コレゾ、オタクダマシィ、デス。映画「パシフィック・リム」 | 忍之閻魔帳

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▼コレゾ、オタクダマシィ、デス。映画「パシフィック・リム」

当BLOGでは何度も取り上げてきた映画「パシフィック・リム」がいよいよ今週末公開。
敬愛するギレルモ・デル・トロの最新作は
日本産の特撮やアニメに多大な影響を受けたと語っている監督が
そのオタク魂を注ぎ込んで作られたアクション活劇。
2008年の「ヘルボーイ ゴールデン・アーミー」以降は
製作や脚本に徹することが多く、これじゃあリュック・ベッソンと同じじゃないかと
寂しい思いもしていたのだが、本作で5年振りの監督復帰となった。

日本発の特撮やアニメのエッセンスをふんだんに使用した本作には
芦田愛菜や菊池凛子といった日本人キャストも起用。
日本語吹き替え版には、話題性重視の人気俳優ではなく
プロの声優がキャスティングされており
デル・トロの敬意がしっかり日本語製作チームにも伝わっているようだ。
(実はケンコバも出ているのだが、意外なほど上手かったので不問とする)

・ローリー・ベケット:杉田智和
・マコ・モリ:林原めぐみ
・スタッカー・ペントコスト:玄田哲章
・Dr.ニュート・ゲイズラー:古谷徹
・Dr.ハーマン・ゴッドリーブ:三ツ矢雄二
・ハーク・ハンセン:池田秀一
・テンドー・チョイ:千葉繁
・チャック・ハンセン:浪川大輔



日本発のコンテンツがハリウッドで映画化されるケースが増える一方で
商業的にも内容的にも成功を収めたものは少ない。
ハリウッドに持っていった段階で設定が大きく変更されてしまい
日本の原作ファンががっくりすることの方が多い気がする。
しかし本作は、日本産の特撮やアニメへのオマージュを土台にした
オリジナル作品であり、余計な予備知識は誰ひとり持っていない。
日本産の香りがそこかしこに漂っているのに、
目の前で展開する物語は間違いなく見た事がないという不思議な感覚で進行する。

ゴジラに敬意を表してか、異世界ではなく海底から現れたKAIJUと
マジンガーZのような必殺武器を持つ鉄人28号ライクな巨大人型ロボットが
ドッシャンガッシャンと派手にぶつかり合いながら闘う様は
往年の特撮作品そのものだが、イェーガーの内部構造はというと
こちらは何とヱヴァンゲリオンぽかったりもして
新旧色々と取り揃えましたぜ、お客さんという感じだ。
観る前は何故に菊池凛子の吹き替えが林原なのだと思っていたが
なるほどイェーガーの操縦技術がヱヴァならば当然か。

ただ、ほぼ無名で固められたキャストを見て分かる通り
本作は「トランスフォーマー」以上に人間側のドラマが軽視されている。
ウルトラセブンを引き合いに出すまでもなく、
円谷作品の魅力の一端は正義のヒーローを支える人間達のドラマにあるわけだが
本作に登場する人間達は、基本的に何も考えていない連中(大勢)と
何事もオーバーアクションに考え過ぎる女(菊池凛子)しか出て来ない。
ローリーとマコの間にシンジとレイのような関係性はなく
言ってみれば人間は、KAIJUとイェーガーの場面転換の繋ぎでしかないのである。
30分の後半にしかウルトラマンが登場しなくとも
ちゃんと序盤から楽しめていたのは何故なのか。
「ヘルボーイ」であれだけの本を書けたデル・トロが
そこを見落とすはずはないがと思いつつクレジットを見てみると
今作の脚本は「タイタンの戦い」のトラヴィス・ビーチャムとの共同執筆になっていた。
話が薄まった原因はこのあたりにありそうだ。

というわけで結論。
デル・トロの特撮は既に「ヘルボーイ:ゴールデン・アーミー」で完成しており
残念ながら本作は「ヘルボーイGA」を超えるものではないが
日本産の特撮ヒーローやアニメをオマージュしているので日本人には馴染み易い。

私はデル・トロの熱烈なファンなので
過去作品にそれほど思い入れのない方ならもっと気軽に楽しめる可能性も。

映画「パシフィック・リム」は8月9日より公開。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
  タイトル:パシフィック・リム
    配給:ワーナー
   公開日:2013年8月9日
    監督:ギレルモ・デル・トロ
   出演者:チャーリー・ハナム、菊池凛子、他
 公式サイト:http://wwws.warnerbros.co.jp/pacificrim/
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


配信中■iOS:「Pacific Rim」(ユニバーサル)

北米の映画公開に合わせて7月末より配信中のiOS用アプリ。
iOSでアクションと言えばすっかり定番になった
「Infinity Blade」系のスワイプアクション。
KAIJUやイェーガーのグラフィックはかなり美麗だが
ローカライズされていないのでちょっと分かり辛い。
映画好きなら250円でもまぁ許せる。
DL後の要領は628MBだった。



