▼万城目ワールドの最上位。映画「偉大なる、しゅららぼん」
歴史ある街並で非日常の出来事を巻き起こすファンタジックコメディで
多くのファンを持つ万城目学原作の「偉大なる、しゅららぼん」が映画化。
今作の舞台は琵琶湖。
湖畔の街、石走に住む日出家と棗(なつめ)家が
それぞれに与えられた摩訶不思議な力で対抗する
傍目にはちょっと馬鹿馬鹿しくもあるコメディタッチのドラマ。
主演は「みなさん、さようなら」の濱田岳と「潔く柔く」の岡田将生。
共演は深田恭子、渡辺大、貫地谷しほり、笹野高史、村上弘明。
監督はオムニバス映画「犬とあなたの物語 いぬのえいが」で1エピソードを担当し
今回が長編デビューとなる水落豊。
主題歌はももいろクローバーZ。
テレビドラマ化された「鹿男あをによし」(2008年)を皮切りに
「鴨川ホルモー」(2009年)、「プリンセス トヨトミ」(2011年)と
定期的に映像化されてきた万城目作品の中だが
おふざけが度を超して若干滑っていたり(鴨川)、
不必要に壮大にし過ぎて軽さが失われてしまったり(トヨトミ)と
万城目作品の魅力であるファンタジー、コミカル、壮大さ、日本らしさの配分が
綺麗なスクエアにならず、バランスを崩しているものが多かった。
どれもつまらないわけではないが、万城目ワールドの映像化はそれだけ難しいのだ。
今回の「偉大なる、しゅららぼん」は監督にとって長編デビュー作にも関わらず
これまでで一番良くまとまっている。
今後も映像化が続くであろう万城目作品の映像化において
ひとつの指標になっていくのではないか。
ストーリーは「鴨川」と「トヨトミ」のミックスといった感じ。
濱田岳や深田恭子といったキワモノ的なキャラクターにおろおろしながら
少しずつ日出家の人間と馴染み、能力を覚醒させてゆく岡田将生が何ともハマり役。
指導役の貫地谷しほり、長年日出家で船頭を務める笹野高史もぴったりと
キャスティングにおいてはほぼパーフェクトと言えるのでは。
琵琶湖から離れると失ってしまう、限定された空間でしか通用しない能力に
人生を捧げる価値があるのだろうか。
古来より伝わる風習に平伏せず、されど闇雲に否定するでもなく
現代的な価値観と照らし合わせてそれぞれの人生を生きていこうとする若者達。
両家を見下ろす遥か天空からすれば豆粒にも等しい些細な諍いが
代替わりによって新たな関係へと再構築されていく姿は青春映画のように眩しい。
結果的に両家を結びつけるきっかけを作った某人物のエピソードは
オチも含めて何とも儚く寂しい。
晴れ渡る青空の下で迎えたはずのエンディングがやけに寂しく感じたのは
某人物の記憶が観客である私達へと刻まれたからだろう。
万城目ワールドのファンならば文句なしにお薦め。
アニメやコミックがお好きな方にも是非ともお薦めしたい良作。
映画「偉大なる、しゅららぼん」は3月8日より公開。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
タイトル:偉大なる、しゅららぼん
配給:東映/アスミック・エース
公開日:2014年3月8日
監督:水落豊
出演者:濱田岳、岡田将生、深田恭子、渡辺大、他
公式サイト:http://shurara-bon.com/
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

発売中■DVD:「鹿男あをによし DVD-BOX ディレクターズカット完全版」
万城目学作品では初の映像化作品。
奈良の女子校に赴任してきた教師が
突然奈良公園の鹿に語りかけられ、日本滅亡の危機を救う奇想天外なドラマ。
主演は「私の嫌いな探偵」の玉木宏。
共演は「プリンセス トヨトミ」の綾瀬はるか、
「僕のいた時間」の多部未華子、「アフタースクール」の佐々木蔵之介など。
放送当時の視聴率は大苦戦したものの視聴者の評価はすこぶる高く、
サントラCDやDVDボックスもかなりのヒットを記録した。

発売中■DVD:「鴨川ホルモー」
京都を舞台にした奇想天外な学園コメディ。
二浪の末、念願の京大へと進学した安倍明に山田孝之、
同じ新入生の高村幸一に濱田岳、怪しげなサークルの部長には荒川良々、
安倍が一目惚れするヒロインに芦名星、大木凡人そっくりな髪型の女は栗山千明、
キザな二枚目男は石田卓也と、若手の中でも実力派が顔を揃えている。
監督はの「ゲゲゲの鬼太郎」の本木克英。
「鹿男あをによし」に続く万城目学テイストで満載で、
栗山千明の繰り出す「ゲロンチョリー」(行け!やってしまえ!の意味)など
見どころはたくさんある。
ただ、面白い部分とダダ滑りしている部分とか混在しているため
全体的の印象が「偉大なる、しゅららぼん」ほど良くないのは確か。

発売中■Blu-ray:「プリンセス トヨトミ」
「鹿男あをによし」に続きフジテレビ制作で実写化した万城目作品の第3弾。
主演は「地獄でなぜ悪い」「土竜の唄」の堤真一。
共演は綾瀬はるか、岡田将生、中井貴一など。
監督は「古畑任三郎」「鹿男あをによし」など数々のヒットドラマを手掛けた鈴木雅之。
会計検査院から派遣された調査員が大阪で不審な金の流れを掴み、
つぶさに追ってゆくと、豊臣家の生き残りを守るために結集した
とある巨大組織にたどり着く・・・というストーリー。
史実に「if」の解釈を加えて膨らませた万城目学らしい娯楽大作で
制作者のアプローチも小細工なしの直球勝負。
主演の堤真一以下、意外性のある配役は行わず
「このキャラならこの人」という人選で、王道作品のイメージを際立たせている。
一点だけ、旭ゲンズブールを男性に変更したために
岡田将生の役柄が「黄金の豚」と丸被りになってしまったのはご愛嬌。
(「黄金の豚」でも、会計検査庁・特別調査課に所属する調査員役)
全体として観ると、空想歴史ロマンから始まったストーリーが
途中で迷走を始め、本筋を含む伏線の回収もそこそこに、
単なる父子モノとして着地してしまったのがやや残念であった。
フジが得意とする「なんとなく盛り上がったかのような演出」によって
そこそこ良い話にまとまってはいるのだが、食い足りない印象は残る。
綾瀬はるかの天然キャラが映画のいいアクセントになっているし、
眼光の鋭さが内田有紀のデビュー当時を思わせる沢木ルカも好印象。
「鹿男」で主演を務めた玉木宏がたこ焼き売りをしていたりと
「鹿男」に絡めたお遊びも楽しい。
分かり易い、損はしない、後にも残らない。
でも、フジテレビ制作の映画はこれでいいのだ。