西日本大学病院では,来年度の病院長を決める選挙の真っただ中である.
病院長は3年が任期で,通常は2期まで(3選禁止)なようだ.
大学病院の教職員による選挙にていちおう民主的に選ばれる.
選挙権としては,病院内全員という訳ではなく200名強の限られたヒト(たとえば教員でいうと助教(助手)以上)に与えられている(が詳しくは知らない).
今回の選挙戦は,現病院長(某マイナー科教授)の続投か否かが争点であり,対抗馬としてはいつも科長会議などで温和でスルドイ質問を浴びせる某内科教授先生である.
・・・・・などと知ったような事を書いてしまったが,実はこの選挙で何が争点なのか,それぞれの候補はどういう信条とマニフェストを持っているのか・・・なんて情報は知る由もない.
立会演説会や所信表明などもない.
実際にはいつの間にやら「今度選挙やりますよ」という案内がくるのみで,自分の場合はその日の気分のままに(適当に?)投票する・・・というのが実情である.
一般的には,出身医局の教授先生の人間関係や医局にとってのメリットなどが大きな選択理由になるんだろう.
選挙運動といってもかわいいもので,たとえば有力な候補教授の医局員(同級生)から,「○○教授をなんとかよろしく」などという電話がかかってきたり,出身医局のボス先生から「△△教授に入れたってえな」と言われる程度である.
それもやりすぎると反発を買うようで,あまりおおっぴらに選挙運動はやられないのが最近の趨勢である.
残念ながら,現ナマが飛び交う・・・なんて華々しさはない.
思い出せば少し昔のこと.
まだ病理講座に在籍していた頃,やはり病院長か何かの選挙があった.
当時のボス教授は,大学内の~~長選挙となると,まるで少し前の小沢一郎のように「キングメーカー」として動いていた.
たとえば「○○教授にぜひ院長になってもらって・・・・・・」などと,いろんな先生に電話をかけたり,自室に呼んで説き伏せたり・・・・・.
もう,研究や教育はそっちのけである.
そんなある時,ボス先生より細胞培養の実験で使う「セル・カウンター」をちょっとを貸してくれと頼まれた.
「セル・カウンター」とは,実験にてたくさんの培養細胞を数える時に使う.
ピンポン玉サイズで,手のひらに握り,親指でカチッカチッと押していくと,数字が一つずつ増えていくっという器具である.
紅白歌合戦で「野鳥の会」のひと達が赤白の旗やパネルを数える時に使ってたモノ・・・と言えばわかりやすいか.
それをなにゆえ貸さねばならないのか???(選挙にうつつを抜かして研究なんかしてネーじゃん).
こちとら今実験中で使っとるんじゃ.
しかし教授先生のもの言いである.逆らうわけにはいかぬ.
「どっ・・・どうぞ・・・」
すなおに渡したけれども,もうちょっとしたらまた細胞を数えなきゃならぬ.
「早めに返してくれ~」と言いたものの,教授先生にはなかなか言えぬ.
・・・・・・・・遅い・・・・・・・・まだか・・・・・・・・
・・・・・・・・遅すぎる・・・・・・・・もう待てん・・・・・・・・・
・・・・・・・・細胞が死んでしまうやん!
どう考えても自分に使う優先権があるように思える.
こうなったら,直接教授室に乗り込んで取り返してこようっと.
「(コンコン)・・・失礼します」
「んっ?シノ君,なんか用?」
教授室に入っていくと,ボス先生はなにやら書類を見ながら,セルカウンターでカチッカチッとやっている.
な~んだ,まだ使ってたか.
「いえ,ちょっと様子を見に伺ったまでで・・・・・・」と答えながら,見ちゃならぬものを見てしまった.
ボス先生の前に置かれた書類に「~~名簿」と記されてあるのを.
・・・・・?
あの書類って,ひょっとして今度の病院長選挙の選挙人名簿?
そんな書類を前にカチッカチッてことは?
名簿の該当者を数えてる?
ってことは・・・・・選挙の・・・・・・
票読み?
こらぁ,なんに使っとんじゃあ(←もちろん心の叫び)
かわいそうなセルカウンター!.
おまえはがん研究のため培養細胞の数を数えるという崇高な使命を持って生まれてきたんじゃろうに・・・・・
貸すんじゃなかった~orz.
そんなボス先生が,今や「まぁ誰が病院長になってもなぁ・・・ワシはもうすぐやめるしなぁ・・・」などと冷めた発言をするのを聞いてると,少し前のあの頃が懐かしく思い出される.