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かつてのハリウッドには、「肉体派スター」というポジションが確かに存在していた。
シルヴェスター・スタローン、アーノルド・シュワルツェネッガー、
スティーヴン・セガール、ジョン・トラヴォルタ、ジャン=クロード・ヴァン・ダム。
次々に登場する肉体派スター達はアクション映画に欠かせない存在で、
いくつもの人気シリーズが誕生したが、
気がつけば、彼等の多くは一線から退くか、路線変更をしている。
スタローンは、「ロッキー・ザ・ファイナル」「ランボー 最後の戦場」といった
往年のシリーズを復活させて健在ぶりをアピール。
シュワルツェネッガーは、ご存知の通り今やカリフォルニア州知事に。
スティーヴン・セガールは、「沈黙の」と付けばセガールという、
日本で言うところの哀川翔的なポジションを確立。
ジョン・トラヴォルタは、「閉ざされた森」「ママの遺したラヴソング」
「団塊ボーイズ」といった作品で渋い演技を披露する一方、
「ヘアスプレー」では主人公の母親役を演じるという離れ業を見せるなど、
肉体派から演技派への転身に成功している。
■DVD:「ストリートファイター」
ヴァン・ダムはどうであろうか。
今回、この映画を観るまで、私はヴァン・ダムの存在自体忘れていた。
ゲームファンにも分かるヴァン・ダムの代表作と言えば
1994年公開の実写版「ストリートファイター」のガイル役であろう。
(DVDを入手出来ない方のためにエンディングを少しだけ)
近年は日本で劇場公開される作品も少なく
多くの映画ファンの間で忘れられつつあったように思う。
48歳、肉体的にアクションがキツくなったヴァン・ダムが
製作総指揮と主演を務める最新作「その男、ヴァン・ダム」は、
ハリウッドにおける自身の立ち位置を逆手にとった、自虐ドラマである。
監督は、本作が長編2作目となるマブルク・エル・メクリ。
■YouTube:「その男、ヴァン・ダム 予告編」
金銭トラブル、娘の親権争いは勝ち目無し、仕事は風前の灯・・・。
ジャン=クロード・ヴァン・ダムはロサンゼルスの喧騒から逃れ、
故郷ブリュッセルへと向かう。
気力も失せ果てているのに、残金不足で現金も引き出せない。
嵐を逃れ休息を求めて来たはずが、とどめの一撃に見舞われる。
娘の親権裁判の担当弁護士が、費用を早急に払わなければ弁護を降りると宣告したのだ。
エージェントの交渉でギャラの前払いが叶い、ヴァン・ダムは郵便局に
現金を引き出しに向かう。
ところが郵便局に入るや銃声が鳴り響き、ヴァン・ダムの後ろでドアは閉ざされた。
強盗団が郵便局を襲撃したのだ。
そしてそれは、ジャン=クロード・ヴァン・ダムの長い長い一日の、
ほんの幕開けに過ぎなかった。(以上、資料より転載)
ヴァン・ダムがヴァン・ダムを演じるというコンセプトや
予告編の内容を観る限り、もっとコメディ色の強い作品かと思っていたのだが、
どうしてこれは、ヴァン・ダムが再起のチャンスを賭けた
「最後のカード」とも言える作品である。
・オープニングの長回しシーンで見せる、アクションのキレの悪さ
・過去の遺産への誇り
・現状に対する愚痴と、捨てきれないプライド
それら全てが、生身のヴァン・ダムとオーバーラップしながら
劇中のヴァン・ダムを「それでもやっぱりカッコいい男」として形作っていく。
一見自虐を装っているようで、実はイメージ回復効果も絶大なのだ。
少なくとも私は、ヴァン・ダムにこれほどの演技力があることを
この作品を観るまで知らなかった(失礼)。
後半に登場する独白シーンは、ハリウッドというショービジネスの世界で
天国と地獄の両方を経験した男でなければ決して語ることの出来ない、
ヴァン・ダムの人生が凝縮されたような数分間である。
(このシーンは、予め用意された脚本ではなく
ヴァン・ダム自身のアイディアで挿入されたらしい)
似たような経験があるわけでもない私ですら無性に泣けて来るのは、
ここで語られるヴァン・ダムの言葉が、とても静かで、潔いからかも知れない。
ラストシーンの絶妙な表情を見る限り、
ヴァン・ダムは演技派に転身しても充分やっていけると思う。
本作が良いきっかけになり、ミッキー・ロークに続く大復活を遂げて欲しい。
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タイトル:その男、ヴァン・ダム
配給:アスミック・エース
公開日:2008年12月27日
監督:マブルク・エル・メクリ
出演:ジャン=クロード・ヴァン・ダム、他
公式サイト:http://vandamme.asmik-ace.co.jp/
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