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明治40年、日露戦争に勝利した日本陸軍は、国策として日本地図完成を目指した。
しかし立山連峰に聳える「劔岳」は、立山信仰でも「死の山」と恐れられる
未開の聖山であり、当時の日本地図では空白のままとなっていた。
その名の記す通り、山は劔の様に切り立ち、降り積もった雪は夏でも溶けない。
入山した者は生きて戻れないと言われたその山に、
国の命令を受けた軍測量部の測量士達が挑む事となった。
時を同じくして、民間人によって結成された「山岳会」も
海外から導入した最新の登山技術を用いて「劔岳」の初登頂を目指していた。
「測量部か、それとも山岳会か」
世間が初登頂を巡って話題にする中、柴崎芳太郎率いる測量部にとっての
最大の使命は、地図を作るための三角点を劔岳山頂に設置すること。
ただそれだけであった。
地図を作る意味とは。
山に登る意味とは。
そして、人の生きる意味とは。
本作は、黒澤明監督、深作欣二監督、降旗康男監督といった名匠達の絶大な信頼を受け、
長年撮影監督を務めてきた木村大作の記念すべき初監督作品である。
浅野忠信、香川照之、松田龍平、仲村トオル、宮﨑あおい、小澤征悦、
鈴木砂羽、笹野高史、石橋蓮司、國村隼、夏八木勲、役所広司と、
日本映画界を代表する役者がずらりと揃ったのも、
監督が一人一人に直接オファーをしたのだとか。
「日本沈没(1973年版)」「八甲田山」「復活の日」「駅 STATION」
「居酒屋兆治」「火宅の人」「あ・うん」「極道の妻(おんな)たち」
「鉄道員(ぽっぽや)」「ホタル」「単騎、千里を走る。」と、
歴史に残る作品を撮り続けてきた監督のこだわりは、「嘘のない絵を撮る」こと。
スタッフ、キャストが劔岳、立山連峰各所でロケを敢行し、
測量隊とほぼ同じ行程を辿りながら、圧巻の映像美で作品を作り上げている。
CGも空撮も使わず、肉眼で見える風景だけを使った撮影方法は、映画作りの原点と言えよう。

(C)2009『劔岳 点の記』製作委員会
「劔岳」は、木村監督の初監督作品であると同時に、
俳優・浅野忠信の代表作になるかも知れない作品である。
浅野忠信を絶賛する映画ファンは多いのでなかなか書き辛いのだが、
私の中の浅野忠信は、雰囲気優先の芝居をする役者というイメージがずっとあった。
「劔岳」のような重厚な作品の中では浮いてしまうのではないか?
香川照之や役所広司を向こうに回して五分の芝居が出来るのか?と思いながら観たのだが、
どっこい、霞むどころか圧倒的な存在感を放っていたので驚いた。
細君である宮崎あおいとの掛け合いも微笑ましく、
木村監督と出会えたことは、今後の彼の役者人生に大きな影響を与える気がする。
作品全体としては、史実に忠実に描いているので
物語に起伏は少なく、山の険しさ・美しさで観客を引っ張っている。
登山マニアにはたまらない映像ばかりであろうが、
山に興味のない方にとっては、尺の長さ(139分)もあり、少々冗長に感じるか。
ただ、この映画で描かれた人々の姿は、紛れも無く明治を生きた人々の姿であり、
彼らの偉業のおかげで、今の日本地図があると言っていい。
私たちが今生きている位置を正確に知る事ができること、
それは、自分たちの生きる意味を知ることと同じである。
日本地図が隈無く記されているということは、そこがどんな険しい土地であろうと、
かつて人が足を使って訪れ、手を使って三角点を築いた証。
その小さな石標には、その土地を知るための多くの想いが込められているのだ。
柴崎をはじめとする測量隊の功績は、歴史の教科書には載っていない。
(載っているのかも知れないが、少なくとも私は覚えていない)
しかし、例え歴史に名を残さない仕事だったとしても
後世の人々のためになるのであれば、私はそれを偉業と呼びたい。

(C)2009『劔岳 点の記』製作委員会
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