▼サービス2割増、面白さ2割減。映画「探偵はBARにいる 2」
ダークホース的なヒットを記録した「探偵はBARにいる」の続編が先週末より公開中。
東直己の人気ハードボイルド小説「ススキノ探偵シリーズ」から
今度は「探偵はひとりぼっち」が選ばれた。
主演の大泉洋、相方の松田龍平コンビはもちろん、
田口トモロヲ、松重豊、波岡一喜、安藤玉恵といった面々も続投し
2作目にして既に長寿シリーズのような安定感すら漂う。
ヒロイン役には尾野真千子、物語の鍵を握る人物に渡部篤郎、ガレッジセールのゴリ。
監督は前作に引き続き「相棒」「臨場」シリーズの橋本一。
ところどころ急ごしらえな印象を拭い切れない本作の仕上がりを見るに
やはりこの作品は最初からシリーズ化を見据えてはいなかったのかも知れない。
タナボタ的なヒットに気を良くしてシナリオを練り込む時間が足りなかったか。
ストーリーは、ススキノのニューハーフバーで人気者のマサコちゃん(ゴリ)が
何者かに殺される事件が起こる。
店の常連だった探偵(大泉)は相棒の高田(松田)を誘って捜査に乗り出すが
捜査線上に熱狂的な支持者を持つ政治家・橡脇(渡部)が浮かび上がると
事件は単なる通り魔殺人では済まない様相を呈していき、やがて・・・といったところ。
俳優陣は皆続編を喜んでいるようで、作品全体のチームワークは確実に良くなっている。
テレビドラマでは実現不可能なバイオレンス描写や
ちょっとしつこいぐらいに派手なアクションシーンは
本作が「相棒」や「臨場」といった「テレビドラマ発の映画」とは違うのだという
製作者なりの宣言でもあるのだろう。
安藤玉恵が演じる喫茶店のウエイストレス・峰子のセックスアピールも
前作からさらに悪ノリ度を増し、もうほとんど逆セクハラである。
ガレッジセールのゴリが演じるマサコちゃんは
ススキノでひっそりと暮らすオカマちゃん。
そんな彼女がひょんなことからマジックショーの全国大会で優勝し
大金星を上げて帰郷した翌々日に何者かに殺されてしまう。
事件の捜査がなかなか進展しないのは
バックにカリスマ政治家のスキャンダルが潜んでいるからだけではない。
故郷を捨てた者、過去と決別して別の人生を歩んでいる
ニューハーフならではの人間関係が証言を集まりにくくしているのだ。
マサコちゃんがふと口にした「私が有名になると迷惑をかける人がいるもの」は
世間では通常、絶対的に肯定される「自分らしく生きる」ことを
自分の意思だけでは決められない、マイノリティならではの生き辛さを
端的に言い表しているように思えた。
ところが、中盤までマサコちゃんと謎のヴァイオリニスト・河島弓子(尾野真千子)、
原発反対を掲げる政治家・橡脇孝一郎(渡部篤郎)の三人を中心にして
周り続けた物語が、後半になって突然ひとりの乱入者によって掻き乱される。
実際に世の中で起こっている事件も蓋を開けてみればそんなものなのかも知れないが
映画としてそれをやってしまうと、どんでん返しというより単なる反則にしか見えず、
ひっくり返されたちゃぶ台を片付ける間もないまま
何となく良い話に着地して、そのままお茶を濁されてしまった。
原作は未読なのだが、本当にこんな唐突な展開なのだろうか。
だとすれば、ミステリーとしてはややお粗末と言わざるを得ない。
前作では文字通りの凸凹コンビであった大泉&松田も
今回は高田がやたらと素直な上に協力的で凸凹感が薄まってしまった。
これでは高田は助手ではなく、腕っ節の強いただの用心棒だろう。
サービスは2割増されていながら、見終えてみると面白さは2割減。
足りない分は、ほぼ全て脚本に原因があると見た。
もし3作目があるなら(私は断固希望)、脚本家をいっそ変えてみてはどうか。
もうひとつ付け加えるなら、このシリーズを「ドラマの延長」で終わらせないためにも
ヒロイン役にはもっと「THE・映画女優」を抜擢した方がいい。
ドラマで見るには悪い女優ではないが、尾野真千子では弱過ぎる。
前作のエンドロールはカルメン・マキの「時計をとめて」、
今作のエンドロールはムーンライダーズの「スカンピン」だった。
曲選びに関してはかなり私と好みが似ていて嬉しい。
3作目(しつこいが私は希望)では金子マリ、桑名晴子、吉田美奈子あたりを頼む。
映画「探偵はBARにいる 2」は現在公開中。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
タイトル:探偵はBARにいる 2
配給:東映
公開日:2013年5月12日
監督:橋本一
出演者:大泉洋、松田龍平、他
公式サイト:http://www.tantei-bar.com
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

発売中■BOOK:「大泉エッセイ 僕が綴った16年」
現在大ヒット中の大泉洋の初エッセイ。
Kindle版かiOS版を出して欲しいのだが、今のところ紙のみ。

発売中■Blu-ray:「探偵はBARにいる ボーナスパック」
前作は東直己の「ススキノ探偵シリーズ」の中でも
特に人気の高い「バーにかかってきた電話」がベース。
古き良き刑事ドラマの匂いを残しつつ、テンポの良さと笑いのセンスは現代向け。
女に弱く、正義感は強く、どこか抜けていているが
決める時はバシッと決めるという、まるで実写版のルパン三世のような
大泉洋がどんぴしゃのハマり役で、松田龍平とのコンビも既に何作目かのような空気。
ミステリーとしての構成もしっかりしているし、ハードボイルドを意識したカット割や
ジャジーなBGMが、舞台となる札幌の街並を際立たせている。
情報を横流ししてくれる田口トモロヲや、気の良いヤクザな松重豊など
脇役も皆魅力的で、口コミによる大ヒット&シリーズ化決定も納得。
カルメン・マキの「時計をとめて」は何度聴いても泣ける名曲なので
できればずっと使い続けて欲しかったが、残念ながら今回限りのようだ。
発売中のBlu-ray「探偵はここにいる!ボーナスパック」は、
本編1枚(Blu-ray)に加えて「大泉洋in『探偵はBARにいる』」
キャスト&スタッフインタビューなどを収録した
特典ディスク(DVD)2枚付きの合計3枚組。
「紙マッチ型ポストイット」が特製アウターケースに封入されている。

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