぬことを言ったまでだし,言われるべきことを言われたまでだし,言ってもらうべきことを言ってもらったまでだ。
敢えて言えば,自分としては若手女医さんではなく,手術のオペレーター(執刀医)に直接文句すべきだったんだろうが。
なので,あれ以来とばっちりにあった女医さんから音沙汰がないのが,ずっと気になっていた。
劇場型シチュエーションに駆られて怒ってはみたものの,若手を血祭りに上げるとはちょっと男が下がるか・・・・・
そう思っていたら,とある日,ひょっこりと病理にやってきた彼女。
「すいませ~ん,○○さんの病理,教えてください!」と言いに来てくれた。
元気そうだ。
「ああ,エエよ・・・・・ところで,この前は少し言い過ぎて悪かったな」
「あっ,いえいえ,ウチらが悪かったんで,その節は申し訳ありませんでした・・・」
少しうれしく,少し恥ずかしくもある初冬の夕時。
それは,とある日の業務がとっくに終わった遅がけの時間。
皆が帰り支度に忙しい夜の7時ころ。
プーッ・・・プーッ・・・プーッ・・・
何の前触れもなく,病理部内に突然,そしてしっかりとアラームが鳴り響く。
それを耳にしたモノは,いっせいに殺気立つ。
っん・・・何事!?
オイオイオイオイ・・・なんやねん。
悪い冗談ヤメっちゅーねん,今頃。
それもそのはず,
このアラームは,術中迅速を知らせるものだから。
手術中に提出された組織標本を,すぐに顕微鏡でのぞいて診断をする「術中迅速」。
この術中迅速検体が提出された場合,その組織標本を作る技師さんと診断を請け負う病理医は,その検査のあいだ束縛される。
たかが30分くらいなんだが,拘束は拘束だ。
それも仕事だから文句は言わないが,でも所詮それは業務時間内での話。
8:30から17:30までは辛抱する,という話。
その後は知らん,ハッキリ言って。
トゥウェンティーフォーアワーズアデイ,セブンデイズアウィーク・・・ってな世界では無い。
そこのところは承知しておいてもらわんと困る。
その不文律に挑むように,アラームがふてぶてしく鳴り響いている。
Gクンが諦めたようにダムウェイター(手術室と病理部をつなぐ簡易エレベーター)の扉を開けると,そこには術中迅速検体が到着している。
「シノ先生・・・術中迅速が来てますが,どうしましょうか?」
「何科から?」
そりゃ手術なんて,時間通りに行かないコトがあることなど,こちらも承知だ。
時間外になってしまっても,できるだけは協力する。
でも,それには連絡してくれないと困る。
それって当り前だし,最低限のマナーだろう。
「提出科は・・・○○科です」
「う~ん・・・まっ,しょーがないから,やってあげよっか」
「・・・ハイ・・・」
いつも素直なGクンにしては珍しく,歯切れの悪い返事だ。
見過ごせないルール違反。
さっすがにこれにはちょっとひとこと文句言わなきゃなぁ・・・・・
技師さんたちの視線と聞き耳を意識しながら,手術室に電話をかける自分。
電話に出たのは,某外科所属・若手女医さん。
「ハイ,なんでしたでしょうか?」
「今,術中迅速を提出されたよね?」
「ハイ」
「あのー,これって非常に困るんやけど」
「はぁー?」
時間外で手薄になった手術室で電話を取るのは,その手術関係者の最も下っ端であるモノの勤め。
下っ端はこういう雑用をこなさなきゃいけないし,叱られるのも仕事。
「あのねぇ・・・連絡無しに検体を提出するのはルール違反やし,だいたい時間外の夜7時に検体提出して当り前のように病理がやってくれるって思ったら大間違いやと思うけど」
「ス,スミマセン・・・知らなかったもので・・・」
「こんな当り前のこと,医局の中でしっかり周知しておいてもらわんとダメやん!」
「ハイ」
