▼子どもと観たい良質な動物モノ。映画「ひまわりと子犬の7日間」
手軽に集客できる動物モノが相変わらず乱立している。
テレビ番組で酷使した挙げ句に殺しておいて
追悼と称してまだ本や映画で稼ごうとする人間は万死に値すると思っている
私からすれば不愉快極まりない話である。
今回紹介する「ひまわりと子犬の7日間」はお手軽な動物映画に一石を投じる良作。
「武士の一分」「母べえ」「おとうと」「東京家族」と
ここ最近の山田洋次監督作品で脚本を手掛けてきた平松恵美子が
初監督作品として目をつけたのが、宮崎の保健所で実際に起きたエピソードを
書籍化した「奇跡の母子犬」。
保健所に収容された子連れの母犬と職員との心温まる交流を描いている。
主演は堺雅人、共演は中谷美紀、でんでん、吉行和子、小林稔侍など。
オードリーの若林正恭が映画初出演していることも話題のひとつ。
平松監督は、今からちょうど10年前に妻夫木聡主演・松岡錠司監督の
映画「さよなら、クロ」でも脚本を担当していた。
「クイール」も「犬と私の10の約束」も「子ぎつねヘレン」も
ピクりともしなかった私が「これは」と思ったのが「さよなら、クロ」だった。
大半の動物映画が「可愛い」と「可哀想」を主原料にして
観客から手軽に涙を搾り取ろうとするのに対し、「さよなら、クロ」は
動物と人間との距離を見極めつつ、動物と人がどう共存していくかに
焦点が絞られていたからだ。
本作のアプローチも同じで、保健所に収容された野犬と職員の交流を通じて
人と犬、父と子、母と子の絆を上手く描き出している。
人間に捨てられ、すっかり荒んでしまった母犬と堺雅人との関係が
殺処分を巡る関係者の心情や、大好きな父親が動物を殺していると知った娘の心境など
いくつもの難題とぶつかってゆくことで少しずつ距離を縮めてゆく。
物言わぬ動物だからこそ、そこに嘘や誇張があっては説得力が失われるということを
平松監督は知っているのだと思う。
だから、この映画の登場人物は皆特別な言葉を使わない。
どこにでもありそうな日常会話を使って、丁寧に物語を組み立ててゆく。
本作のもうひとつの大きなテーマは「殺処分」。
メディア露出の際にも何度となくこの言葉が使われているので
配給側からすれば「なるべく多くの動物を殺処分から救いましょう」が
メインテーマに据えられているのかも知れない。
大人でも賛否ある難しい問題を、どう子どもに考えてもらうか。
この映画が上手いのは、軽く流してしまわない程度にシリアスに、
トラウマにならない程度にソフトな語り口で進行していることである。
年間何万匹が処分されていたとしても、落ち込むほど深刻な問題を
目の前に突きつけたところで子どもは萎縮してしまう。
それはドキュメンタリーが請け負えば良いことだ。
「家族向けの作品」として劇場公開される本作が伝えるメッセージは
「ちょっと考えてみてよ」まででちょうどいい。
観賞後は側にいるペットを抱きしめたくなること請け合いの1本。
世間はまもなく春休み。
家族一緒にご覧いただきたい。
映画「ひまわりと子犬の7日間」は16日より公開。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
タイトル:ひまわりと子犬の7日間
配給:松竹
公開日:2013年3月16日
監督:平松恵美子
出演者:堺雅人、中谷美紀、でんでん、他
公式サイト:http://www.himawari-koinu.jp/
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

発売中■DVD:「さよなら、クロ 世界一幸せな犬の物語」
平松監督が脚本を担当した2003年作品。
1960年代に長野県で実際に起こったエピソードの映画化。
ある日学校に住み着いた野犬が職員や生徒達から可愛がられて
幸福な12年を過ごしたお話。
主演は当時まだ売り出し中だった妻夫木聡。
共演は伊藤歩、新井浩文、金井勇太、余貴美子、りりぃ、渡辺美佐子、井川比佐志。
監督は「歓喜の歌」「深夜食堂」の松岡錠司。
松岡監督は名作の多い大好きな監督なのだが、「アカシアの道」はDVD未発売、
「バタアシ金魚」「さよなら、クロ」「歓喜の歌」もBlu-ray化がされないなど
映像化においては納得がいかないことが多い。
要するに「出してくれ」という話である。

発売中■DVD:「犬と猫と人間と」
DVD化の際にも紹介した必見のドキュメンタリー映画。
身寄りのない猫を引き取って面倒をみてきた稲場葉子氏が、
自分の居なくなった後の世界で捨て猫が1匹でも減るようにと
飯田基晴氏監督に依頼したことがきっかけで生まれた作品。
平均で2世帯に1世帯がペットを飼い、総数は2600万匹という日本は、
ペット産業としては世界有数の先進国だが、ペットを取り巻く
環境整備という点については、イギリスやドイツに比べて遥かに遅れている。
例えば、日本で殺処分されるペットの数は年間30万匹にも上るが、
1200万匹のペットがいるドイツでは、行政による殺処分は一切行われず、
捨てられた犬猫は、民間の愛護団体が面倒を見ている。
「生後2ヶ月を超えると子犬は売り辛くなる。生物(なまもの)ですからね」と
信じられない言葉を吐く店員がバイト感覚で働いている日本は
ブリーダーの意識も飼い主の意識も、諸外国に比べてとんでもなく軽いことを
思い知らされる1本。
ペットを愛する全ての人に、一度は観ておいて欲しい作品。

発売中■BOOK:「殺処分ゼロ―先駆者・熊本市動物愛護センターの軌跡」
発売中■BOOK:「犬たちをおくる日―この命、灰になるために生まれてきたんじゃない」
発売中■BOOK:「犬を殺すのは誰か ペット流通の闇」
発売中■BOOK:「犬と、いのち」


【Amazon特集】大人も魅せられる図鑑
【Amazon特集】ホワイトデーギフト