▼オカルト復興の旗標。映画「ポゼッション」
オカルトブーム再燃の兆しが見えているハリウッドから
サム・ライミ製作のホラー映画「ポゼッション」が届けられた。
「エクソシスト」から連綿と受け継がれてきた
古き良きオカルト映画のルールに則った正統派の作りは
私のようなジジィ世代には懐かしく、お若い方には新鮮に映るのではないだろうか。
監督は「ナイトウォッチ」「モルグ」のオーレ・ボールネダル。
仕事ばかりで家庭を顧みないことに愛想を尽かされ、独り身になってしまったクライド。
愛する二人の娘と会えるのは今では週末のみになってしまった。
ある週末、娘を連れて近所の蚤の市に立ち寄ると、
次女のエミリーがアンティークの木箱に一目惚れ。
クライドに買ってもらい喜んで持ち帰るが、その箱を手に入れた日を境に
エミリーの様子が徐々におかしくなってゆくのだった。
真偽は不明だが、実話を題材にしていると言われている
本作の下敷きになっているのは、やはり「エクソシスト」だろう。
少女が何者かに取り憑かれ、家族が除霊を試みるというストーリーは
「エクソシスト」以降のオカルトでは定番中の定番。
「パラノーマル・アクティビティ」のヒットをきっかけに
このところ「何か」の存在を明らかにしないまま
POV視点だけを武器にして緊張感を出そうとする(でも失敗している)作品が
山ほど作られたきたため、久しぶりに登場したオカルトの王道を楽しませていただいた。
本作の見どころは、「エクソシスト」のリンダ・ブレア、
「ポルターガイスト」のヘザー・オルークに匹敵するほどの
怪演を見せてくれるナターシャ・カリス。
オリジナル版「死霊のはらわた」の特徴でもある煮魚の瞳を再現したのを皮切りに、
取り憑いた少女の全てを喰らい尽くそうとする悪魔憑きのエミリーと
必死で抵抗する幼気なエミリーを見事に演じ分けている。
劇中で彼女が何度も流す涙は、異物感からくる単純な吐き気とは別に
胎内に異形のものが潜んでいることへの畏怖や
それに取り込まれつつある我が身を悲観してのものにも見える。
鋭い目つきで父親を睨みつけたまま涙を流すエミリーの表情から
ふたつの人格が激しく争っている様子がちゃんとうかがえるのが凄い。
本作では除霊を行うのがユダヤ教の若いラビ(司祭)になっている。
これは本当にヤバそうだと高名な司祭が尻尾をまいて逃げ出す一方で、
信仰心に迷いのない、向こう見ずな若者だけが協力するというのがやけにリアル。
発見から除霊まで全てのプロセスを父親が引っ張っており
母親はというと、亭主を放り出してすぐに別の男を住まわせ
娘の異変に耳も貸さない、いわゆるダメ母なところも面白い。
夫婦が手を取り合って問題解決に乗り出すのではなく
夫婦間の不和が事態を深刻化させているのである。
娘の除霊を通して家庭円満、夫婦の仲直りまでさせてしまおうという寸法だ。
予告編でかなりの数の美味しいシーンがネタバレがされているが
本編にはまだまだたくさんの見どころがある。
指先だけがチラチラと登場していたアビズーの全貌が見えたとき
ちょっとだけ笑ってしまったのは秘密。
ナターシャ・カリスがヘザー・オルークの二の舞にならないことを祈りつつ
オカルト好きにはかなりお勧め。
映画「ポゼッション」は現在公開中。
おっと、重要なことを忘れていた。
以前に「死霊のはらわた」とのコラボと間違えてお伝えしてしまっていたのだが
楳図かずおの手掛けるこのポスターは、正しくは「ポゼッション」とのコラボ。
劇場に貼り出されたポスターを見てどうしても欲しくなってしまい
グッズ売り場に置いてないのかと問い合わせたが、残念ながら答えはNO。
手に入れられた関係者が羨ましいぞ。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
タイトル:ポゼッション
配給:ブロードメディア・スタジオ
公開日:2013年5月25日
監督:オーレ・ボールネダル
出演者:ナターシャ・カリス、ジェフリー・ディーン・モーガン、他
公式サイト:http://grandmaster.gaga.ne.jp
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

