リアリティを破壊する演出が難。映画「少女」、角川の大規模セールはいよいよ本日まで | 忍之閻魔帳

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少女 映画 本田翼 山本美月


▼リアリティを破壊する演出が難。映画「少女」


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配信中■Kindle/COMIC:「少女 新装版」

デビュー作の「告白」を皮切りに、「贖罪」「夜行観覧車」
「白ゆき姫殺人事件」「Nのために」と次々に映画・ドラマ化されている
人気作家・湊かなえの原作を「アオハライド」の本田翼と
「貞子 vs 伽椰子」の山本美月のW主演で映画化した。

厳格な女学校に通う二人の女子高生・桜井由紀(本田翼)と
草野敦子(山本美月)が、学校でのいじめや家庭内の息苦しさに耐えながら
手を取り合って生き抜こうとする青春ミステリー
監督は「ぶどうのなみだ」「繕い裁つ人」の三島有紀子。


10月08日公開・「少女」

「○○生」の肩書きがなくなるまで、
私達の世界はそれほど爆発的には広がらない。
家庭が息苦しくとも、学校が針のむしろであっても
余程の事が無い限り、与えられた空間で何とか凌いでいくしかない。
「告白」しかり「Nのために」しかり、
湊かなえの書く小説には、時に反発し、時に傷つきながら
懸命に生きようとする少年少女が多く登場する。
本作「少女」に登場する桜井由紀(本田翼)と草野敦子(山本美月)も
吹き寄せる様々な悪意や暴力にじっと耐えながら
窮屈な青春時代を過ごしている。

虐げられた者が手を取り合う構図は湊かなえの定番ではあるのだが
本作の場合、これまでの湊原作およびその映像化作品が持っていた
リアリティがごっこりと欠落している。
湊作品では、悶々とした生活を送るしかない現実世界の若者達にとって
一種のガス抜きになるような出来事や事件が発生するが
劇中を生きる人物達はフィクションでありながら
どこかしらに「あぁ、自分もこうだった」と思わせる要素を持っていたのだ。

ところが、本作の本田翼にはそれを微塵も感じない。
作り過ぎた表情、過剰に色づけした台詞回し、
全てが嘘臭く、桜井由紀の祖母や教師に対する憎しみ、
心の拠り所とする小説への想いが全て空回りしてしまっている。
芝居仕立てのオープニングだったので、「ライチ光クラブ」のように
舞台調の演出で行くのかと思えばそうでもなく、
かといって観客が現在(過去)の自分を重ね合わせながら
感情移入するほどの生活感もない。
はっきり言ってしまえば本田翼が大根なことが要因のひとつとしてあるわけだが、
女優をどう魅せるかは監督の腕次第でもあるわけで、
三島有紀子の演出力が、これまでの作品で感じてきた
「見た目だけ美しい、中身のスカスカな映画」から
未だ抜け出せていないことに起因していると言わざるを得ない。
確かに美しいカットはたくさんあった。
しかし、湊かなえが本作で伝えたいのはそこではないだろう。

本田翼の名誉のために書いておくと、彼女は使い方次第なのだと思う。
本作にもキラリと光る瞬間は何箇所かあったので
そこを上手く引き出せる監督についてみっちり鍛えてもらうといい。
女優としての基礎力がないまま大役を与え続けられるのは不幸でしかない。
反対に山本美月は脇役経験が多いせいか着実に育ってきているのを感じる。

ストーリーでも腑に落ちない点が多々ある。
一番納得のいかなかったところだけネタバレして書くと、

話し方や振る舞いにまで厳しく、正門前には警備員まで配置する学校のはずが
いとも簡単に深夜に忍び込むことが出来、さらに職員室に鍵はかかっておらず、
担任教師も仕事で使うノートPCを机にすら仕舞わず出しっ放しで
パスワードすらかけていない。
それをWi-Fiが届きそうもない屋上にもっていき、
風に吹かれながら秘密のファイルをあっさり特定。
なんだこれは、適当にも程がある。

他にも、唐突にやってきた転校生が挨拶した次のシーンでは
もう二人を名前で呼び捨てにしていて、引っ掻き回すだけ引っ掻き回して
終盤まで登場しないなど、全体的にエピソードの抜粋の仕方が雑。
雑な上に見映えの良い絵(シーン)を重視するから
さらにトンデモ要素が強くなる悪循環に陥っている。
脚本は誰なんだと思ったら、ここにも三島監督が絡んでいた。

三島監督と本田翼の破壊力で
出来損ないの角川映画(全盛期)のようになってしまったが
ストーリーの大筋はさすが湊かなえという作り。
主演の二人にスポットを当てているようで、
劇中に登場する人物達が複雑に絡み合い、思わぬところで繋がっていたりもする。
原作の持つ展開の上手さや裏切りの鮮やかさを
映像化する段階で削ぎ落としてしまったのが残念でならない。
監督と主演女優が違えば「白ゆき姫殺人事件」や「Nのために」にも
引けを取らない作品になっただろうに。
「模倣犯」や「エヴェレスト 神々の山嶺」を例に出すまでもなく
原作がどれだけ素晴らしくても映像化が上手くいくとは限らない。
どの監督に手渡すかが重要なのだと改めて感じる惜しい作品だ。

映画「少女」は明日10月8日より公開。



主題歌を担当しているのは今年7月に発売された
2ndアルバム「Next One」がオリコン9位にランクインし
今が伸び盛りのGLIM SPANKY「闇に目を凝らせば」。
「Next One」にも収録されている同曲は
表向きは静かな女子高生達の裏の顔を映しているようでかなりマッチしていた。
いしわたり淳治や亀田誠治が関わっているだけあり
Superfly、チャットモンチー、9mm Parabellum Bullet、
EGO-WRAPPIN、椎名林檎らの香りをほんのりと感じるものの、
今後の活躍も期待できるユニットだ。



▼今週発売の新作ダイジェスト


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