「子どもに親として、何かしなきゃ」
っていう気持ちがあったとします。
その気持ちの裏返しは、
「子どもに親として、何かしてあげないと、自分が役に立てていない気がする」
「子どもに親として、何かしなきゃ、(子ども以外の誰かから)自分を認めてもらえない気がする」
みたいなものだったりします。
つまり、自分を満たすために、子どもを利用しよう、って思っているわけ。
でね、僕はそれもいいんじゃないかな、って思うんです。
自分を満たすために子どもを利用しても。
大切なことは、満たされていない自分に気付いていること。
です。
だってね、自分が子どもだった時のこと、ちょっと想像してほしいんです。
もしね、突然、お母さんがさ、
「実はね、子どもの頃、お母さんに愛されていない、って思ってたの」
って言われたら、子どもとして、どんな気持ちになりますか?
「はぁ!?知らんし!そんなことはいいから、私を愛してよ!」
って思いますか?
みんながみんなそう思うかは分からないけれど、きっと、
「じゃあ、私が愛してあげよう!!」
「そっかぁ、辛かったね、よしよし」
ってなりませんか。
何が言いたいか、っていうと、
「子どもも、親の役に立ちたい」
って思っているし、
「子どもも、親を愛したい」
って思っている、っていうこと。
子どもは愛されるだけの存在じゃないんす。
子どもは愛されることもできるし、愛することもできる存在なんす。
だからさ、親自身が、
「親に愛されてこなかった・・・」
「親に認められてこなかった・・・」
っていう時、背伸びをせずに、その弱さを子どもに見せられることが大切だな、って思うんです。
子どもは、理論武装した人には、寄り付かなかったり、逆に攻撃をしかけてきたりします。
それは、
「あなたの本心、見せてよ!」
みたいなもんなわけで。
子どもは、弱った人をさらに攻撃したりはしません。
むしろ、子どもは子どもなりに、寄り添おうとしてくれます。
だから、子どもと関わる時に、無理にがんばったり、自分の本心を隠したりする必要はないんです。
本心をさらけ出すのは、勇気がいることですけどね。
でもね。
親が本心をさらけだして、愛されている実感が無かったこと、認められてこなかったこと、寂しかったことを子どもに話したとします。
そしたら、子どもは、親を愛そうとしてくれます。
当たり前な話ですけど、何かの意図をもって、それこそ子どもを何か意図的に操作しようとしちゃダメですよ。
そうじゃなくって、ただただ本心を話すだけ。
子どもが親を愛することをすると、子どもは人を愛せるようになります。
そりゃそうですよね。
親を愛することと、人を愛することは、寸分違わず、同じです。
子どもが親の役に立とうとしてくれることで、子どもは人の役に立つことを覚えます。
そして、子どもは「自分は無力じゃないんだ」って思えるようになり、「自分には存在する意義がある」って思えるようになります。
子どもと関わる時に、親に必要なことは、強さじゃないんです。
背伸びしたり、がんばったりする必要はないから、その背伸びをやめることです。
できることは、できると言えばいいし、できないことは、できないと言っていい。
自分の本心のまま、自然体で生きることが、子育てする時に、親に求められることだろう、と僕は思います。
なぜか?
