今は実験助手をしてくれている若手病理技師Yさんは,就活中且つ受験生の身。
この冬も細胞診検査士試験(2次)に挑んだが,その結果が先ごろ発表された。
顔を強ばらせて神妙に結果報告にやってきたYさん。
その姿を見た途端,なにがどうなったのかはすぐに分かった。
「すいません,結果です・・・・・」
差し出された紙を見てみると「不合格」の文字。
採点結果は,各項目いずれも平均点に至らず。
また一からやり直しということだ。
近隣の病院からの誘いもそのままに,並々ならぬ決意でこの試験に挑んできたYさん。
今年はこれだけに賭けてきたといってもいい。
ちなみに一緒に頑張ってきたG君は辛くも合格。
明暗を分ける形になった。
さて,これから彼女はどうするつもりか?
少し前に話した感じだと,実験助手がおもしろいしやってみたいと言ってたっけか。
その後は,試験が間近に控えていることもあって,その件には触れないでいたが。
実験したきゃそれでもええが・・・・・マジかいな。
「ところで・・・これからどうするつもり?」
「できれば,ここの病理部に残って頑張っていけたらと思ってましたが・・・」
「何度も言ったけど,ここの常勤ポストの空きはここ数年はないぞ」
「わかっています」
「それなら,実験助手のポストしかないけど,それでホントにええんか?」
「ハイ,やってみてもいいかな~って」
自分の研究を手伝ってくれれば,そりゃあ自分は助かる。
なんと言っても,イヤなことも彼女なら言える関係にある。
それに彼女も,上司(=自分)のエエ加減な性格がそれほど苦にはならないようだ。
けれども,研究にどっぷり浸かったら,それはそれでちょっと不安ではある。
来る日も来る日も免染しながらPCRを回し続けなければならぬ。
今おぼえている細胞の形など,直に忘れてしまうだろう。
しかも,日雇い身分の安月給。
研究費が底をつけば,職を失うことにもなりかねぬ。
やっぱや~めたといって病理技師に戻ろうとしても,研究三昧の後ではまともな気質には戻れないかもしれん。
彼女にそれだけの覚悟があるのだろうか?
「研究助手なんてしんどいし,不安定やし,大変やぞ」
「はぁ~」
「そんなに楽しいもんでもないしな」
「そうですね」
「そんでもやりたいわけ?」
「ええ,まあ」
・・・・・
よくよく問い詰めると,彼女なりの考えがあるようだ。
それは・・・
→とりあえず研究助手として頑張る
→そのうちに病理常勤ポストの誰かが辞める
→あるいは常勤ポストが新設される
→次に雇われるヒトはYさんでええんちゃう?という自然な話の展開になる
→晴れて病理技師の常勤ポストに恵まれる(かもしれない)
この「タラレバ」ばかりの楽観思考,個人的には大好きだ。
けれども現実問題として,思った通りにいく可能性がほとんど無いに等しい。
ならば,最善の道に誘ってあげるのも自分の仕事か?
「Yさんは,最終的には病理技師になりたいワケやろ?」
「そうです」
「なら,なんで研究助手なんて選ぶわけ?」
「それは・・・・・」
「研究は片手間にはできんし,病理も片手間にはできんし」
「はぁ」
「どっちかしか,選べんよ」
・・・・・
っということで,二転三転したYさんの進路問題。
結局,彼女は近隣の病院に病理技師としてお世話になることに決めた。
まぁ,これでよかったんやろーね・・・