
(C)男女逆転「大奥」製作委員会
よしながふみの人気コミック「大奥」が遂に実写映画化された。
2006年には「文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞」を、
2009年には「手塚治虫文化賞マンガ大賞」を受賞した同作の最大の魅力は、
一見、乙女ゲー愛好家を狙ったような設定でありながら、
その実は、細部にまでこだわって構築された世界の上で展開する
壮大な歴史改変SFである、という点だ。
正徳録年、関東のとある田舎の村で奇病が発生した。
その病は「赤面疱瘡(あかづらほうそう)」といい、発症すれば高い確率で死に至る。
若い男性にしかかからない特異性を持った「赤面疱瘡」は瞬く間に各地に広がり、
80年余りが経過した頃、男の数は女の1/4にまで減少していた。
力仕事を始めとしたあらゆる労働は女が担当し、
男は子種を持つ宝として大切に育てられていた。
ある日、貧乏旗本の息子である水野祐之進は、
困窮する家計の口減らしと、身分違いの娘・お信への恋心を断ち切るために
美男ばかりが3000人集っていると言われる「大奥」への奉公を志願した。
水野が「大奥」に入って間もなく、7代将軍家継は病死し、
8代将軍には、紀州より徳川吉宗が迎えられた。
女性でありながら男勝り、華美な装飾を嫌う吉宗は
浪費を美徳とする「大奥」のやり方に反発し、大鉈を振るおうとしていた。
主人公・水野には「硫黄島からの手紙」「流星の絆」の二宮和也。
吉宗には「食堂かたつむり」「少林少女」の柴咲コウ。
お信には「誰かが私にキスをした 」の堀北真希、
吉宗の側に仕える加納久通に「不毛地帯」の和久井映見、
大奥総取締役の藤波には「ハンチョウ」の佐々木蔵之介、
水野の教育役を務める杉下には「なくもんか」の阿部サダヲ、
上昇志向の強い策略家、松島には「のだめカンタービレ 最終楽章」の玉木宏、
剣術の達人であり、松島と関係を持つ鶴岡には「GM 踊れドクター」の大倉忠義、
水野の裃を担当する垣添には、「BECK」「パラノーマル・アクティビティ 第2章」の中村蒼。
監督は「ケイゾク」「池袋ウエストゲートパーク」「木更津キャッツアイ」
「タイガー&ドラゴン」「歌姫」「特急田中3号」「うぬぼれ刑事」など
ジャニーズ出演のTBSドラマを多数手掛けて来た金子文紀。
映画は「木更津キャッツアイ ワールドシリーズ」に続き2作目。

(C)男女逆転「大奥」製作委員会
小説なり映画なりゲームなり、SF作品の善し悪しは
土台がどれだけしっかり作られているかにかかっている。
その点、この「大奥」は、男が減ってしまった原因や、その後の社会情勢の変化まで
非常に細かく設定されているため、「男女逆転の世の中」という奇抜な世界を
すんなりと受け入れることが出来る。
子種を持つ男を金で女が買う時代、男と女の立場が逆転しても
そこで繰り広げられる争い事は何も変わらない。
成り上がるために上司と体の関係を持ち、趣味として年下の男も囲う松島のような男も、
温厚そうな顔の下で何を考えているか分からない藤波のような男も、
現在の世の中にもゴロゴロいるタイプである。
彼等の上に立つのがドライで男勝りな女上司という構図も含めて、
「大奥」の世界は現代社会に良く似ている。
以下、よしながふみの原作を読んでいる立場から言わせていただくと、
全体的に荒っぽい(男っぽい)演出が目立っていたように思う。
「木更津キャッツアイ」を始め、やんちゃな男達を主人公にした作品で
ヒットを生み出してきた金子監督なので致し方ないのかも知れないが、
よしながふみの描く繊細な世界観とは合っていない。
フジテレビ版の「大奥」のような、
コテコテ・ドロドロを売りにした作品だと勘違いされていたのではないか。
妙にコミカルだったり勇まし過ぎたりする音楽も含め、
絵面も芝居も繊細なシーンが、過剰演出で台無しになっていることが
多々見受けられたのは残念。シリーズ化も視野に入れた企画なのであれば、
次回作では監督の変更をお願いしたい。
キャストでは、主人公の水野役が童顔で小柄な二宮というのが最大の心配事だったのだが、
冒頭で台詞をひと言吐いただけで、事前に抱いていた違和感はあっさり消えた。
総取締役の佐々木蔵之介と杉下役の阿部サダヲも、二宮同様、芝居でカバー。
見た目も芝居も文句無しだったのが、加納役の和久井映見と、垣添役の中村蒼。
この二人は、本当に原作から抜け出てきたかのようで驚いた。
全体的には上手くまとまっているので、アニメ・ゲーム好きな女性ならばお勧め。
ただし、いわゆる腐女子・貴腐人な方々は、
そちら方面のシーンに過度の期待はせぬように。
「男女逆転『大奥』」は、明日10月1日より公開。
■COMIC:「大奥 第1巻」
■COMIC:「大奥 第2巻」
■COMIC:「大奥 第3巻」
■COMIC:「大奥 第4巻」
■COMIC:「大奥 第5巻」
■COMIC:「大奥 第6巻」
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タイトル:男女逆転 大奥
配給:アスミック・エース/松竹
公開日:2010年10月1日
監督:金子文紀
声の出演:二宮和也、柴咲コウ、玉木宏、中村蒼、他
公式サイト:http://ohoku.jp/
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