超ネタバレ紹介。映画「仏陀再誕」 | 忍之閻魔帳

忍之閻魔帳

ゲームと映画が好きなジジィの雑記帳(不定期)

★今回の記事の携帯向けはこちら。



▼超ネタバレ紹介。映画「仏陀再誕」

仏陀再誕
(C)2009 IRH Press

私的には故・水野晴郎監督の「シベリア超特急」シリーズと並ぶ
珍シリーズだと思っている、某宗教団体製作の新作アニメが公開中。
このシリーズを観るのはこれで3作目なのだが、
嘘や誇張抜きに、これまでの作品群から比べると一番まともである。
ただ映画としてまともになったことが、本作が宗教団体のPR映画だと考えると
問題の根を深くしている部分にもなっており、
これまでのように能天気に「バカバカしくて面白かった!」とは言えない作品にもなっている。

【注意】以下は完全ネタバレでストーリーを紹介。



私の名前は天河小夜子。
ジャーナリストを目指して女子校に通う平凡な高校生です。
ある日、学校で教えられる仏陀についての授業がとても退屈だったので
居眠りをしていたのですが、不勉強な私に仏陀がバチをお与えになったのか
電車に轢かれてしまうという不吉な夢を見てしまいました。
最悪な寝覚めで気持ちが悪くなったので、保健室に行って改めて寝直そうしたら
今度はそこで金縛りにあい、怪しい影を見てしまいました。
また、仲良くしていた同じ部活の友達の心の声が聞こえるようにもなりました。
私に彼氏がいることを心の底では妬んでいたらしく
「フン、何よ調子に乗っちゃって!」みたいなことを鬼の形相で語りかける影を見て、
私は人には裏表があるということを改めて思い知らされたのです。

すっかり疲れ切った下校途中、地下鉄のホームで電車を待っていると
ジャーナリストの金本さんが「助けて!」と言いながら
私を線路に引きずり込もうとします。
そして目の前には電車のライトが・・・もうダメ!
そう思った瞬間、私はどこかの法廷の傍聴席にいました。
被告人は金本さんで、何かの罪で裁かれているようです。
金本さんはある汚職事件を追っていたのですが、ガセネタを掴まされたために
自殺してしまったのでした。
この裁判は、自殺した金本さんを天国行きにするか、
地獄行きにするかを決定する裁判だったのです。
「死の世界なんてない!」「俺は宗教なんて胡散臭いものは信じない!」
被告人席で声を荒げて発言する金本さんを、裁判官達はヤレヤレといった表情で見ています。
「最近の人は困ったものですね。せっかく仏陀が再誕されている時代だというのに」
哀れみの視線で金本さんを見つめる裁判官はとても温厚そうだったので
てっきり温情判決が下されるものと思っていたのですが、

判決は地獄行きでした。

判決が下された直後に金本さんの背後に白い渦のようなものが現れ、
金本さんは悲鳴を挙げながら吸い込まれてしまいました。
さようなら、金本さん。。。

現実世界に引き戻された私は、今まさに電車に轢かれる直前でした。
しかし、私の手をぐっと掴んで助けてくれた男性がいました。
私の彼、海原勇気君です。
些細な喧嘩で別れ話をしていた勇気君が、何故都合良くあの場所に現れたのか
近所のカフェで聞いてみたのですが、まだ私に未練があったらしく、
登下校の途中もずっと私のことを尾けていたそうです。
勇気君の目には、私が電車に飛び込もうとしていたようにしか
見えていなかったようなので、金本さんの霊に引っ張られたのだという話をしてみました。
すると勇気君は、何の疑問もなく「ああ、それはね」と言いながら
紙とペンを持ち、霊界の仕組みを説明してくれたのです。
「何かあったら連絡しろ」と言う勇気君ですが
別れ話をしている彼に素直に頼れない私は「べ、べつに連絡なんてしないからね!」と
ツンデレな返事を投げつけておきました。