発売中■Blu-ray:「エクソシスト DC版 & オリジナル劇場版」
発売中■Blu-ray:「オーメン」
発売中■Blu-ray:「オーメン2 / ダミアン」
発売中■Blu-ray:「ポルターガイスト」
発売中■Blu-ray:「ポルターガイスト2」
発売中■Blu-ray:「ポルターガイスト3 / 少女の霊に捧ぐ…」
心霊や怪奇現象までを含めるのか、それとも悪魔憑きだけなのか。
オカルトの線引きには諸説あるが、あまり対象を拡げ過ぎると
「ローズマリーの赤ちゃん」「アザーズ」「ミラーズ」「永遠のこどもたち」なども
入ってきてしまうので、今回は悪魔憑きに限定して新旧の関連作を紹介。
「ポルターガイスト」は作品そのものもそうだが
作品を取り巻く様々なエピソード(出演者が次々と変死)がオカルトそのもの。

発売中■Blu-ray:「エミリー・ローズ」
映画「エミリー・ローズ」が新しいのは
「エクソシスト」のような悪魔祓いがメインではなく法廷サスペンスであるところ。
「悪魔に取り憑かれた少女」エミリーの不可解な死は、
現行の法律で裁けるものなのか、という非常に興味深い題材を
「ヘル・レイザー」のスコット・デリクソンが映画化。
ホラーテイストを強調した演出はあまりされておらず、
エミリーとムーア神父との心の交流を丁寧に描いている。
こちらも実話がベースになっているらしい。
ラストまで実話通りの展開だとすれば、
陪審員達もいかした結論を導き出したものだと感心する。
エミリーを演じたジェニファー・カーペンターの
本物の悪魔憑きさながらな鬼気迫る演技は「一度病院で診てもらえ」と思ってしまうほど。

発売中■Blu-ray:「リーピング」
「リーピング」はヒラリー・スワンク主演のオカルト・スリラー。
監督は「エルム街の悪夢5」のスティーヴン・ホプキンス。
製作は「蝋人形の館」「Vフォー・ヴェンデッタ」のジョエル・シルヴァーに
「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のロバート・ゼメキス、
脚本は「蝋人形の館」のケイリー・W・ヘイズと、
私好みに仕上がっているのは観る前から分かっていたような布陣。
物語の重要な鍵を握る「イナゴ少女」ことローレンを演じるアンナソフィア・ロブは
「チャーリーとチョコレート工場」でいつもチューインガムを膨らませていた
バイオレットを演じていた彼女である。
ある事件で家族を失ったことをきっかけに信仰心を失くし、
不可解な事件を科学的に解明する仕事に就いた主人公(ヒラリー・スワンク)が、
ヘイブンという田舎町で頻発する怪事件の真相に迫る。
旧約聖書の「10の災い」をベースにした、
オカルト物としては割と良くあるタイプなのだが、
家族愛や信仰心を絡めた物語性の高さと特撮の上手さで
同系統の作品の中では頭ひとつ抜けた出来に仕上がっている。

発売中■Blu-ray+DVD:「ザ・ライト エクソシストの真実」
アンソニー・ホプキンス出演のエクソシスト物。
なんとこれも実話がベース。
リアリティを重視しているためか、除霊の儀式は会話以上に
何も特別なことをしない、非常に淡々としたものになっている。
講義の内容が意外と現代的で、スライドの写真と教師の服装が違えば
極普通の大学と何ら変わることがないのは新鮮であった。
「十字と神の力を以て悪魔を追い祓うのです」などとは言わず、
悪魔憑きに精神医学の視点から切り込んで
科学的・論理的に解明しようとするエクソシスト講義が興味深い。
全体的にはバリエーションの域を出ていない佳作。

発売中■DVD:「ラスト・エクソシズム スペシャル・エディション」
悪魔払いとPOVをミックスした変化球が「ラスト・エクソシズム」。
フェイク・ドキュメンタリーとしての体裁は
「信じるか信じないかは・・・」という都市伝説系のオチで
「パラノーマル」よりも「THE 4TH KIND フォース・カインド 」に近い。
幼い頃から悪魔払いを続けてきた牧師が、ある日それまでの生活に見切りをつけて
やらせだったことを告白。面白がって取材に来たTV番組のスタッフと共に
詐欺の手口を実演して見せる牧師だったが、
適当に選んだ依頼者は、実は本当の悪魔憑きで・・・というお話。
多くのエクソシストを育成しているバチカンに対する考え方が、
すぐ上で述べた「サ・ライト エクソシストの真実」と異なるのも面白い。
「パラノーマル」や「フォスカインド」がお好きならそこそこお勧め。