『御意に』は流行る！（かも）。映画「黒執事」

▼『御意に』は流行る！（かも）。映画「黒執事」

実写化が発表されてからというもの、原作の熱烈なファンを中心に
猛反発の声が相次いでいた映画「黒執事」が今週末より公開。
主人公のセバスチャン・ミカエリスには「メイちゃんの執事」の水嶋ヒロ。
結婚・独立・作家デビューを経て久々の役者復帰となるだけに、
本名の齋藤智裕名義で共同プロデューサーとしても名を連ねる気合いの入れよう。
幻蜂伯爵家四代目の当主であり、巨大企業ファントム社の若き総帥でもある
幻蜂清玄には「クロコーチ」「清須会議」の剛力彩芽。
ガブリエル・アプリンの歌う主題歌「Through the ages」は
水嶋の妻である絢香の書き下し。
監督は「NANA」「ランウェイ☆ビート」の大谷健太郎と
「TIGER & BUNNY」「アシュラ」のさとうけいいちの。
「のぼうの城」でも犬童一心監督と樋口真嗣監督が二枚看板を務めていたが
W監督制は最近の流行なのだろうか。

映画版「黒執事」はコミック原作の実写映画化作品としては
意外なほどまっとうに一定水準を超えていて
多くの方が（別の意味で）期待しているであろう、ネタ映画にはなっていない。
これでは、待ってましたとばかりに「やっぱりダメでした！」と書き殴るつもりが
振り上げた拳の下ろしどころに困る方も出てくるのではないか。
大雑把にチーム分けするとすれば、
鑑賞前は「デビルマン」「ガッチャマン」ラインだと思っていたのに
蓋を開けてみたら「デスノート」「るろうに剣心」ラインだった、ということである。
原作への思い入れが強い方ほどキャスティングに異論（特に剛力さん）はあろうが
手身近な比較対象で言うなら「安堂ロイド」よりは確実に上である。

そもそも映画「黒執事」は情報の出し方が不味かった。
いきなりアイパッチのゴーリキさんが出て来て「僕を助けろ」などと言われれば
『その先』を確認する前に拒絶反応を示す方が多くなるに決まっている。
実際私も予告編はコントにしか見えなかった。
しかし、世間の荒波にも負けず「クロコーチ」「清須会議」と
着実に力をつけてきた彼女は、本作でも男装で身を隠す少女をきっちり演じており
女優として今後のさらなる成長を期待させるだけの魅力（の片鱗）はあった。
私から見れば、問題はむしろ水嶋ヒロである。

意図的に演出しているのか、原作から離れたキャラクター像を造りたかったのか、
単に芝居が下手なのかは知らないが、
水嶋ヒロ演じる黒執事はキャラクターが平板で魅力に乏しい。
軽口を叩いたりふざけてみたりといった陽の要素を全て封印し
目を細め、くぐもった声で「御意に」しか言わないのだ。
おそらく、映画の中で10回は「御意に」を聴いた気がする。
後半は剛力演じる清玄に悪魔らしからぬ仏心を見せたりもするが
このまま行けば続編（明らかに続くそうな終わり方をする）は
ダークサイド版「花ざかりの君たちへ」＋「メイちゃんの執事」になってしまうのでは。

ストーリーは、麻薬を取り扱う巨大製薬会社の闇を追うミステリー。
巨大組織に少女（男装）が完全と立ち向かう構図は
映画版「スケバン刑事」のよう、と思ったらあちらのラスボスも伊武雅刀だったな。
アクションもそれなりに用意されているが
水嶋セバスチャンが早回しの多用と決めポーズだけで凌いでいるのに対し、
ドジっ子メイドのリンを演じる山本美月に大きな見せ場が用意されている。
これは製作スタッフの愛情の表れだろうか。
葬儀屋を演じた栗原類はワンシーン数分だけの出番で残念。
あのキャラをもう少し掘り下げていれば、トリックスターとしてもっと活かせたのでは。
この映画で一番美味しい思いをしたのは優香だろう。
本作で剛力さんの叔母を演じた優香は、
映画「恋愛寫眞」の怪演で一気に女優としての仕事が増えた小池栄子を思わせる。

観賞後やたらと「御意に」を使いたくなることだけは認めざるを得ない。
「倍返し」ほどの規模ではないにせよ、乙女ロードあたりではこっそり流行るのでは。
熱烈なファンの方からすれば、キャラの名前を変えただけで許されるものでも無かろうし
予告編で絶対に観ないと心を決めた方にまでは薦めない。
予告編を見て強い拒絶反応が出ず、「どんなもんかな」ぐらいに興味を持った方が
軽いノリで観に行くには案外良いのではないかと思う。

最後におまけ、猫のシーンは笑った。

映画「黒執事」は1月18日より公開。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
　　タイトル：黒執事
　　　　配給：ワーナー
　　　公開日：2014年1月18日
　　　　監督：大谷健太郎／さとうけいいち
　　　出演者：水嶋ヒロ、剛力彩芽、優香、他
　公式サイト：http://wwws.warnerbros.co.jp/kuroshitsuji-movie/
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

01月18日発売■COMIC：「黒執事（18）」
01月18日発売■BOOK：「枢やな画集黒執事 1」
01月18日発売■BOOK：「映画黒執事 VISUAL BOOK」

公開日に合わせてコミックス最新刊、画集、映画版のビジュアルブックが発売。

発売中■CD：「イングリッシュ・レイン~ニュー・エディション / ガブリエル・アプリン」
配信中■iTMS：「Through the Ages / ガブリエル・アプリン」

絢香が書き下し、ガプリエル・アプリンの歌う
主題歌「Through the Ages」は昨年末発売のアルバムに収録済み。
iTMSでは曲単位での購入も可能。
イントロからサビまで、遥か昔に聴いた何かにそっくりなのだが曲名が思い出せず。
むむむ、気になる。

発売中■DVD：「メイちゃんの執事 DVD-BOX」

世間の人が思い浮かぶであろう水嶋ヒロの代表作。
この直後に間髪入れず映画で「黒執事」を演っていれば
よりインパクトがあったろうに。

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『御意に』は流行る！（かも）。映画「黒執事」