仏陀再誕
(C)2009 IRH Press
*荒井東作さん

帰宅してお風呂から上がると、
テレビで「秋葉原にUFO出現!!」という緊急ニュースをやっています。
番組には、荒井東作なる男がゲストとして招かれていました。
荒井東作は「操念会」という団体の代表であり、自らを超能力者であると公言する男なのですが
見た目が怪し過ぎてどうにも信用なりません。
その時、都合良く生放送中に地震が発生し、司会者の男性の頭上に照明が落下してきました。

「ハァーーーーーー、フンガーーーーーーー!」

荒井が怪しいポーズで念を送ると、照明は見事に空中で止まり
司会者は間一髪で命を助けられました。
さらなる念力で照明をスタジオ端まで吹き飛ばした後、荒井は唐突に語り始めました。
「私は仏陀の生まれ変わりです」

将来ジャーナリストを目指し、新聞部で活躍している私としては
こんな面白キャラの荒井を取材しない手はありません。
訪れた「操念会」の施設内では荒井氏が放言しまくりの大集会が開かれていたのですが
どこから聞きつけたのか、勇気君がやって来て私を施設から連れ出そうとしました。
すると、教団のSP達が私達を捉えようとやって来ました。
絶体絶命の危機、どうするの勇気君!?
その時彼は、SP達に向かってこう言い放ったのです。

「外にはTSIのメンバーが待ってるんだぜ
 それでも俺等に手を出すなら、それなりに覚悟しといた方がいいんだぜ」


TSI?私には何のことか分かりませんでしたが
その言葉を聞いた途端に、SP達はすごすごと引き上げていきました。
しかし、このことがきっかけで私はTSIの関係者と思われてしまい、
荒井率いる「操念会」から敵視されることになってしまったのです。

アタックはすぐに開始されました。
私の弟、瞬太が原因不明の奇病に襲われたのです。
私の父は一応名医で通っているのですが、そんな父ですら
原因も治療法も見つけられず、このままでは命の危険も。
そんな私達の前に現れたのが、TSIの代表である空野太陽先生でした。
荒井とは正反対のイケメンで、D3あたりの女性向けゲームなら人気を得そうなルックスです。
瞬太の病室に入ってくるやいなや、太陽先生の全身が神々しく光り始め
瞬太の病気はあっさり完治してしまいました。
「こ、こんな科学で解明できないことが起こるとは」
名医で知られるお父さんも形無しです。

瞬太の命を救ってくれたのは太陽先生ですが、
先生を連れてきてくれたのは勇気君です。
電車の件、「操念会」からの脱出の件、そして瞬太の件。
彼のために救われたことも多く、そろそろ仲直りするべきなのかもと思った私は
勇気君と一緒にお祭りに行く計画を立てました。
浴衣を来て髪を結い、病気の治った瞬太も連れて出掛けます。
楽しい夏祭りの会場で、私達の仲も少しずつ修復されていくような気がしました。

その時、大量のUFOが襲来し
平和な祭り会場は一転してパニックに陥ります。
UFOは地上めがけて次々にビームを発射、
祭りの屋台は跡形も無く破壊され、逃げ惑う人々で大混乱となるのですが
私はと言えば、なぜかぼうっと夜空を見上げていました。
夜空には蓮の葉が舞っており、私が着ている浴衣にも蓮の柄が施してあったからです。
私が蓮の葉に手を伸ばしてみると、みるみるうちに蓮の数が増えていき
風にのってUFOを攻撃し始めました。
指揮者よろしく夜空に向かって手を振りまくると次々にUFOが破壊され
ついに全てのUFOを撃退してしまいました。


私の行動は現場を目撃した人達からマスコミに伝わり
「浴衣を着た謎の少女が世界を救う!」と大きな話題になりました。
しばらくして、すっかり仲直りした勇気君に誘われて
瞬太を救って下さった空野太陽先生の講演を聴きに行くことに。
ここからしばらく太陽先生の独演会が続くのですが、すごく長いので割愛しますね。

