『しのゼミ』 -38ページ目

『しのゼミ』

日常で出会った「気付き・笑い・学び」を綴っています

とある研究会有志の一泊旅行があった。

毎年一回,親睦と慰安の目的で,ちょっと離れた行楽地へ繰り出す。

と言っても,自分たちのような地味な集団の場合,「食べる」か「温泉」になる。

今回は,漁師宿で「海の幸三昧」の旅だ。



半島の先っぽにある集落の,そのまた一番ハズレにある宿。

こんな所によくもまぁ家を建てたなぁと思ってしまうような,ハズレもハズレ。

宿の裏は山,庭先には狭い砂浜,そしてその先は果てしない日本海・・・

そんな絶海とでも言いたくなるような環境。

夏は海水浴,その他のシーズンは海の幸を食べさせる旅館として売っているようだ。

ちなみに携帯は圏外になる。

宿としては,トイレは共用・隣の部屋の会話が聞こえるなど,良いものとは言えない。

しかし,料理は絶品だ。



まずは,その日の朝取れたという魚の刺身盛り。

刺身には目がない自分。

ビールがあれば,これだけで満足だ。

次はカニが一人一杯。

カニみそがまだ残る甲羅で熱酒をグイッと飲む。

最高だ。

それからふぐ。

お腹パンパンなのに今更ふぐか・・・

ムリしてでも食べよう。

最後にバカでかいカマ焼き。

もうゼッタイ食えん!



鍋にはカニの足がいくつも手つかずで残してあるが,とうとう全員の箸が止まる。

「カニか?・・・まぁいらんわ」

そんな贅沢な旅。



いよいよ長男いっ君の中学受験の発表を次の日に控えて。

シノ家のピリピリムードは最高潮。

自己採点では得意とする算数が不調で半分くらい。

その余波で国語もボロボロの半分くらい。

理科も半分くらいだが,苦手な社会が唯一まずまず。

「ゼ~ッタイに落ちとるわ。見に行かんでもわかるし,発表はゼッタイ行かへん!」

試験直後から,不合格に備えて伏線を張るいっ君。

メッチャ自信がないらしい。

そんな結果を聞いて,シノ妻もあきらめムード。

みじめな場になるであろう合格発表には行きたくないようだ。

でも誰かが見届けねばならぬ。

っで,結局自分にその仕事がまわってくる。

・・・・・まぁ,しゃあないな。

こういう場にいっ君自身も行けば,良い経験になるんだが・・・・・

そうこうすると,シノ妻も「・・・やっぱ,行こうかな」と言い出す。

そうすると,いっ君も「・・・オレも行ってもええよ」となる。

「じゃあ,あんたら二人で行けばええやん」と言うも何故か却下。

結局は3人で出向くことになる。



さて当日。

電車で○○中学校へ向かう親子3人。

いっ君「はぁ~~やっぱ行きたくないわ」

父「ところでいっ君,受験番号は何番や?」

母「え~~と,1003番」

い「やっぱ駅でオレ待ってるわ」

父「せんさん・・・か。大きな数字やな」

母「もしも,万が一受かってたら,掲示板の一番後ろの方に載ってる思うけど・・・」

い「どこにも載ってへんから見んでもええし」

父「1003・・・仙さん・・・って,星野仙一みたいでエエな」

母「そう言えば,塾の先生に合否を連絡しなきゃね」

い「落ちてたら別に電話せんでもええやん」

父「1003の数字を二つに区切ると,10と03で,とうさん・・・か」

母「ダメでも電話しなあかん決まってるやろ」

い「ねぇ,お父さんに見に行ってもらおうって」

父「通さん・・・って,縁起悪いわ!」

ところどころ噛み合わず,けど流れていく上の空な会話。



15:50 ○○中学校校庭。

合格掲示時間である16時前なのに,すでに掲示がされている様子。

笑いはしゃいだり,泣いて落ち込んだりする,あの悲喜こもごもの状況がすでに繰り広げられている。

あんなに嫌がっていたのに,シノ妻といっ君は走るように合格掲示板に一直線。

自分はというと,この一瞬をデジカメに撮ろうと思うが,鞄をひっくり返すもデジカメがない!

