止まらないペップトーク | 『しのゼミ』

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日常で出会った「気付き・笑い・学び」を綴っています

自分の職場は大学病院の「病理」である.

「病理」って言っても「何それ?」と言われるのがオチで,一般には馴染みがあまりない.

まぁ簡単に言えば,病院の中の検査を受け持つ部門の一つとでも言っておけばいいか.

難しく言うなら,患者さんの病変から取ってきた細胞を顕微鏡でのぞいて病変の診断を行う部門,とでもなる.

患者さんには直接お目にかかることはないけれど,病気の診断を行っているとても重要な部門だ.



たとえば初対面のヒトに自己紹介する時は,

「・・・内科ですか,外科ですか?」とまず聞かれるので,

「病理っていうところにいます」と答えると,

「ふーん,病理って?」と続くので,

「病理とは,病院の中で診断を受け持つ部門であり,病変から採取されてきた細胞を染色ののち顕微鏡でのぞいて,形の異常からガンかどうかを・・・・」ってな感じの説明となる.

結局,自分が何者であるかを理解してもらうのに5分程度を要するが,まぁ仕方がないし慣れてしまった.

ちなみに自分が医学部を卒業する時はさらに大変だった.

特に親戚一同が会するような盆・正月の集まりは「最悪!」.

「何科をやるの?」と聞いてくるおじさんおばさんに,「病理」の説明と志望動機をえんえんと説明し続けなければならず,「もうカンベンしてや~」という気分に陥った.



さて,病院の「病理部門」には,診断を行う「病理医」と,その診断の補助的業務を行う「検査技師」がいて,共同して働いている.

病理医の仕事と言えば,「この細胞はガンである」とか「ガンが疑わしいが再検が必要である」とかえらそうなことを言えばよく,責任は重いがある意味「単純」である.

しかし,それを支える技師さんの仕事は多岐にわたる.

たとえば・・・・・・

・採取された組織を蝋漬けにする
・蝋漬けの組織をパラフィンブロックに加工する
・パラフィンブロックを薄く切る
・薄く切った組織を染色する
・特殊な染色をして細胞を染め分ける
・細胞を見てガンかそうじゃないかをスクリーニングする
・病理解剖の補助をする

などなど.

この中で「細胞をみてスクリーニングする」というのがちょっと面倒で,細胞を見る「目」と「知識」を要するので,「細胞診スクリーナー試験」をパスして「細胞診検査士」の免許をもらう仕組みになっている.

もっとも検査技師さんの仕事にもいろいろあって,このように細胞を顕微鏡でのぞいたり細胞をカラフルに染色するようなチマチマしたものばかりでなく,患者さん相手に心電図・脳波・エコーなどで検査したり,血液を測定器にかけたり,細菌や輸血を扱ったりで・・・・,とにかくべらぼうな種類がある.

そんな中で.細胞を見たり染色したりしてくれる「病理」の技師さんは,どちらかと言えば少数派だ.

苦労をして勉強しなおして「細胞診検査士」の試験を受けて,さらに細胞を見る目を日夜養っていくのは,「言うは易く行うは難し」である.



長ーい前置きはさておき,今日の外勤先でのこと.

いつも外勤でお邪魔している,近くの市中病院の病理検査室では,女性検査技師(推定30歳)さんがほとんど一人で仕事を切り盛りしている.

明るい性格とてきぱきとしてこだわった仕事っぷりで,なかなかの「やり手」である.

そのうえ病理の仕事が「大好き!」ときている.

「好きこそものの上手なれ」で,こんな「病理の技師さん」は探しても多くはいない.

しかしそんな技師さんが悩んでいた.

いわく,「あたしは細胞診の免許がないので,病理の仕事から外されそう.齢30になり試験を受けるには遅すぎる・・・・・どうしよう・・・・・」とのこと.


こんな話をきいてしまったら,「しの魂」が着火である.

・・・勉学は年齢を問わず
情熱に縛りはない
古より賢者は挑戦しており
いずくんぞ夢追いをあきらめんや・・・

まるで李白を彷彿とさせる「五言絶句バリ」の「ペップトーク」をかましてしまう.



それにしても年を重ねて中間管理職的な身分になると,若手への話し方が自然に「説教口調」になってしまう.

本人は「ペップトーク」なんていい気になっているかもしれないが,「気をつけた方がいいよ」っとは妻の弁.


言われた側はどう感じただろう?.「なるほど・・・じゃあやってみよう・・・・・」と思わせるような「語り」になっていたのかなぁ?.

「またか・・・」なんて思われてたら,結構へこむなぁ.

まぁ「本音」は聞いても答えてくれないだろうから,これから細胞診免許の試験を受けるのかどうかで判断させてもらおうっと.