講演が終わり、勇気君の車で帰っていると、ふと勇気君が語りかけました。
彼「びっくりしたかい、僕が宗教なんかやってて」
私「ううん、そんなことない。
  最初は少しびっくりしたけど、でも本当のことを言ってくれて嬉しかった」
冷えていた私達の関係は、不思議な出来事とTSIのおかげで修復され
むしろより絆が深まったような気がしました。

すっかり平和ムードになってきたところに
「操念会」の荒井がまた悪事を仕掛けてきました。
何をどうやったのか全てのテレビ局をジャックし、
日本全国に一斉放送で
「今から10分以内に200mの津波が日本を襲し、日本は沈没する!
 助かりたければ私を仏陀の生まれ変わりと信じろ!さすれば救われる!」
などと言うのです。これはさすがに無理だろうと思っていたのですが
あっという間に津波は日本に押し寄せ、街が次々に高波に呑み込まれてゆきます。
恐怖に心を支配されてしまった人々は荒井を仏陀だと言い始めるのですが
絶対にそんなはずはありません。

あんな男が仏陀だなんて、認めるわけにはいかない。
TSIのメンバーと共にテレビ局に侵入した私達は、なんとか事態の収拾を試みます。
仲良しの女性キャスター、木村真理さんの力を借りて
空野太陽先生のお言葉を放送すれば良いのではないかということになりました。
先生は表舞台には滅多に出られないので、先生のお言葉を伝える者として
「世界を救った謎の浴衣少女」のネームバリューを持つ私が大役を仰せつかることに。
先生のお言葉が書かれたメモを弟の瞬太に渡し、全力でスタジオを目指します。
スタッフを説得し、カメラが向けられ、さぁいよいよです。
私は、緊張と共にゆっくりとメモを開きました。
が、弟の汗で文字が全く読めません。
どうしよう、何を話せば・・・
うろたえる私の前に、空野先生(の幻影)が現れました。
私の心に直接訴えかけ、「今から話すことを皆に伝えなさい」と仰っています。
私は、荒井が悪い人間だから決して信じてはいけないこと。
津波は荒井が人の心に植え付けた恐怖心が見せる幻影なので
ますは心を鎮めて信じる事などをしっかりと伝えました。
こうして、世界は二度に渡って私に救われることになったのです。

テレビ局をジャックする大技も失敗してしまった荒井は最終手段に出ます。
テレビ局の裏口で私を拉致し、UFOに乗って野球の試合が行われている
真っ最中の東京ドームへ。
ピッチャー交代のような体でマウンドに向かうUFOと荒井と私。
荒井は、この試合中継を利用してまだ自分こそが仏陀の生まれ変わりだとPRしたいようです。
「さぁ、俺を仏陀の生まれ変わりだと言うんだ。
 さもないと球場のあちこちに仕掛けた爆弾で数万人が死ぬぞ」
くっ、卑怯な男!
けれど「テロとは絶対に交渉しない」と「24」のジャック・バウアーも言ってましたし
私は荒井の要求を断固拒否しました。
これ以上は利用価値がないと思われたのか、UFOの上からグラウンドに突き落とされ、
私は死んでしまいました。

その時、ドームの天井をぶち破ってあの方が現れました。
そう、空野太陽先生です。
「荒井よ、もうこれ以上見苦しいことはお止めなさい」
先生のお言葉に逆上した荒井は、霊銃のようにドキュンドキュンと
攻撃を仕掛けるのですが、モノホンの仏陀の生まれ変わりである空野先生に
そんな攻撃が通用するはずもなく、軽やかに交わされます。
荒井は人間の姿を捨て、悪魔へと変身してスーパー荒井になると
攻撃目標を空野先生からドームの観客へと移します。
しかし、モノホンの仏陀の生まれ変わりである空野先生は
大天使のように大きな羽を広げてこの攻撃も見事に阻止。
さらに、私の魂を握りつぶそうとした荒井を止めるために
巨大な金の象にまたがり、剣を持ったスーパー空野先生へと進化し、見事に荒井を撃破。


