同じ目線で生きる。映画「君と歩く世界」 | 忍之閻魔帳

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▼同じ目線で生きる。映画「君と歩く世界」

本家アカデミー賞では見事なぐらいにスルーされてしまったが、
カンヌ国際映画祭でパルムドール候補に選出されたのを始め
第18回放送映画批評家協会賞、第70回ゴールデングローブ賞、英国アカデミー賞でも
主演女優賞(マリオン・コティヤール)や外国映画賞にノミネートされるなど
各国の映画賞で話題を集めたヒューマンドラマが4月6日より日本でも公開中。
監督は「真夜中のピアニスト」のジャック・オーディアール。
主演は「エディット・ピアフ」「ミッドナイト・イン・パリ」のマリオン・コティヤール。
共演は本作でセザール賞の新人賞を獲得したマティアス・スーナールツ。



一般層に売り込むためには、事故によって両脚を失った女性を
屈強で心優しい男が支えながら生きてゆく感動モノ、に仕立てた方が
効果的だというのは分かるのだが、スチール写真や予告編にピンと来て
劇場に足を運んだ観客の何割かは「騙された」と思うのではなかろうか。

「君と歩く世界」はタイトルから想像されるような甘口の恋愛ドラマではない。
「最強のふたり」的な友情劇でもなければ「ソウルサーファー」的な感動ドラマでもない。
一番近いのは「世界にひとつのプレイブック」だが、
あれほど微笑ましく見ていられるような物語でもない。
社会から爪弾きにされた子持ちのバツイチ男と
男の気を引くことぐらいしか興味のない、鼻持ちならない高慢女。
悪い意味でお似合いな二人が、付かず離れずの関係を続けることで
セックスフレンド以上の存在になってゆく過程を描いている。
観客が共感を抱きにくい(近くに居てもらっては困る)主人公でありながら
その生き様に惹き付けられる作品という意味では
「レスラー」「ザ・ファイター」「BIUTIFUL ビューティフル」あたりに近い。
どちらかと言えばアリ(男)が主人公の映画である。

5歳の息子を持つアリ(マティアス・スーナールツ)は
粗暴な態度が原因で妻と別れ、姉と義兄の住む家で居候中の身。
みつけた仕事はナイトクラブの用心棒。
それに加えて、非合法の試合に出ては殴り合いで賞金を得る生活を送っている。
クラブで出会ったステファニー(マリオン・コティヤール)は
昼はマリンランドでシャチの調教師として働きながら
夜はストリッパー紛いの服を着てクラブをうろつく毎日。
セックスする相手には困らないものの、心を許し合える存在がいないという点で
共通している二人は、アリの不用意な発言で出会い頭から険悪ムードが漂う。
しかし、マリンランドで事故が発生し、ステファニーが両脚を失ってからは
過剰に気遣うことも、役にも立たない慰めも言わないアリの態度が
かえってステファニーの心を軽くしてくれることに気付いてゆく。

両脚を失うほどのショッキングな出来事があれば
絶望や自暴自棄から立ち直り、二人仲良く笑い合うまでを作品にしそうなものだが
本作では序盤の数十分であっさりその課題をクリアしてしまう。
事故そのものは、「気付き」の順番がステファニーが先であったことのきっかけでしかない。
小さなことに動じないアリの大らかさは無神経さとも紙一重であり
両脚のないステファニーを周囲の目も気にせずおぶったかと思えば
彼女を連れて出かけたクラブで堂々と他の女をお持ち帰りしてしまう。
悪気のない無神経は余計に人を苛立たせるもの。
アリに対して「誠意がない」と咎めながら、複数の男の間を渡り歩いてきた
我が身の過去を振り返ると、振り上げた拳をゆっくりと下ろすしかない。
「ope?」(今からセックスしないか)とメッセージを送り
アリからの返事をじっと待つしかないのだ。

だが、映画の後半で二人のバランスは揺らぎ始める。
負け知らずの試合で初めて対戦相手に恐怖心を抱き、
最愛の息子にもある悲劇が襲いかかる。
窮地に立たされてようやく、アリは支えてくれる存在の大切さを知る。
何を今さらと思う人もいるだろう。
そこまでの事態に陥る前に気付けなかったのかと憤る人もたくさんいるに違いない。
しかし、壁にぶつかってようやく目が覚める、どうしようもない人間もこの世にはいる。
どちらかが引っ張り上げるのではなく、支え合うこと。
同じ目線で生きることが出来れば、そこに必ず光は射す。

映画「君と歩く世界」は現在公開中。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
  タイトル:君と歩く世界
    配給:ブロードメディア・スタジオ
   公開日:2013年4月6日
    監督:ジャック・オーディアール
   出演者:マティアス・スーナールツ、マリオン・コティヤール、他
 公式サイト:http://www.kimito-aruku-sekai.com/
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


発売中■BOOK:「君と歩く世界(集英社文庫)」

原作本。



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発売中■CD:「For Emma, Forever Ago / ボン・イヴェール」(輸入盤)
配信中■iTMS:「For Emma, Forever Ago / ボン・イヴェール」

ボン・イヴェールの音楽がどれも秀逸。
特にステファニーが再会したシャチとゆっくり心を通い合わせるシーンが素晴らしい。
アデルやブルーノ・マーズに比べて知名度が低いが
第54回グラミー賞では主要3部門を含む全4部門にノミネートされ
最優秀新人賞と最優秀オルタナティヴミュージック・アルバム賞を獲得した注目株。



07月02日発売■Blu-ray:「レスラー」
発売中■Blu-ray:「ザ・ファイター」
発売中■DVD:「BIUTIFUL ビューティフル」

この辺りがお好きならかなりお勧め。



発売中■Blu-ray:「最強のふたり」
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