
■DVD:「武士の一分(いちぶん)」
最初から三部作と言っていたかは記憶が定かではないのだが、
山田洋次監督が手掛ける時代劇三部作のトリを飾るのが「武士の一分」である。
原作の藤沢周平(「盲目剣谺返し」)や音楽の冨田勲など、
骨組み部分は前二作のメンバーをそのまま引き継ぎ、
SMAPの木村拓哉を主演、元宝塚歌劇団のトップスターである
壇れいを木村の相手役に抜擢した。
【あらすじ】
小藩の下級武士として暮らす新之丞(木村拓哉)は、
文武両道に長けた秀才でありながら、城内での務めは毒見役。
決して裕福な暮らしは出来なかったが、
中間の徳平(笹野高史)、妻・加代(壇れい)と共に平穏な日々を過ごしていた。
ある日、昼食の膳を毒見していた新之丞は貝の毒にあたり、
数日の間、生死の境をさまよった。
何とか一命を取り留め、加代や徳平が安堵するも、
意識を取り戻した新之丞は光を失っていた。
妻を寝取られた相手に果たし合いを申し込むことは
「武士の一分」の問題なのであろうか。
ただの「男の嫉妬」だと思うのだが。
それはさておき、この映画、非常にバランスが悪い。
木村拓哉を主演に招いた弊害なのか、
桃井かおりや緒形拳などの豪華キャストを脇に揃えながら
皆ただの「賑やかし」にしかなっていないのだ。
「たそがれ清兵衛」や「隠し剣 鬼の爪」では、
真田広之や永瀬正敏を中心に据えつつ、
宮沢りえや田中泯、松たか子や吉岡秀隆といった面々が
皆それぞれに人生を背負っており、それらが重なり合った上に
作品が出来上がっていたように思うのだが、
「武士の一分」の陣形は完全に「木村拓哉とその他の皆さん」になってしまっている。
それでも映画として成立してしまうのは、
やはり「主演・木村拓哉」ならではのことではあり、
大スターを主演にした作品の作り方としては正解であろう。
しかし、トム・クルーズ作品に名作が無いように、
木村拓哉もまた、何に扮しても木村拓哉なので
本作が前二作と比較して遜色ないかと言われると、、、
残念ながら厳しいと言わざるを得ない。
主演の演技力に問題がある上、
登場人物を丹念に描きつつ織り上げていく
これまでの手法が使えないとなれば、走る方向はただひとつ、
ベタなラブストーリーしかない。
結果、語尾を庄内弁にしただけの「木村拓哉のドラマ」になってしまった。
良くも悪くも「主演・木村拓哉」ありきの映画なので、
木村主演のドラマを好んで観る方には安心してお勧め出来るが、
「たそがれ清兵衛」や「隠し剣 鬼の爪」のレベルを期待して観に行くと
少なからず肩透かしを喰らってしまうかも知れない。
私のような前二作の熱烈なファンは、ある程度覚悟して劇場へ。
本作が三部作の幕開けならば、もっと素直に楽しめたのだが・・・
山田監督、「名声」だけではなく「実」も欲しかったか。

■DVD:「たそがれ清兵衛」
今さら説明不要の傑作。
薄汚れた衣服の下に隠れた凛々しさまで表現した真田広之や
女優開眼の宮沢りえ、遅咲きの田中泯など、
登場人物が皆魅力的で、物語も文句無し。
未見ならば是非。

■DVD:「隠し剣 鬼の爪」
絶賛された「たそがれ清兵衛」の後ということで
色々とやりにくい部分もあったかと思うが、
主演の永瀬正敏は真田広之より下級武士っぽく、
田畑智子や吉岡秀隆とのバランスも良い。
松たか子との恋物語も匂わせる程度で、それがかえって美しい。
こちらも未見ならば観ておいて損は無い。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
タイトル:武士の一分
配給:松竹
公開日:2006年12月1日
監督:山田洋次
出演:木村拓哉、壇れい、桃井かおり、緒形拳、笹野高史、他
公式サイト:http://www.ichibun.jp/
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★