「そんなことするんならお宅らの迅速はもうやらへんで,ぅんなもん時間外のものまで受けてたら,ウチら帰るに帰れんやん,技師さんなんて帰り支度終わってるし・・・」
ちょっとアピールするつもりが,オートクリン的に怒りが増幅し,劇場型パフォーマンスに陥った自分。
とばっちりを受けた女医さん。
溜飲が下がった?Gクン以下病理技師一同。
これも仕事だからしょーがない。
言わねばならぬことを言ったまでだし,言われるべきことを言われたまでだし,言ってもらうべきことを言ってもらったまでだ。
敢えて言えば,自分としては若手女医さんではなく,手術のオペレーター(執刀医)に直接文句すべきだったんだろうが。
なので,あれ以来とばっちりにあった女医さんから音沙汰がないのが,ずっと気になっていた。
劇場型シチュエーションに駆られて怒ってはみたものの,若手を血祭りに上げるとはちょっと男が下がるか・・・・・
そう思っていたら,とある日,ひょっこりと病理にやってきた彼女。
「すいませ~ん,○○さんの病理,教えてください!」と言いに来てくれた。
元気そうだ。
「ああ,エエよ・・・・・ところで,この前は少し言い過ぎて悪かったな」
「あっ,いえいえ,ウチらが悪かったんで,その節は申し訳ありませんでした・・・」
少しうれしく,少し恥ずかしくもある初冬の夕時。
その女とは以前に逢ったことがある。
それは,ジーノが久し振りに訪れた別宅でのこと。
その一戸建ては,山麓に沿って走る通り沿いにある。
山裾につながる樹木の紅葉が,色鮮やかなコントラストを奏で終えた季節。
落葉の絨毯敷きを,ジーノの立っている庭が辛うじて切り裂いている。
表通りには,人通りはほとんど無い。
たまに通り過ぎるクルマが,この淋しげな場所が人里に近いことを教えてくれる。
庭には,一台のクルマが止まっている。
白い小型プジョー。
クルマの傍らに女が一人,ポツリと立っている。
グレーのツイードのジャケットにタックの入ったフレアスカート。
イヤ・・・どこかの受付嬢が召す制服のようだったかもしれない。
少し不釣り合いにつばの広い白い帽子が,女の顔を隠している。
誰だろう・・・?
ジーノはさりげなく近寄り,話しかけてみる。
「寒くなりましたね」
――― そろそろ冬用タイヤに代えなくちゃって思ってるの
「よかったら,お手伝いしましょうか?」
――― そうね,助かるわ
そう言ってほほ笑む女。
帽子越しに,ジーノをじっと見る上目使いを感じる。
それに気づかぬフリをして,彼は4本のタイヤを順番に見てまわる。
トランクを開ける。
新品の冬用タイヤ4本と工具入れの他には,何も入っていない。
まずはタイヤを取りだし,脱着がスムーズにいくようにクルマのドアにあらかじめ立てかけておく。
次に,ホイールナット締めを手にし,4本のタイヤのナットを弛めておく。
そうしながら,女の様子を伺うが,女は後ろから自分の手際を熱心に観察しているようだ。
女の感心しきった眼差しを想像し,ひとり悦に入る。
タイヤ交換に入る。
まずは,右前のタイヤ横の指定位置にジャッキをセットする。
タイヤが1センチほど浮くまでジャッキ・アップ。
ナットを緩め取り,タイヤを外す。
すぐさま,ニュータイヤを装着。
ナットを締めて,ジャッキを元通りへ。
・・・そんな作業を,合計4行程,時間にして40分ほど繰り返す。
後ろに突っ立っている女に,そのスムーズな流れ作業を見せつけてやる。
女は,自分の手慣れた作業を見て,どう思ったろう?
こういったメカに強い一面は,男の株を上げる。
・・・そんな週刊誌記事を思い出す。
少なくとも,ポイントダウンは無いハズだ。
4本目のタイヤを装着し終えて,やれやれと腰を伸ばす。
さてと・・・,女にどんな代償を求めようか?