たぶん持ってくるのを忘れたようだ。

「まったく・・・何やってんねん!」

そんなこんなで人ごみの中,二人を見失ってしまいうろうろする。



意を決して,掲示板に近づき見上げる自分。

一番後ろの方。

・・・・
1001
1003
1006
・・・・

掲示板の真下に,渋い顔のいっ君と涙目のシノ妻が立っているのを見つける。

遅れた自分を探しているようだ。

「よかったなぁ,いっ君」

「まぁ受かってるんちゃうかなぁーと思ってたけどね」

「いっ君,塾の先生には受かりましたって自分で連絡しなさいね」

「信じられんな・・・・・なんかの間違いかもしれんし,早よ手続き済ませた方がええんちゃう?」

・・・・・

ホントにやれやれだった。




先輩のT先生から突然の電話。

「シノ君,お久しぶり」

「あっT先生,ご無沙汰してます」

「ちょっと聞くけど・・・・・,誰か技師さんいない?」

「はっ?」



T先生は3年上の先輩で大学院を病理講座で修了した。

なので,自分とは一年間だけだが一緒に釜の飯を食ったことになる。

しかるのちに某臨床科へ移られて,現在は近郊の中規模病院で某科医長を務めている。

今でも細々と連絡し合う関係を続けさせてもらっているが,そんなT先生,とうとう開業されるようだ。

40も半ばにさしかかり,ちょうどいいタイミングとも言える。

その開業するクリニックで検査技師さんを雇いたいが,誰か適当な人はいないかという問い合わせだ。



しかしその条件を聞けば,常勤ではなくパートさん。

できれば若い人がいいけどな・・・

どっちかって言えば女性がいいけれど・・・というT先生。

なんだか聞けば聞くほど条件がエスカレートしていくようだ。

・・・あのね,T先生。

申~~し訳ないけど,すでに分かる。

いろいろ聞いて回らんでも分かる。

ハッキリ言って,そんな都合のええネエちゃんはおらへん。

周りを見れば,「非常勤・パート」の求人は数多。

常勤なら,振り向いてくれるヒトはおるかもしれんけど。

なので,ホープレス!

ゼッタイおらん!

そうは思うけれど,でもいちおう聞かないとT先生に悪いしなぁ・・・・・

ということで,いちおう当たってみる(誰にやねん?)ことを約束する。



「・・・ところでさぁ,もうウチの病院,ダメやわ」

話は,T先生の勤める中規模病院の経営面に移る。

どうやらこの中規模病院の内部は相当おかしいらしい。

まずは7:1看護の影響で,心ある看護婦さんが減ったらしい。

それに続いて,心ある医師もひとり,またひとりと抜けていく。

すると,患者さんもだんだん減ってくる。

そうなると,どんなに喘いで頑張っても経営赤字・・・・・

そんな状態だそうだ。

要は,T先生も嫌気がさしてさっさと逃げ出す口か?

とにかく,地方の医療崩壊のほんの一例を聞いた気がする。



サブプライムなんてこの業界は関係なさそうなのに・・・・・なんか景気悪い話ばかりだ。

一体この「遊び」というか「余裕」の無さは,どこに起因するんだろう?

それともこれって,今の時代の雰囲気なんだろうか?



アミがお腹をさすりながら自分のところにやって来た。

なんでも夕方に病院に行くので早退したいと言う。

「あぁ,ええよ」と何気なく答える自分。

しかし,そんな自分の頭の中は高速回転だ。



デジャヴだ。

このシチュエーションはちょうど半年前とまったく同じ。

「・・・シノ先生,ちょっとご相談があります」

その時もお腹をさすりながらアミは自分のところにやってきた。

今年度は,この病院病理部に常駐する病理医は自分とアミの二人だけ。

自分に課せられたミッションは,一刻も早くアミを病理医として半人前にすること。

そうと信じて,アミにはけっこう厳しく接している。

仕事上の不満でも言いに来たか・・・・・?

