日常に射し込む光。映画「LIFE!」 | 忍之閻魔帳

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▼日常に射し込む光。映画「LIFE!」

ジェームズ・サーバーの短編を基にした1947年の映画「虹を掴む男」
「ナイトミュージアム」「トロピック・サンダー/史上最低の作戦」の
ベン・ステイラーの監督&主演でリメイクした話題作「LIFE!」が水曜日より公開。
出世作の「ズーランダー」以降、主だったヒット作はほぼコメディで
しかもそのテイストは日本人の好みとは今ひとつ合わないベン・ステイラーが
もしかすると日本でもブレイクするきっかけになるかも知れない作品。
共演はクリステン・ウィグ、シャーリー・マクレーン、ショーン・ペン。



現題は「THE SECRET LIFE OF WALTER MITTY」。
主人公ウォルター・ミティが人生に迷い躓いた先に
小さな小さな幸せを見つける物語である。
リメイクとはいえ土台は67年前の作品なのでストーリーは古典の部類だが
紙の媒体がデジタル時代をどう生き抜いていくかという
現代的な問題をさりげなく取り込んでいたり、アレンジがスマートで違和感がない。

こつこつと真面目に仕事に取り組み
月日を積み重ねてきたウォルターの密かな愉しみは妄想癖。
この空想世界へダイブした時の映像が2014年版ならではの
大きな見どころになっている。
一枚のネガを求めて旅をするロードムービーのスタイルで
少しずつ浮かび上がってくるウォルターの魅力的な人間性を見ていると
山下達郎が常々言っているこんな言葉を思い出す。

僕はアーティストという言葉が好きではありません。
知識人とか文化人といった、上から目線の「私は君たちとは違う」と
言わんばかりの呼称も全く受け入れられない。
名が知られていることに何の意味があるのでしょうか。
市井の黙々と真面目に働いている人間が一番偉い。それが僕の信念です。
この社会は職種に関わらず、懸命な仕事人の働きによって回っていると思います。


映画を観た人ならば、まるでこの映画の感想のように聴こえて来るはずだ。
そして、「市井の黙々と働く人間」を絵に描いたようなウォルターを
密かに見てくれていたのが、ショーン・ペン演じるショーン・オコンネル。
目立たない、呆れるほど単調な日々の繰り返しだったとしても
それが誰にも評価されなくても、どこかで誰かが必ず見てくれている。
過大な評価でなくていい、「見てるよ」と言ってくれるだけで
明日からまた頑張ろうという気持ちが沸いて来る。
そうやって私達の世界は回っている。

出演シーンは僅かだが、
ショーン・ペンが久しぶりに素晴らしい芝居を披露してくれている。
「本当に素晴らしい景色に出会うと、レンズが邪魔になるんだ」
名カメラマンでありながら、追い続けた被写体を前にすると
ファインダーを介さずに会話を楽しみたい。
いつもの公園で、レストランで、デート先で、
日常風景を片っ端からスマホで撮りまくるようになった私達は
いつの間にかこの気持ちを忘れてはいないだろうか。

監督と主演を務めるベン・ステイラーは
(私的には)初めて「カッコいい」と思えるシーンが続出の大奮闘。
抑えの利いた芝居もきっちり見せて、
ジム・キャリーが「マジェスティック」で一皮むけた時のような感動を覚えた。

ここ日本も含めて、世界中の「普通の人」が少しだけ人生に前向きになれる良作。

映画「LIFE!」は3月19日より公開。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
  タイトル:LIFE!
    配給:フォックス
   公開日:2014年3月19日
    監督:ベン・ステイラー
   出演者:ベン・ステイラー、ショーン・ペン、他
 公式サイト:http://www.foxmovies.jp/life/
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★



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年代も監督も主演もバラバラの3作だが、
このあたりがお好きなら必ず本作も好きになれるはずなので引っ張ってみた。