正直者は救われ…。映画「新感染ファイナル・エクスプレス」

▼今週発売の新作ダイジェスト

08月29日発売■Book：「PS4版ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて公式ガイドブック」
08月29日発売■Book：「3DS版ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて公式ガイドブック」
08月31日発売■PS4：「New みんなのGOLF 早期購入特典付き」
08月31日発売■3DS：「世界樹と不思議のダンジョン2 2枚組CD付き」
08月31日発売■3DS：「世界樹と不思議のダンジョン2 10th Anniversary BOX」
08月31日発売■3DS：「探偵神宮寺三郎 GHOST OF THE DUSK
FCアレンジ版「探偵神宮寺三郎横浜港連続殺人事件」のDLC付き」
08月31日発売■NSw：「蒼き雷霆ガンヴォルトストライカーパック限定版」
08月31日発売■NSw：「蒼き雷霆ガンヴォルトストライカーパック通常版」

▼2017年9月1週公開の新作

09月01日公開■Ticket：「新感染ファイナル・エクスプレス」
09月01日公開■Ticket：「ザ・ウォール」
09月01日公開■Ticket：「スキップ・トレース」
09月01日公開■Ticket：「二度めの夏、二度と会えない君」
09月01日公開■Ticket：「トリガール！」

★Amazon 映画前売券ストア
★Amazon ムビチケストア

＊Amazon取り扱いのムビチケは全てEメールタイプ。
　現物のチケットが郵送されるのではなく
　発券に必要なシリアルナンバーがEメールに送られてくるのでお間違えのないように。

▼正直者は救われ…。映画「新感染ファイナル・エクスプレス」

発売中■Blu-ray：「ゾンビランド」
発売中■Blu-ray：「ウォーム・ボディーズ」
発売中■Blu-ray：「ワールド・ウォーZ」

ジェシー・アイゼンバーグやエマ・ストーンなど、
今では考えられない豪華キャストで作られた「ゾンビランド（2009年）」、
ニコラス・ホルト主演の恋愛xゾンビ映画「ウォーム・ボディーズ」（2013年）、
ブラピ主演によるゾンビパニック大作「ワールド・ウォーZ」（2013年）と、
定期的に新機軸・話題作が登場するゾンビ映画の系譜に
韓国が新たな傑作を送り込んできた。

9月1日から公開される「新感染ファイナル・エクスプレス」は
韓国を代表する高速鉄道KTXの車内で巻き起こるゾンビ映画。
ソウルからプサンへと向けて走る車内で突如感染者が暴れ始め、
先頭車両から最後列まで、”走る密室”が大パニックに陥る様を描く。
主演は「トガニ幼き瞳の告発」でも話題を集めたコン・ユ。
共演はキム・スアン、チョン・ユミ、マ・ドンソク。
監督はアニメーション監督として知られるヨン・サンホで、
実写映画は本作が初となる。

日本の誇るホラー監督・清水崇も飛行機の機内で起こる
パニックを描いた「7500」を撮ったのだが、これがまた実に無惨な出来で
かつて「呪怨」に熱中した私としては哀しくてたまらなかった。
ゾンビ映画で言えば、昨年公開の「アイアムアヒーロー」が善戦したものの、
中盤以降の失速やストーリー部分の浅さなど不満点もあり、
当BLOGでも本作が「日本のゾンビ映画のスタート地点」と紹介した。