メカに強い男に依る,無償タイヤ交換。
これは,高くつくかもしれん。
ではっと,女の方に振りかえろうとした,まさにその時だった。
ピキっ!
それは,何の前触れも,前兆も,予感も,気配すらも感じさせなかった。
すぐに彼の腰に強烈なる痛みが走る。
うっ・・・・
声に出ない叫び。
誰やねん,こんなことしやがって。
振り返って,腰を不意打ちした犯人の顔を見てやりたい。
それは女かもしれない。
イヤ,きっとそうだ。
この状況で,腰を強打しうる人物はあの女しかいない。
しかし,女を見るのは叶わない。
下手に体をひねると腰に激痛が走る。
観念して動かずにじっとしている。
しばらくして女が言う。
――― ひとこと申し上げてよくって?
どーぞどーぞ,こっちはそれどころやあらへんって
――― たとえばカリフォルニア郊外あたりの設定で,道端でエンストしたクルマに途方に暮れる女性が居て,通りかかったジョギング中の初老男性が「どれどれ,見てあげよう」ってボンネットを開けるとするわね
えっらい具体的なシチュエーションやなぁ
――― エンストの原因がこれらしいって分かって,男が顔をあげると女が銃を構えてて,実はこの女,男を待ち伏せしてたんだってわかるんだけど,時すでに遅し・・・・・ってストーリーがよくあるんだけど
よくは無いかもしれん・・・
――― あなたって,そういうタイプね
ほっとけ
――― ホントはあなたに頼むつもりはなかったんだけど
いまさら,それは無いやろ・・・
――― おかげで安く済んだみたいね,ありがとう
こっちは高く付いたワ!
――― またお会いできればうれしいわ,それじゃあ
そう言って女は去る。
゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆
田舎の実家に帰って,タイヤ交換中に,ギックリ腰になった。
こんなことは,これで二回目だ。
もう,そんなことムリしてやるな!,年を考えろ・・・って,言われてしまった。
なんだか,ちょっと淋しい・・・・・
それは,ジーノが久し振りに訪れた別宅でのこと。
その一戸建ては,山麓に沿って走る通り沿いにある。
山裾につながる樹木の紅葉が,色鮮やかなコントラストを奏で終えた季節。
落葉の絨毯敷きを,ジーノの立っている庭が辛うじて切り裂いている。
表通りには,人通りはほとんど無い。
たまに通り過ぎるクルマが,この淋しげな場所が人里に近いことを教えてくれる。
庭には,一台のクルマが止まっている。
白い小型プジョー。
クルマの傍らに女が一人,ポツリと立っている。
グレーのツイードのジャケットにタックの入ったフレアスカート。
イヤ・・・どこかの受付嬢が召す制服のようだったかもしれない。
少し不釣り合いにつばの広い白い帽子が,女の顔を隠している。
誰だろう・・・?
ジーノはさりげなく近寄り,話しかけてみる。
「寒くなりましたね」
――― そろそろ冬用タイヤに代えなくちゃって思ってるの
「よかったら,お手伝いしましょうか?」
――― そうね,助かるわ
そう言ってほほ笑む女。
帽子越しに,ジーノをじっと見る上目使いを感じる。
それに気づかぬフリをして,彼は4本のタイヤを順番に見てまわる。
トランクを開ける。
新品の冬用タイヤ4本と工具入れの他には,何も入っていない。
まずはタイヤを取りだし,脱着がスムーズにいくようにクルマのドアにあらかじめ立てかけておく。
次に,ホイールナット締めを手にし,4本のタイヤのナットを弛めておく。
そうしながら,女の様子を伺うが,女は後ろから自分の手際を熱心に観察しているようだ。
女の感心しきった眼差しを想像し,ひとり悦に入る。
タイヤ交換に入る。
まずは,右前のタイヤ横の指定位置にジャッキをセットする。
タイヤが1センチほど浮くまでジャッキ・アップ。
ナットを緩め取り,タイヤを外す。
すぐさま,ニュータイヤを装着。
ナットを締めて,ジャッキを元通りへ。
・・・そんな作業を,合計4行程,時間にして40分ほど繰り返す。
後ろに突っ立っている女に,そのスムーズな流れ作業を見せつけてやる。
女は,自分の手慣れた作業を見て,どう思ったろう?
