二部構成にすべきだった。映画「利休にたずねよ」 | 忍之閻魔帳

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▼二部構成にすべきだった。映画「利休にたずねよ」

第140回直木賞を受賞した山本兼一の同名小説を
「火天の城」の田中光敏監督が映画化した「利休にたずねよ」が明日より公開。
歴史モノのドラマや映画でも度々登場する千利休を演じるのは
「出口のない海」「一命」の市川海老蔵。
共演には「清須会議」の中谷美紀、伊勢谷友介、「R100」の大森南朋、
成海璃子、福士誠治、大谷直子、壇れい、中村嘉葎雄、伊武雅刀、柄本明、市川團十郎。
市川團十郎と海老蔵の親子共演は、残念ながら本作が最初で最後となった。



織田信長にその美意識を高く評価され、茶頭として仕えた利休が
豊臣秀吉より切腹を命じられるまでの物語。
現在公開中の「清須会議」も織田から豊臣に移る時期を題材にしているのが、
2作に登場する人物の解釈(印象)が随分と違っていて面白い。

千利休が主人公でありながら、本作は言葉足らずな部分が多い。
まず利休の妻・宗恩が後妻であることが全く触れられていないし
(最初の妻である宝心妙樹と死別した後、同じく夫と死別した宗恩と再婚する)
夫妻の子も成海璃子演じるおさん(三女)しか出て来ない。
利休を取り巻く権力争いにスポットを当てているため
敢えて無駄な人物やエピソードを削ったとも思えるが
秀吉が作らせたとする黄金の茶室など
良く知られたエピソードは軽くなぞっただけで
後半は利休が長年想い続けてきた高麗の女(クララ)との悲恋の物語へと方向転換する。
秀吉も宗恩も、死んだおさんでさえも映画の隅っこへと追いやられてしまう。
切腹当日から始まり、そこから一気に遡って晩年までを描いてきたはずが
ゴール目前で明後日の方向に物語が転がっていってしまうのだ。

しかも困ったことに、海老蔵が活き活きと輝いているのが
破天荒な遊び人を演じるこの部分だけなのである。
所作は文句なしに美しいものの、天下人が恐れたほどの威厳もなければ
多くの弟子から慕われた人柄も見えず、台詞運びもおぼつかなかった海老蔵が、
遊女から階段下に突き落とされながらもニヤリと笑いかける後半で本領を発揮する。
映画全体の比率で言えば3割にも満たないこのメロドラマの強烈さが
ついにはクライマックスであるはずの切腹のシーンまでも浸食し
終わってみれば「利休の初恋」を観たような気になってしまう。

「清須会議」の秀吉があれほど魅力的な人物として描かれていたこととは対照的に
いつの間にか死んでいる信長も、単に怒っているだけの秀吉も
出ていたのかすら覚えていない細川ガラシャや北政所も
主人公も含めて登場人物の掘り下げが足りていないのは残念。

ただ、利休に教えを説く武野紹鴎役の市川團十郎はさすがの貫禄で
彼こそが晩年の利休を演じるべきだったのではないかと思う。
時系列をバラバラにするのではなく、前編で若かりし頃の利休を海老蔵が演じ
後編で晩年の利休を團十郎が演じる二部作構成であれば、
本作は格段に面白くなっていたように思う。

「清須会議」で明るく元気な秀吉の妻を演じていた中谷美紀が
本作では物静かで知的な宗恩を見事に演じていて、その振り幅の大きさに改めて感心。
今年の映画賞レースでは「そして、父になる」の真木よう子と
助演女優賞を争うことになりそう。

映画「利休にたずねよ」は明日12月7日より公開。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
  タイトル:利休にたずねよ
    配給:東映
   公開日:2013年12月7日
    監督:田中光敏
   出演者:市川海老蔵、中谷美紀、大森南朋、他
 公式サイト:http://www.rikyu-movie.jp/
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