▼この機会に触れて欲しい、ギレルモ・デル・トロ作品

映画 DVD デビルズ・バックボーン
発売中■DVD:「デビルズ・バックボーン スペシャル・エディション」

2001年監督作品。
私がギレルモ・デル・トロの名を覚えた記念の作品。
後に製作される「パンズ・ラビリンス」とは姉妹作と言われることもあるが
単独作品としても素晴らしく良く出来ている。
当時の日本はJホラーの全盛期で、
本作も内容からは程遠いコピー(お願い、ぼくの怨みをはらして)と
煽り文句で売り出されていたために、いわゆる「呪怨」や「リング」のノリを
期待して劇場に足を運んだ観客からはけっこう酷評されていたのを覚えている。

しかし、本作の背景には「パンズ」と同じスペイン内戦があり
幼くして親を亡くした少年が孤児院で出会った少年の幽霊とコンタクトし
願いを聞き届けようとすることで、生きる力を身につけてゆく物語になっている。
子どもを見守る大人達の視線もしっかり描かれ
ちょっとした青春映画のような味わいを残す不思議な魅力に満ちた作品。

2011年にDVDがようやく再販されているが、
私としては「パシフィック~」のヒットをきっかけに
何とかBlu-ray化していただきたい。




発売中■Blu-ray:「ブレイド 2」

2002年監督作品。
世界的にデル・トロの知名度が上がったのがこちら。
人気シリーズの2作目は大体前作を超えられないもの、というジンクスを跳ね返し
非常に高い評価を受けた大ヒット作品。
本作のヒットが「ヘルボーイ」へと繋がってゆく。




発売中■Blu-ray:「パンズ・ラビリンス」

2006年監督作品。
美しさと残酷さと哀しさを内包するホラー、ファンタジーを作らせれば
この監督の右に出る者はいないデル・トロの真骨頂とも言うべき名作。

スペイン内戦による「救いのない現実」を徹底的なリアリズムで描き、
そこから逃れるための術としてファンタジー世界に救いを求めた
少女の物語であり、軽さや楽しさは微塵も存在していない。
(個人的には怪物達の造形は大いに楽しめたが、決して万人向けではない)
しかし、一度その味を覚えてしまえば、生半な似非ファンタジーでは
物足りなくなるほど濃厚なデル・トロ節を堪能出来る作品でもある。
清く正しく楽しいだけが「ファンタジー」ではない、という
認識のある方なら強烈にお勧め。

オフェリアが辿り着いた「魔法の国」は、
彼女が夢見たように輝きに満ちているのであろうか。
観た方の解釈によって意見が大きく分かれるところであろうが、
私は、溢れんばかりの輝きと春の暖かさに満ちた国であると思いたい。




発売中■DVD:「永遠のこどもたち」

2007年。デル・トロは製作で参加。
かつて自身がペドロ・アルモドバルに才能を見出されたように
デル・トロは本作でJ・A・バヨナを見出す。
バヨナはこの後、今年のオスカー賞レースにも顔を出した
映画「インポッシブル」を手掛けることになる。

本作はバヨナの長編デビュー作だが、既にスタイルは確立されている。
ホラー映画にはしばしば使用される母性をクローズアップした作品で、
ニコール・キッドマン主演の「アザーズ」や、
伊丹十三製作、黒澤清監督による「スウィート・ホーム」などを想起させるが、
方々に伏線を張り巡らしたサスペンスとしての面白さや、デル・トロ節を受け継いだ
ダークファンタジーテイストなど、本作ならではの見所は多い。
知名度は低いが、名作と言ってもいいレベルの作品。




発売中■Blu-ray:「ヘルボーイ ゴールデン・アーミー」

2008年監督作品。
一作目はオリジナルへの気遣いからか大人しめに作っていたデル・トロが
その力関係を「監督>原作」に変えて好き放題し始めた快作。
2004年の前作から2008年の本作までに、デル・トロがどれほど独自の世界を拡大し、
自信をつけて来たのか、全てがこの1本に凝縮されたような仕上がり。

前作を観た時にはそんなことは微塵も感じなかったのだが
今回は断言出来る。これはハリウッド版「妖怪人間ベム」である。
見た目は怖いが”一応は”人間の味方というキャラの立ったメンバーが、
人間を襲う敵を撃退する姿を、たっぷりのアクションとユーモアを交えて描いている。
ヒーローでありながら、その風貌故に人間から気味悪がられる哀しい宿命と、
仲間同士に流れる強い連帯感は、まさしく「ベム・ベラ・ベロ」だ。

デル・トロ節とも言える、脳裏に焼き付く独特のクリーチャーデザインと
ティム・バートン作品を思わせる「怖そうなのにワクワクする音楽」
(と思ったら、音楽担当は何とダニー・エルフマンであった。納得)、
童話のような世界観と、幸せな気分になれるエンドロール。
ここまでされて、一体何の文句があろうか。
私の中では「ダークナイト」や「アイアンマン」にも決して引けを取らない、
むしろ、上回る部分も多数持っているアメコミ映画の傑作だ。