そんな風に最初は思ったが,なんと妊娠の報告だった。



それから,アミはツワリ休暇→一人病理医のシノ→メッチャ苦しい→果てはアミの講義まで肩代わり→残念ながらアミ流産,となった。

一人になって苦しかったあの日々がよみがえる。

もしもあの状態を半年も続けていたら,確実に精神的に参っていただろう。

そうなったらどうしようか・・・・・・・

とにかく手を打つのは早い方がいい。

まずはテルさんに電話。

テルさんは医学部卒後二年目で,現在西日本大学病院で初期研修中。

こんどの4月から病理部の医員として働いてくれることになっている。

ならばアミの肩代わりができるか・・・というと,やはり年季がモノを言う。

病理医としてはほとんど素人のテルさんにできることは限られる。

病理診断はまだムリでも,病理の講義なら手伝ってもらえるかもしれん。

講義をすることで,自分の勉強にもなるし。

と言うことで,アミが近くの大学で受け持つ非常勤講師を引き受けてくれるように頼んでみる。

これも責任を伴う仕事で,穴を開けることは出来ぬ。

「はぁ,いいですよ」とテルさんは快諾してくれる。

一丁上がり!



それから,医学部病理講座へ。

アミの妊娠の可能性を伝えて,一層の協力をお願いする。

そもそも大学には自分たち以外にも病理医は居るには居る。

が,大学が担うべき「研究・教育・診療」という膨大な仕事を分担しているので,どこもかしこもギリギリで今にも大出血しそうな状態だ。

なので,そんなにムチャなお願いはできない。

まぁほんのもう少しだけ,お手伝いしますか・・・・・

渋々っといった感じだが,なんとか譲歩を引き出すことに成功する。

もう一丁上がり!



帰宅してから,シノ妻に愚痴。

妊娠と言われればしょうがないが・・・・・

こっちが精神的にヘンになってしまったら,どうしてくれんねん・・・・・

医学部定員なんて今頃増やして遅すぎんねん・・・・・

机上で決める国の施策なんて・・・・・

今度は誰をいじめるんや・・・・・

そうとう荒れて,深酒する。



次の日。

気分は晴れぬが,アミの説明も聞いてやらねばならぬ。

「昨日の病院って・・・妊娠なら早く言えよ」

アミに単刀直入に聞いてやった。

すると,「えっ・・・・・」としばし無言のアミ。

「実はですねぇ・・・」

説明によると,アミのお母さんの手の皸がひどいので,専門病院の知り合いの医師のところへ連れて行ったとのこと。

なぁ~~んや。

とんだ杞憂。

早とちり茶番。

昨日のあの気苦労はなんだったのか。

そもそもやなぁ・・・

話す最中にお腹さするなっちゅーねん!

・・・・・まぎらわしいヮ,ボケッ。



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胃底腺ポリープ(fundic gland polyp; FGP)

良性の過形成(=数が多くなる)変化。

胃の分泌腺である胃底腺が増えることで盛り上がり,胃の粘膜面にポリープを作る。

(特殊な遺伝性疾患などを除けば)癌化することはほとんどないと言われる。



病院によりけりだが,自分たちの病院では胃生検は多い方だ。

胃の内視鏡検査を受けたとする。

胃の中を覗くと,ちょっと盛り上がった変化であるポリープが見つかる。

念のため内視鏡医によって生検がされることになり,その病変の一部がつままれる。

それが病理部に提出されて,顕微鏡で診て下さいとなる。

顕微鏡でみるそのポリープは,胃底腺の部分が妙に増えていたり腺が拡張してたりする。

ガンのようなヘンな形はしていない。

どちらかと言えばわかりやすい変化で,診断にはあまり迷わない。

そんな胃底腺ポリープが,10~20例の胃生検の中で1例ほどある。



気合いを入れて生検を診断中。

とある標本の病変が胃底腺ポリープだったらば。

おっ,FGPやん。

あーよかった,簡単で。

まぁガンにもならへんし・・・・・

そんな風に自分がホッと一息つける病変ではある。

その報告を受け取った内視鏡医も「なぁ~んや・・・FGPか」と一安心。

その結果を伝えられた患者も,「ガンにならんのやったら,よかったわ」と安心する。

すべてのヒトをハッピーにする診断。

ウィンウィンウィン的病変。

この診断がたまたま2例続いたりした時には何気ない幸せを感じる。