【紹介記事】日本のゾンビ映画のスタート地点。映画「アイアムアヒーロー」

発売中■Blu-ray：「28日後…」

今回紹介する「新感染」は、手塚治虫の「海底超特急マリン・エクスプレス」や
デンゼル・ワシントン＆クリス・パインの「アンストッパブル」といった
ノンストップで暴走する車内でのパニックものと、
「28日後」（2002年ダニー・ボイル監督）や
「ドーン・オブ・ザ・デッド」（2004年ザック・スナイダー監督）あたりの
ロメロの血を受け継いだ第二世代ゾンビ映画をミックスした野心作。
第二世代ゾンビ映画の特徴である「全力疾走するゾンビ」が、
KTXの狭い車内で暴れるのだから怖くないはずがない。
逃げたり隠れたりしようと思えば選択肢は多い過去のゾンビ映画と異なり
こちらはせいぜいトイレぐらいしかなく、
それすら大勢で来られれば押し切られる程度の一時しのぎにしかならない。
感染が拡大し、さっきまで一緒に怖がっていたはずの同級生や家族が
一瞬で自分に襲いかかって来る。そうなれば、もう殺すしかない。
武器を振り下ろす際の僅かなためらいすら惜しいほどの緊迫感の中で、
118分があっという間に駆け抜けてゆく。

●ヨン・サンホ監督「全ゾンビ映画の作り手はロメロ監督に借りがある」
●「新感染」の鬼才ヨン・サンホ監督、夢は日本マンガのアニメ化!?

監督のヨン・サンホは本作が実写映画の初監督作品で、
これまではアニメーションを作っていたそうである。
私は不勉強で知らなかったのだが、
監督は日本のコミックやアニメの熱烈なファンで、
中でも強く影響を受けたのが故・今敏監督の「パプリカ」や「千年女優」、
いつか実現させたい夢は古谷実原作のアニメ化を手掛けることなのだとか。
しかも題材が「シガテラ」というのだから、なかなかの筋金入りだ。

アニメーション出身でありながら人物にはCGを多用せず、
ゾンビの動きひとりひとりに振り付け師を付けて指導させたとのこと。
その甲斐もあり、後ろの方で暴れているゾンビまでちゃんと動きがバラバラで
命を失ったはずのゾンビ達に溢れんばかりの生命力を感じる。
韓国映画界きっての知性派として知られるコン・ユが脚本を読んで
即OKを出しただけあり、ゾンビの生態やグロ表現に重きを置くのではなく
ゾンビに追い立てられた人間達のドラマこそが軸になっているのもいい。

「正義」や「正直者」「善人」が最後には勝つという
パニック映画やホラー映画の常道が通用せず、
自分が生き残るためなら手段を選ばない、
執着心の強い者が善人を蹴落として生き残る様を堂々と描けるのは
韓国映画ならではの強みと言えるだろう。
ここまで思いきったヒール役は、日本ではなかなか出て来るまい。

細かな設定では文句を付けたい箇所はけっこうある。

・ゾンビに知性があるのかないのかはっきりしない
・2分しかないのに荷台を這って進んで間に合うはずがない
・音に敏感に反応すると言いながらなんだあのラストシーンは

などなど、特にゾンビの生態についてはもう少しきちんと設定を固めて
違和感を取り除いて欲しかった。
演出の力強さと役者達の芝居で些細な粗は見え辛くなってはいるが
そこに引っ掛かってしまう人も大勢いると思う。

韓国映画x悪魔の「哭声／コクソン」に続き
韓国xゾンビでもこんな傑作が出て来てしまうとは
2017年は本当に韓国映画がアタリ年。
「お嬢さん」「アシュラ」「コクソン」「新感染」が
全部今年公開なのだから恐れ入る。

韓国映画だからと敬遠しては大損。
ゾンビ映画好きならば是非とも劇場へ。

映画「新感染ファイナル・エクスプレス」は9月1日公開。

「新感染」の前日憚となるエピソードを、
ヨン監督のメインフィールドであるアニメで描いた
「ソウル・ステーション　パンデミック」も9月30日公開。
どうせなら2本立てにして欲しかったが、さすがに時間的に厳しいか。
「新感染」では冒頭に少しだけ触れられるパンデミックのきっかけや、
車内からでは電話でしか窺い知ることの出来なかった街の様子が描かれているとか。
うーむ、これも観たい。