少女たちの秘め事。映画「劇場版 零~ゼロ~」 | 忍之閻魔帳

忍之閻魔帳

ゲームと映画が好きなジジィの雑記帳(不定期)

劇場版 零 中条あやみ 森川葵 小島藤子 美山加恋


▼少女たちの秘め事。映画「劇場版 零~ゼロ~」



ちょうど今週、シリーズ最新作が発売になる人気ホラーゲーム「零」を原案とした
大塚英志のノベライズ版を原作にした実写映画「劇場版 零~ゼロ~」を紹介。
ティーンに絶大な人気を誇る「Seventeen」モデルの中条あやみ、森川葵を起用し
厳格な寄宿制の女学園で起こる謎の連続失踪事件に迫るホラーミステリー。
共演は小島藤子、美山加恋、山谷花純、萩原みのり、中村ゆり、中越典子、美保純。
監督は2009年公開の「呪怨 黒い少女」で人気シリーズの続編に抜擢された安里麻里。
今年1月に同じ角川配給で公開されたホラー「バイロケーション」も
単なるドッペルゲンガーモノと思わせておいて
後半で鮮やかに裏切る展開が良くできた良作だった。

今、角川ホラーはノッている。
キモカワ路線へとシフトした「貞子3D」が
女子中高生を中心に大ヒットしたのをきっかけに
続々と「佳作以上、名作未満」の良作を生み出している。
3月に公開された「パズル」では「先生を流産させる会」
「高速ばあば」の内藤瑛亮監督をメジャーに引っ張り出し
夏帆や野村周平を血の海で暴れさせる快作を送り出し、
続く「ライヴ」では、世界に名声を轟かせている井口昇監督が
エログロギャグの世界を盛り込んだバリバリの青春映画を公開。
いずれも角川の看板で公開するにはかなりのリスクの高い
マニアックな作品だが、私はどちらもかなり楽しめた。

今週公開される「劇場版 零」は、
「バイロケーション」に続く角川&安里監督のコンビによる2014年2作目。
角川の新時代を思わせる「パズル」「ライヴ」とは違い
SFもホラーも貪欲に取り込んでいた80年代の青春映画を思わせる作り。
厳格な学校、女性だけの空間、同性に憧れ以上の想いを抱く思春期の揺れる恋心、、、
謎の連続失踪事件を追っていくうちに、徐々に紐解かれてゆく歴史と
語り継がれる伝説に隠された真実。
ここまで徹底しているからには、作品の世界観を考えて
敢えてクラシックスタイルを踏襲しているのだろう。

映美学校時代には青山真治監督(「東京公園」「共喰い」)や
黒沢清監督(「回路」「トウキョウソナタ」)に師事していただけあり
ホラーでありながらこけ脅しのシーンが全くない。
大音量のBGMで驚かせたりもしないし、残虐なシーンも(確か)無い。
気がつけばそこに居て、怖いというよりも不思議な感情を抱かせる演出法は
黒沢監督の「叫」がもっとも近いかも知れない。

ゲーム版「零」のファンからすれば、射影機がただのお飾りである点や
襲いかかる霊を撃退するようなシーンもないことに喰い足りなさを感じるだろうし、
「貞子3D」や「呪怨」のようなアトラクションホラーを期待している人には
「なにこれ全然怖くないじゃん」で終わってしまう可能性もある。
しかし、美しく静かなホラーを古典的な演出でまとめ上げた本作は
角川の狙うティーンよりももっと上の世代にウケそうな気がする。
ギレルモ・デル・トロあたりが観たら、
ハリウッド・リメイクに名乗りを上げても全く不思議ではない。

ただ一点、後半の謎解きがやや強引なのは残念。
何よりも動機が弱過ぎるし行動も短絡的なので、丁寧に紡いできた物語が
後半でプツンと切れてしまった印象を与えたのはもったいない。
後半の脚本をもう少し練ることが出来たら、もうワンランク上の作品も目指せたはず。
予告編に出てくる「リング」や「貞子3D」のファンではなく
「永遠のこどもたち」(J・A・バヨナ)×「blue」(安藤尋)と聞いて
ピンと来るぐらいの映画好きにお薦め。

映画「劇場版 零~ゼロ~」は9月26日より公開。

余談。主題歌は天野月にして欲しかった。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
  タイトル:劇場版 零~ゼロ~
    配給:角川
   公開日:2014年9月26日
    監督:安里麻里
   出演者:中条あやみ、森川葵、中越典子、美保純、他
 公式サイト:http://zero-movie.jp
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


Wii U 零 ~濡鴉ノ巫女~
09月27日発売■WiU:「零 ~濡鴉ノ巫女~」
09月27日発売■WiU:「零 ~濡鴉ノ巫女~ Amazon限定クリアファイル 付き」
09月27日発売■WiU:「零 ~濡鴉ノ巫女~ [オンラインコード]」

「とびきり怖くて」「美しく」「哀しい」
私がホラー映画に求める3大要素の全てを満たす
「零」シリーズの最新作がWii Uで発売。




10月01日発売■CD:「ごもくならべ / 天野月」
10月01日発売■CD:「ZERO リマスター版 / 天野月」

歴代作品でテーマソングを手掛けてきた天野月は
今作ではタイアップソングとして「鳥籠 -in this cage-」を提供。
同曲を収録した最新ミニアルバムは10月1日発売。




発売中■Wii:「零 ~月蝕の仮面~」
発売中■Wii:「零 ~眞紅の蝶~」




発売中■Blu-ray:「バイロケーション 最恐・エディション」

安里麻里監督・水川あさみ主演で今年公開されたサスペンス・ホラー。
予告編や「バイロケは、もう一人の自分。必ず、本物を、殺す。」とのコピーから
良くあるドッペルゲンガーに襲われる系ホラーかと思ったのだが
序盤から周到な仕掛けがしてあったり、ストーリーにひとひねり加えてあったりと
観終わるとすぐにリピートしたくなるマニアックな面白さを持っている。