奇形腫の過去・現在・未来 | 『しのゼミ』

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日常で出会った「気付き・笑い・学び」を綴っています

「奇形腫 teratoma」

卵巣などによく発生する腫瘍病変で,皮膚をはじめとする体中のいろいろな成熟した組織が混在する。



奇形腫と言えば,昔は「ピノコ」。

漫画ブラックジャックで,「奇形腫」の組織を継ぎ接ぎしてできた女の子。

実際に「ピノコ」はできるのかと問われれば,現状では出来はしないのは明らか。

しかし奇形腫を顕微鏡で覗くと,体中のいろんな組織を見つけることができる。

骨・軟骨・皮膚・甲状腺・気管支上皮・腸管上皮・毛髪・・・・・

時には立派な歯ができる時もある。

教科書には奇形腫内の歯が虫歯になっていることもあると書いてあったが,残念ながら「虫歯」には出会ったことがない。



奇形腫と言えば,今は「iPS細胞」。

今や時のヒトになった京都大学・山中先生グループの作った細胞。

いろんな組織に分化(=成熟)する可能性を秘めた「夢の細胞」。

このノーベル賞級の細胞から,いろんな組織(例えば皮膚とか心臓とか肝臓とか)を再生させて,医療に応用しよう・・・ということで注目される。

しかし,実際にはこの細胞を例えばマウスの体に植え付けても,いろんな組織がごちゃまぜになった「奇形腫」が出来てしまう。

この細胞をどのようにコントロールすれば,目的の細胞の集まり=組織が得られるのかがまだ分かっていない。

要は,原材料は用意出来たんかもしれんが,どのように料理すれば良い料理(=組織)ができるのかはまだ研究段階といったところ。



そんな「奇形腫」の未来はどうなるんだろう・・・・・

20XX年の地球。

再生医療が日常的に行われている。

iPS細胞から再生してできた肝臓や腎臓や心臓や膵臓や皮膚を移植して,難治と言われていたいろんな疾患が治療される世の中。

この夢のような治療法が現実となり,同時に「女性の腋の皮膚移植」や「中年男性の頭皮移植」といった手軽な移植美容も大流行り。

が,こんな最新且つ最先端の治療法といえども,すべてに於いて完璧とは限らない。

実は再生組織の移植に伴って,「奇形腫」発生という副作用が問題になってくる。

たとえば再生肝組織を移植すると,移植後しばらくすると移植組織の中に奇形腫が少ない確率で発生してくる。

それを放っておくと,肝臓の用を成さなくなるほどに奇形腫が大きくなってしまう。

それならば,新品の再生肝臓をもう一回移植すればいいのにと思うかもしれない。

しかしそうはうまくはいかないのがこの世の常。

メカニズムはわからないが,二回目の移植をしたとすると,その移植組織に奇形腫のできる確率が桁違いに上がってしまう。

三回目の移植では,ほぼ必発で奇形腫の餌食になる。

さらに,すでに移植を受けているヒトが新たに別の移植を受けた際にも,奇形腫の発生が有意に高くなることがわかる。

科学者たちは,いかに「奇形腫」の発生を食い止めるかの研究に没頭するが,なかなか解決策は見つからない。

・・・・・このように,「奇形腫」が忌み嫌われる時代がくるかもしれん。



(蛇足ながら,上記の「未来編」は完全なるフィクションであり,再生医療の発展を妨害せんとするようなことを意図していないというか何も考えていない)