こういったメカに強い一面は,男の株を上げる。
・・・そんな週刊誌記事を思い出す。
少なくとも,ポイントダウンは無いハズだ。
4本目のタイヤを装着し終えて,やれやれと腰を伸ばす。
さてと・・・,女にどんな代償を求めようか?
メカに強い男に依る,無償タイヤ交換。
これは,高くつくかもしれん。
ではっと,女の方に振りかえろうとした,まさにその時だった。
ピキっ!
それは,何の前触れも,前兆も,予感も,気配すらも感じさせなかった。
すぐに彼の腰に強烈なる痛みが走る。
うっ・・・・
声に出ない叫び。
誰やねん,こんなことしやがって。
振り返って,腰を不意打ちした犯人の顔を見てやりたい。
それは女かもしれない。
イヤ,きっとそうだ。
この状況で,腰を強打しうる人物はあの女しかいない。
しかし,女を見るのは叶わない。
下手に体をひねると腰に激痛が走る。
観念して動かずにじっとしている。
しばらくして女が言う。
――― ひとこと申し上げてよくって?
どーぞどーぞ,こっちはそれどころやあらへんって
――― たとえばカリフォルニア郊外あたりの設定で,道端でエンストしたクルマに途方に暮れる女性が居て,通りかかったジョギング中の初老男性が「どれどれ,見てあげよう」ってボンネットを開けるとするわね
えっらい具体的なシチュエーションやなぁ
――― エンストの原因がこれらしいって分かって,男が顔をあげると女が銃を構えてて,実はこの女,男を待ち伏せしてたんだってわかるんだけど,時すでに遅し・・・・・ってストーリーがよくあるんだけど
よくは無いかもしれん・・・
――― あなたって,そういうタイプね
ほっとけ
――― ホントはあなたに頼むつもりはなかったんだけど
いまさら,それは無いやろ・・・
――― おかげで安く済んだみたいね,ありがとう
こっちは高く付いたワ!
――― またお会いできればうれしいわ,それじゃあ
そう言って女は去る。
゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆
田舎の実家に帰って,タイヤ交換中に,ギックリ腰になった。
こんなことは,これで二回目だ。
もう,そんなことムリしてやるな!,年を考えろ・・・って,言われてしまった。
なんだか,ちょっと淋しい・・・・・
中二・長男のいっ君は風呂が嫌い。
ここ数日,風呂に入っていない日が続いている。
責任ある親として,それを何もしないで見守っているワケではない。
夕食後に,ダメ元で「いっ君,風呂入って来い」と言うと,「わかった,でも,もうちょっと後で」と返ってくる。
小一時間くらいして,皆が入浴を済ますたびに「次,入って」という声かけをするも,「イヤや,もうちょっと後で」と無視される。
っで,11時を過ぎて部屋を覗くと,すでにスヤスヤと眠っている。
「ホ~ラ言ったやん,早よ入れって」
「風呂入れっちゅーねん,アホ!」
「飯抜くぞ,この愚かモン!」
こうなったら意地でも目覚めないいっ君・・・・・
何を言ってもムダなようだ。
告白するが,そんな「汚い」時代が,中学時代の自分にはあった。
ちなみに,自分の姉にもあった。
夜なかに電気つけっぱなしで寝てしまい,風呂に入らず。
それが二三日続くと,さすがに気になって,朝風呂に入って誤魔化したもんだ。
なので,経験者は語る。
風呂なんて入らなくても死なへんって。
ほっとけば,そのうち気付くって。
そうやってやりすごしてきたが,これにも限度がある。
じゃあ,どうすればいい?
