これだけは観ておきたい、2012年度公開映画総まとめで
2012年度の作品賞に挙げた「ミッドナイト・イン・パリ」から2年、
実力派で知られるケイト・ブランシェットも
ウディ・アレンの手にかかればこんなにも可愛く料理されてしまうのか。
タイトルになっている「ブルージャスミン」とは
ブランシェット演じる主人公(ジャスミン)の精神状態(憂鬱)を表すと共に
ジャスミンにとって思い入れのある曲「ブルームーン」から取られている。
富豪の夫を持ち、何不自由ない暮らしを送っていたジャスミンは
夫の逮捕をきっかけにセレブから転落、無一文となってニューヨークを追われる。
サンフランシスコに住む妹夫婦を頼ってやってきたが
妹の亭主はジャスミンの口車に乗せられ全財産を失ってしまった怨みから
彼女を歓迎しようとはしない。
せせこましい住宅、うるさい子供達、華やかさとは無縁の生活からの脱却を
夢見るジャスミンは、パーティに参加して玉の輿を狙うのだが・・・
テレビの中のセレブに対し「いいわね」と羨んでいる間は、人はそれほど嫉妬を抱かない。
しかし身近な人が成功を手にすると
「すごいわね」と誉め称える裏側で、「そんなに人生上手くいくはずがない」
「いつか痛い目に遭うわよ」と陰口を囁き始めるものである。
手にした幸運が大きいほど、手に入れるまでの過程が容易いほど嫉妬は大きく膨らむ。
泡銭を忌み嫌い、額に汗して得た金のみに価値を見出そうとするのは、
世の中が不公平に出来ていることを受け入れられない凡人の
「そうでなければやってられない」感情が積み重って出来た道徳観かも知れない。
胡散臭い儲け話を餌に、口八丁手八丁で素人から大金を巻き上げる亭主に守られて
何不自由ない暮らしをしているジャスミン。
妹夫妻がこつこつと貯めた全財産をフイにしてしまっても
善かれと思ってやったことと、悪びれる素振りすら見せない。
夫が逮捕され、巨額の負債を背負って無一文になっても
過去の自分のどこかに悔い改める点があったのではなどと考えない。
何がなんでもここから這い上がるのだ、もう一度華やかな舞台へ
自分が居るべき世界へ戻るのだと、その一心で行動する。
ジャスミンは稀代の悪女か、それとも底抜けの馬鹿なのか。
私には、どちらにも見えなかった。
目の前にいない誰かと延々と会話を続ける滑稽さも
玉の輿に乗る為に経歴詐称すら厭わない必死さも、その全てが愚かで可愛かった。
丸裸でニューヨークを追われても、ファーストクラスで帰郷し、
ブランド品に身を包むジャスミンの生き様には、一切の迷いも妥協もない。
むしろ、「姉さんは可哀想な人なのよ」「病気なのよ」と言いながら
自分達と同じフィールドまで堕ちて来た姉を受け入れる妹の生き様の方が
人生に対して自堕落で、保守的に映る。
簡単に手に入るレベルの幸せに一喜一憂し、平凡な幸せこそを至上のものと信じる。
世の中の多くがそうして生きているのだからと
言い聞かせるようにして平々凡々の人生を歩んでいく。
果たして、本当に幸せなのはどちらだろう。
ジャスミンにはモデルとなった実在の人物がいて
劇中に登場する息子は、実際は良心の呵責に耐え切れず自殺してしまったらしい。
創り事の中で母子の絶縁状態が解消されることはないが、
どこかで生きていることをちゃんと確認できるようになっているのは
アレンなりの洒落た気遣いだろうか。
映画のコピーは”虚栄という名の花”でも、
ケイトが手にしたオスカー主演女優賞は本物の”大輪の花”。
長くファンを続けてきた私としては
彼女の快心の演技と、正当な評価をただただ喜びたい。
映画「ブルージャスミン」は5月10日より公開。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
タイトル:ブルージャスミン
配給:ロングライド
公開日:2014年5月10日
監督:ウディ・アレン
出演者:ケイト・ブランシェット、他
公式サイト:http://blue-jasmine.jp/
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ケイトの凄さを知るにはうってつけの4本。