壮絶な闘いは終わりました。
金色の空野先生を見た私は、思わず「風の谷のナウシカ」の
「その者青き衣をまといて金色の野に降りたつべし」を思い出しました。
この場合は「その者金色の象に乗りて東京ドームに降りたつべし」ですが。
神々しい先生のお姿に「ナウシカ」を重ねている私に向かって
〆の台詞として先生はこう仰いました。

「我、再誕す」

仏陀の再誕による効果なのかどうか、
勇気君がキスしてくれたので私も生き返る事が出来ました。
エンドロールで獄中の荒井が登場するのですが
すっかり改心した上に改宗もしたらしく、TSIに入信していましたよ。
めでたし、めでたし。


*悟りにチャレンジ!/ウ・ソンミン

エンディングはウ・ソンミンの歌う「悟りにチャレンジ!」。
歌詞はさておき、良い曲なので困った。
もし徳永英明かゴスペラーズあたりが歌っていたら、
まかりまちがってヒットしたとしてもおかしくないクオリティ。
歌詞はさておき。

歌が3番まで用意されているのは、エンドロールで数分間も延々と流れる
協賛企業紹介のためであろうか。
1列に3社表示で、合計は数百社あったはずである。
歯科と整体が多かったように記憶している。
物語後半の舞台である東京ドームの看板にデカデカと名前が載っている企業は
エンドロールで十把一絡げにされる企業よりも遥かに大口の献金をしたに違いない。


*豪華声優陣

これまでの作品は、「信じる者は救われる」だけに注力していたような気がするのだが
今作では「宗教なんて信じない」と主張する者を地獄に堕としたり
(一応は自殺が直接的な原因とされているが、明らかに宗教批判を槍玉にあげている)
自分達が正しいと信じる宗派以外を敵対勢力として極悪に描いたりと
勧善懲悪を悪い意味で膨らませたような内容になっている。
荒井と空野の対決を「エイリアン vs プレデター」のようだと解釈出来れば
怪獣映画、アクション映画の部類として楽しめるが
「信じない者」に対して恐怖心を植え付ける手法をとっているという点において
これまで以上に「やっかいな作品」であることも事実。
おバカな映画だと笑い飛ばすためにはある程度の知識と経験が必要で
これをアイデンティティーの確立していない子供に見せるのは危険。
R15ぐらいに指定しても良かったのでは。



▼映画「仏陀再誕」初登場2位の好発進

1位(1):カイジ 人生逆転ゲーム(2週目)
2位(-):仏陀再誕(1週目)
3位(2):ワイルドスピード MAX(2週目)
4位(3):私の中のあなた(2週目)
5位(-):あなたは私の婿になる(1週目)
6位(4):さまよう刃(2週目)
7位(5):ヴィヨンの妻 桜桃とタンポポ(2週目)
8位(-):ファイナル・デッドサーキット 3D(1週目)
9位(6):20世紀少年 最終章/ぼくらの旗(8週目)
10位(7):カムイ外伝(5週目)

公開初週の成績は「カイジ」に次ぐ2位と大健闘。
初日2日間で動員13万185人、興収1億6301万7200円。
劇場関係者から聞いたのだが、実際にかなり人は入っているらしく
上映中のシネコンでも大型のシアターを使っているところが多い。
私が観たのは初日ということもあってかほぼ満員。
来場者の年齢層はかなり高く、年配の夫婦が互いに挨拶を交わす場面などが
そこかしこで見られた。子連れの姿も多数。
逆に、劇場用アニメでは定番のリュック層などは全く見掛けず。
仏陀が再誕するシーンでは鼻をすする音などもあちこちから聞こえてきて
広大な宇宙にポツンと取り残されたような寂しさを感じた。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
  タイトル:仏陀再誕
    配給:東映
   公開日:2009年10月17日
    監督:石山タカ明
    出演:子安武人、小清水亜美、置鮎龍太郎、三石琴乃、他
 公式サイト:http://www.buddha-saitan.jp/wb/
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★