もう忘れてしまったが,これってやはり「他人の眼」が気になって気付くかもしれん。
経験的には確か,同級生女子の視線や噂のようなものが気になったりしたんだっけ?
親にガミガミ言われて直した記憶など無い。
だとすれば,女なんて嫌いヤ!って突っ張ってるいっ君には,もう少し時間がかかるかもしれん。
これって青春なのかなぁ・・・・・
それともズボラなだけ?
ここ数日,風呂に入っていない日が続いている。
責任ある親として,それを何もしないで見守っているワケではない。
夕食後に,ダメ元で「いっ君,風呂入って来い」と言うと,「わかった,でも,もうちょっと後で」と返ってくる。
小一時間くらいして,皆が入浴を済ますたびに「次,入って」という声かけをするも,「イヤや,もうちょっと後で」と無視される。
っで,11時を過ぎて部屋を覗くと,すでにスヤスヤと眠っている。
「ホ~ラ言ったやん,早よ入れって」
「風呂入れっちゅーねん,アホ!」
「飯抜くぞ,この愚かモン!」
こうなったら意地でも目覚めないいっ君・・・・・
何を言ってもムダなようだ。
告白するが,そんな「汚い」時代が,中学時代の自分にはあった。
ちなみに,自分の姉にもあった。
夜なかに電気つけっぱなしで寝てしまい,風呂に入らず。
それが二三日続くと,さすがに気になって,朝風呂に入って誤魔化したもんだ。
なので,経験者は語る。
風呂なんて入らなくても死なへんって。
ほっとけば,そのうち気付くって。
そうやってやりすごしてきたが,これにも限度がある。
じゃあ,どうすればいい?
もう忘れてしまったが,これってやはり「他人の眼」が気になって気付くかもしれん。
経験的には確か,同級生女子の視線や噂のようなものが気になったりしたんだっけ?
親にガミガミ言われて直した記憶など無い。
だとすれば,女なんて嫌いヤ!って突っ張ってるいっ君には,もう少し時間がかかるかもしれん。
これって青春なのかなぁ・・・・・
それともズボラなだけ?
「前立腺生検」~ 前立腺がんの確定診断のために行われる検査法
前立腺とは,男性の膀胱の真下,お尻の穴から数センチほど斜め前方上の辺にある組織。
そこにはガンができやすく,その診断のために泌尿器科で生検が行われる。
生検とはつまり,お尻の穴から入ったすぐの「直腸」と呼ばれる部位から,上方に位置する前立腺に向かって針を指す。
その刺す針は特殊なもので,ストローのように中空になっている。
刺した針を引き抜くことで,その中空部分に含まれた組織が引きちぎられる。
その取れてきた糸状の前立腺組織片を,顕微鏡でのぞいて診断する。
そんな検査法だ。
*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆
市中病院の病理標本を診断してると,驚きの症例があった。
それは前立腺生検なんだが,なっなっなんと・・・
なんとなんと,本数にして36本!!!