子どもは、親の姿を見て学ぶから、です。
子どもは、親が育てるもんじゃないんです。
子どもは、親を見て、親に愛されて、勝手に育っていくもんなんです。
だってさ、例えば、子どもにご飯を食べさせて、
「お、満腹度が15ポイント上がったな!あと、35ポイント分、食べさせたら、身長が10センチ伸びる」
とか無いじゃない(笑)
子どもにご飯を食べさせるのは、もちろん、飢えさせないため、っていうのもあるけど、それ以上に、
「あなたのことが大切ですよ」
っていうことを伝えるため。
だから、言いかえれば、普段から
「あなたのことが大切ですよ」
って伝えていて、子どもも、
「大切にされてるなー」
って思えていたら、わざわざ親がご飯を作る必要なんて無くなります。
それこそ、スーパーで買ってきたお惣菜や、マクドで買ってきたハンバーガーを食べさせてみたら、
「うわぁ!これすごく美味しい!」
って喜んだりするんです。
子どもは、親に育てられるんじゃなくて、親の愛情を受けて、勝手に育っていくもの。
だから、子どもに特別何かしてあげる必要があるものって、実はそれほど多くはありません。
ご飯を食べさせることも、
歯を磨かさせることも、
勉強をさせることも、
寝かしつけることも、
朝起こすことも、
しなくてもいいんです。
それよりも、親としてしなくてはならないことは、本心で、自然体で生きること。
良い親じゃなくてもいいし、カッコいい親じゃなくてもいいし、ダメな親でもいいんです。
ただ大切なのは、自然体で生きているかどうか、です。
自分がダメ親なら、子どもは勝手に
「なるほど、これをこうしたらダメなことが起こるんだな」
って勝手に学んで、しっかりものに育ちます(笑)
親が
「子どもを育てなきゃ」
って思えば思うほど、子どもは変な方向に育っていくし、その軌道修正にとっかかりになって、子育てはびっくりするくらいしんどいものになります。
でも、親ががんばることをやめたら、子どもとの関係は劇的に良くなると思います。
そして、ここからがめっちゃ大切な話。
親が自然体で、本音で生きるようになって、いいとこも、ダメなとこもさらけだすようになった。
そして、子どもとの関係も良くなった。
そこから、ようやく『教育』が始まります。
教育っていうのは、教え、育てることですよね。
何を教えて、どんな人間に育てるのか、っていうと、アドラー的に言えば『自立』なんですけど、もうちょい分かりやすく言えば、
「自由な心を持った人間」に育てて、
「自由には責任が伴うこと」を教える。
自分の人生は、自分の手で、いかようにも選択できるんだよ、っていうこと。
その選択は、いいことも、悪いことも、全て自分に返ってくるんだよ、っていうこと。
これはアドラーの言う『自立』と一致します。
自立できていれば、自由と責任を持って社会に出た時に、経験したことから自発的に学んでいくことができます。
しかし、依存したまんまだと、自由はあるけど、責任が無かったり、責任ばっかりで自由が無かったりして、子どもが経験から自発的に学ぶ力が弱くなります。
子どもにとって、親はとても大切な存在です。
親が本音を隠して、自分のやりたいことも制限したまま生きていると、子どもの方も、親との繋がりの薄さを感じます。
子どもは、親ともっと繋がりたい、って思います。
親のことをもっと知りたい、って思います。
この時、子どもの意識は、親に向いています。
社会には向いていません。
子どもが親と繋がれたな、って感じたら、自然と子どもの意識は社会へと向きます。
子どもが親と繋がれたな、っていうのは、親から愛されてるんだな、って実感した時、とでも言いましょうか。
「もう自分は、十分に愛された」
って思った時に、子どもの意識は親から社会へと向けられます。
その時に、ようやく『教育』が始まるわけです。
教育と言っても、一緒に体験して、その体験から一緒に学ぶ、ということをするだけ。
もしくは、子どもが自分で体験して、その体験から自分で学ぶ、ということです。
何か学問を教えるのは、親もできるに越したことはないけれど、基本的には学校や塾の先生に任せておけばOKで。
「自由には責任が伴う」
っていうのは、言い換えれば、
「こういうことしたら、こうなるんだな」
「やったことは自分で何とかしなきゃいけないんだな」
っていうことを学ぶことです。
で、そういう状況にするためには、親が子どもを愛する必要があります。
でも、親が十分に愛情を受け取ってきていない場合は、子どもを愛することが難しい時があります。
そういう時は、親が本心をさらけだして、子どもに愛してもらえばいいんじゃないかな、って思います。
「愛される」っていうので大切なのは、「誰から」ではなくて、自分の中に「愛されてる」っていう実感です。
だから、親から愛されるのでも、子どもから愛されるのでも、
「私って、愛されてるなぁ~」
「俺って、幸せ~」
って感じられていれば、それでいい。
親から愛されることにこだわる必要はありません。
もうちょっと補足しておきます。
親から愛されないとダメなのであれば、生まれる前に親が亡くなっていた子は、愛されることがない、ってことになります。
親から愛されないとダメなのであれば、親から愛されてこなかった人は、もれなく不幸になります。
でも、現実、見てみたら、そんなことはない。
親から愛されていなくても、先生から大切にされて立派に育った人もいるし、近所のおっちゃんに愛された人もいれば、親友が心の支えだった人もいるでしょう。
「親から」が大切なのではなくて、「愛されてるんだな」っていう実感を得ることの方が大切なんです。
だから、「親から愛されてこなかったから、子どもを愛せない」じゃなくって、「親から愛されてこなかったから、子どもから愛してもらおう」っていうのでいいんじゃないかな、って思うんです。
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