ハッカーの設定、いる?映画「ブラックハット」 | 忍之閻魔帳

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ブラックハット 映画 クリス・ヘムズワース



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▼ハッカーの設定、いる?映画「ブラックハット」

「コラテラル」「パブリック・エネミーズ」など
男のドラマを得意としたマイケル・マン5年振りの新作が明日5月8日より公開。
突然のサイバーテロにより原発や株式市場に甚大な被害が出たことを受け、
捜査チームは服役中の天才ハッカーに白羽の矢を立てる。
主演は「マイティ・ソー」「RUSH プライドと友情」のクリス・ヘムズワース。
共演はタン・ウェイ&ワン・リーホンの「ラスト、コーション」コンビに
すっかりオスカーの常連になったヴィオラ・デイヴィスなど。
タイトルのブラックハットとは、サイバーテロのことを指している。



凶悪犯の対抗手段として、同系の犯罪歴を持った
前科者をぶつける手法は「羊たちの沈黙」以降の大定番。
同じ設定で人情話に落とすなら「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」
『事件を解決すれば無罪放免』を条件として警察の依頼を引き受けた
天才ハッカー、ニコラス・ハサウェイ(クリス・ヘムズワース)が
激しい頭脳戦を繰り広げながら徐々に犯人を追い詰めてゆく。

ハッカー同士の闘いならば「どちらの能力が優れているか」の
先読み合戦になるかと思っていたのだが、ハッカーの性質として
しばしば描かれる屈折した性格や、相手に勝ちたい気持ちが強いプライドの高さ、
捜査を攪乱して楽しむ愉快犯的な側面、自己顕示欲の強さといったものが
ほとんど描かれず、警察がマフィアを追うノーマルなサスペンスドラマと
大差ない形に落ち着いている。
捜査の過程でちょっとパソコンを使いますよ、といった程度なら
サイバーテロを題材にする必要も、ハッカーを主人公にする必要もなかったのでは。


06月24日発売■Blu-ray:「アベンジャーズ MovieNEX」

まして主人公は「アベンジャーズ」ファミリーのビリギャルこと
マイティ・ソーを演じたクリス・ヘムズワースである。
一般的なハッカー像からかけ離れた筋骨隆々のボディを至るところで晒し、
女を抱き、銃撃戦や肉弾戦までやって退けるキャラ設定は
ハッカーというよりも凄腕のエージェント。
性格は最低だが能力は最高なハッカー同士の
静かで陰湿な闘いを期待していた私はすっかり裏切られてしまった。
ちなみに、クリス・ヘムズワースは普段はパソコンが苦手なのだそうで
キーボード入力も左右の人差し指しか使わないらしい。
そのためか、天才ハッカー役にも関わらず劇中でほとんど手元が映らなかったりする。
いいぞソー、お前はそれでいい。
お前はハンマーが使えればそれで充分だ。
破損したファイルを修復するツールの名前がブラック・ウィドウというのは
「アベンジャーズ」ファンを意識してやったのだろうか。
思わず「her」のようにスカーレット・ヨハンソンが
OS役で音声出演するかと思ったらさすがにそれは無かった。


発売中■Blu-ray:「インファナル・アフェア 三部作 スペシャル・パック」

結局正義を描きたかったのか悪銭身につかずを言いたかったのか
良くわからない幕引きで、ジェイソン・ボーンのようにシリーズ化の気配もない。
骨太な男のドラマなら「復讐捜査線」や「インファナル・アフェア」といった
名作が他にいくらでもあるわけで、マイケル・マン5年振りの新作ながら
物足りなさが残ってしまった。
クリス・ヘムズワースのファンならそこそこお薦め。

映画「ブラックハット」は5月8日より公開。




発売中■Blu-ray:「ラスト、コーション」

「ブラックハット」に出演しているタン・ウェイの魅力が良く出ているのが
2008年度を代表する傑作映画のひとつ「ラスト、コーション」。
日本軍占領下の上海を舞台に、抗日運動に参加した女子大生(タン・ウェイ)が
日本軍と手を組む特務機関のリーダー(トニー・レオン)に暗殺目的で近づく物語。
誰にも心を許さない冷徹な男、リーとの逢瀬を重ねるたびに
少しずつ彼の人柄に惹かれていく姿が「ブロークバック・マウンテン」の
アン・リー監督らしい、丁寧な演出で織り上げられている。
タン・ウェイの清純さとトニー・レオンの非情さのコントラストも素晴らしく
スパイ映画の傑作として、永く語り継がれる作品になるに違いない。
女スパイの武器と言えば・・・ということで、
かなり過激なシーンもあるので18歳以上推奨。