糸くずのような生検組織が30プラス6本,プレパラートにして6枚に,きれいに並べてある。
自分の経験の中では,この数字は新記録だ。
今までの最多が24くらいだったので,言ってみれば大幅なる記録更新かもしれん。
・・・っと言っても,よく分からんかもしれん,素人さんには。
一般に前立腺検査における生検本数としては,平均して10本前後じゃないだろうか,8とか12とか。
少し前だと,6本程度が推奨されていた記憶がある。
まぁ,その数が多ければ多いほど,ガンが見つかる可能性が高くなると言えば言える。
しかし,多ければ良いってもんじゃないのも事実。
その分,ムダが多くなって,費用対効果が減じることになる。
そのバランスを考えて,本数としては10くらいが適切だってことなんだろう。
ちなみに,自分の施設だと現状では12本が基本で,きわどい例だと18本とかに増える。
だんたいこんなもんだろう,全国津々浦々,このご時世における世間様一般的には。
それが36本ってことは,えーっと,そーだなー・・・
その凄さをムリヤリ例えたとしたならば,
1)36歳のおねえさんの誕生日における,バースデーケーキを準備すると仮定して,普通は大きめのローソク3本とかで済ませるのが普通だが,何を思ったかそれを律儀に36本立ててしまい,ケーキ表面がローソクに覆われてしまって「軍艦島」状態になってしまう,とか。
2)インフルエンザの予防接種は,通常大人一回のところ,小学生以下の小児は二回必要とされるんだが,それを多ければ多い程良いと勘違いしたヒトが36回接種してしまった,とか。
3)真央ちゃんが復活を賭けたグランプリシリーズにおいて,こうなったらどーにでもなれっとばかりに,フリーの演技でトリプルアクセルを36回もトライしてしまった,とか。
こんな「飛び抜けた」感じかもしれん。
「悪性像は見られず,過ぎたるは及ばざるが如しです」
報告書にそう書きそうになって,思いとどまった。
前立腺とは,男性の膀胱の真下,お尻の穴から数センチほど斜め前方上の辺にある組織。
そこにはガンができやすく,その診断のために泌尿器科で生検が行われる。
生検とはつまり,お尻の穴から入ったすぐの「直腸」と呼ばれる部位から,上方に位置する前立腺に向かって針を指す。
その刺す針は特殊なもので,ストローのように中空になっている。
刺した針を引き抜くことで,その中空部分に含まれた組織が引きちぎられる。
その取れてきた糸状の前立腺組織片を,顕微鏡でのぞいて診断する。
そんな検査法だ。
*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆
市中病院の病理標本を診断してると,驚きの症例があった。
それは前立腺生検なんだが,なっなっなんと・・・
なんとなんと,本数にして36本!!!
糸くずのような生検組織が30プラス6本,プレパラートにして6枚に,きれいに並べてある。
自分の経験の中では,この数字は新記録だ。
今までの最多が24くらいだったので,言ってみれば大幅なる記録更新かもしれん。
・・・っと言っても,よく分からんかもしれん,素人さんには。
一般に前立腺検査における生検本数としては,平均して10本前後じゃないだろうか,8とか12とか。
少し前だと,6本程度が推奨されていた記憶がある。
まぁ,その数が多ければ多いほど,ガンが見つかる可能性が高くなると言えば言える。
しかし,多ければ良いってもんじゃないのも事実。
その分,ムダが多くなって,費用対効果が減じることになる。
そのバランスを考えて,本数としては10くらいが適切だってことなんだろう。
ちなみに,自分の施設だと現状では12本が基本で,きわどい例だと18本とかに増える。
だんたいこんなもんだろう,全国津々浦々,このご時世における世間様一般的には。
それが36本ってことは,えーっと,そーだなー・・・
その凄さをムリヤリ例えたとしたならば,
1)36歳のおねえさんの誕生日における,バースデーケーキを準備すると仮定して,普通は大きめのローソク3本とかで済ませるのが普通だが,何を思ったかそれを律儀に36本立ててしまい,ケーキ表面がローソクに覆われてしまって「軍艦島」状態になってしまう,とか。
2)インフルエンザの予防接種は,通常大人一回のところ,小学生以下の小児は二回必要とされるんだが,それを多ければ多い程良いと勘違いしたヒトが36回接種してしまった,とか。
3)真央ちゃんが復活を賭けたグランプリシリーズにおいて,こうなったらどーにでもなれっとばかりに,フリーの演技でトリプルアクセルを36回もトライしてしまった,とか。
こんな「飛び抜けた」感じかもしれん。
「悪性像は見られず,過ぎたるは及ばざるが如しです」
報告書にそう書きそうになって,思いとどまった。