ゾンビではなくパンデミック系。映画「ワールド・ウォー Z」 | 忍之閻魔帳

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▼ゾンビではなくパンデミック系。映画「ワールド・ウォー Z」

「ブラッド・ピットがゾンビ映画に出る」

製作時から大変な話題となっていた「ワールド・ウォー Z」が先週末より公開中。
マックス・ブルックスのベストセラー小説「WORLD WAR Z」については
映画化権を巡りハリウッドで熾烈な争奪戦が繰り広げられたと聞く。
ブラピもその一人で、自らの製作会社プランBを使って獲得し主演も務める気合いの入れよう。
近年は作品選びも慎重なブラピが何故ゾンビ映画にという疑問は
作品を観れば瞬く間に氷解する。
これは家族のために命を賭けて闘う父親の物語なのだ。
ちなみに、「WORLD WAR Z」の「Z」とはゾンビの頭文字ではなく
物事の終焉を意味しているらしい。もちろん、二重にかけてはいるのだろうが。
監督は私の大好きなマーク・フォースター。
「チョコレート」「ネバーランド」「君のためなら千回でも」といった
ヒューマン・ドラマの名匠の印象が強いフォスター初のパニック映画である。



ストーリーをざっと説明すると、発生源の不明なウィルスが突然世界に蔓延し
世界中がパニックに陥るパンデミック系の作品。
ブラピ演じる主人公は元国連捜査官の腕利きエージェント。
家族を大切にするため退役し一般人の生活を送っていたが
事態を重く見た国連の旧友より現場復帰を頼まれる。
課せられた任務は、ウイルスの感染経路を追うこととワクチンを開発すること。
果たして、爆発感染を続けるウィルスの猛威を止めることが出来るのか。

粗筋を読んで「あれ、ゾンビは?」と気付いたあなたは鋭い。
本作は日本の配給会社がゾンビ映画であることを伏せていると
一部で否定的な意見が出ているのだが、
作品を観て私が率直に思ったのが「そもそもコレはゾンビ映画なのか」だった。
本作には体の一部を噛まれたことによって凶暴化する元人間が出てくるが
ゾンビ映画のスタイルを踏襲しているのはそこぐらいで
ワクチン開発までのブラピの奮闘ぶりがメインになっている。
ブラピが何故本作の映画化に固執したのか、
何故監督にヒューマンドラマの達人であるマーク・フォスターが起用されたのかを考えると
本作の意図がそこ(ゾンビ)に無いことを
配給会社がきちんと読み取った上でのプロモーションであると考えた方が自然に思える。
「アイ・アム・レジェンド」「ドーン・オブ・ザ・デッド」「28日後…」を経て
連続ドラマ「ウォーキング・デッド」が出てきた時点で
正調のゾンビモノは極まった感がある。
本作が目線を変え、闘うのではなく事態収拾に力点を置いたのは正解だろう。
「ブラインドネス」や「コンテイジョン」や「ハプニング」などの
パンデミックの引き起こすパニック映画として見れば、本作は非常に良く出来ている。

本作でのブラピは腕利きの設定はあるものの
うっかり者(大事な場面で携帯の電源を切り忘れ)だったり
弱々しさを見せたりと人間的なキャラクターになっている。
ゾンビを向こうに回しての大立ち回りではなく
圧倒的に不利な状況で追い詰められながら最善の道を探して行動する。
僅かなヒントをたぐって少しずつ解決に近づく展開は、派手さはないが見応えがある。
パンデミックに対する各国の対応がそれぞれ異なっているのも面白い。
エルサレムでは高くそびえる壁の内側で平和を過信する人々が
壁を乗り越えてくるゾンビ達に襲われ逃げ惑うシーンがあり、
思わず「進撃の巨人」を思い出した。

戦闘機に乗った兵士がゾンビの群れのど真ん中にミサイルを撃ち込みながら
「神に逆らった奴らは地獄に堕ちろ」と叫んでいたのがいかにもアメリカ的で
ちょっと違和感を覚えたりもしたが、全体的には良く出来ている。
ワクチンの効果が殲滅ではなく自衛であったり
ハッピーエンドとは呼べない、むしろここからが始まりとも思える終わり方など
多くの課題を残すことで観客それぞれに物語が引き継がれるのも上手い。

今回の私の同行者は、ホラーの類いが一切駄目な女性だったのだが
最後まで目を伏せることなく楽しめたと言っていた。
この手のジャンルで、デートムービーに組み込んでも女性がNoと言わない作品は貴重。
盆休みの終盤に何か1本お探しの方は、思いきって誘ってみては如何か。

映画「ワールド・ウォー Z」は現在公開中。



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  タイトル:ワールド・ウォー Z
    配給:東宝東和
   公開日:2013年8月10日
    監督:マーク・フォスター
   出演者:ブラッド・ピット、他
 公式サイト:http://www.worldwarz.jp
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