あなたの「何で?」が私の快感「マジック大全」 | 忍之閻魔帳

忍之閻魔帳

ゲームと映画が好きなジジィの雑記帳(不定期)



■DS:「マジック大全」


料理研究家の栗原はるみが発売した
「ごちそうさまが、ききたくて」というレシピブックがある。
数万部が売れればヒットと言われるレシピブック界において
続編と合わせて200万部という驚異的な売り上げを見せた大ベストセラーだ。
様々な要因が重なり合ってのこととは思うが、
ここまで売れた最大の理由は、やはりこのタイトルだと私は思う。
季節の食材や調理法を使わず、
料理を作る者の喜びをストレートに表現したタイトルが
多くの読者の共感を呼んだのだろう。

「マジック大全」における面白さの肝もそこにある。
「マジシャンからの手紙」という項目に、こんな言葉が載っていた。

「本当のマジシャンになるために」

相手を楽しませる気持ちで演技をして下さい。
マジックはコミュニケーションの道具です。
あなたが見せたマジックが、楽しいひとときを
作り出すことを願っています。


「マジック大全」購入者に課せられるのは、タネを完璧に把握し、
マジックを披露する相手のため、黒子に徹することである。
ひとりで出来るマジックも用意されてはいるが、
基本的には、相手の「何で?」を聞くために、
黙々とテクニックを磨くことしか出来ない。
練習を積み重ね、相手を驚かせたその時、
初めてプレーヤーは「楽しい」と感じることが出来るのだ。
そしてこの「何で?」が与えてくれる喜びは、
「遊んでいる自分が一番楽しい」従来型のゲームでは
決して得られなかった、全く新しいゲームの楽しみ方として、
今後様々な形で発展していく可能性を秘めている。

モードは大きく分けて3つ。

「ひとりでマジック」は、その名の通り、
ひとりでマジックを楽しむためのモード。
仕掛け人はDS本体なので、プレーヤーがマジックを楽しむ側になることが出来る。
とはいえ、収録されているマジックは、小中学校時代に
一度や二度は話題になったはずのポピュラーなものや、
タネは分からないが驚きもしないという程度の物が多く、
「ひとりプレイにも対応しています」と言うためだけに
用意されたようなモード、といった印象は拭えない。

「不思議トレーニング」には、マジックとはあまり関係の無さそうな
ミニゲームがいくつか収録されている。
このモードをやり込めばマジシャンとしてのスキルが上がるとも思えず、
ちょっとタイトル的にも無理があるか。
これでマジシャンレベルが上がるなら、
「マインドシーカー」購入者は今頃全員エスパーだ。
清田君のニュースは残念であった・・・

「魅せるマジック」は、マジックを誰かに披露するためのモードで、
これが「マジック大全」のメインである。
プレーヤーはまずマジックのタネを読み、仕組みを理解する。
手順を覚え、怪しまれないようなテクニックも身につけたら、
あとは相手を見つけて披露するだけだ。
仕掛けを知ってしまえば拍子抜けするようなマジックから、
灯台下暗し的なマジック、意外と記憶力の要るマジックなど、
タネ明かしを読んでいるだけでもなかなか楽しい。

発売前、テンヨーの方にマジックを披露していただいたのだが、
今になってようやく、あの方のマジシャンレベルが
かなり高かったことを思い知った。
あの滑らかな動きと流暢な語り口を会得するにはもうしばらくかかりそうだ。

ここからは気になった点を。
「マジック大全」には「不思議ポイント」という数値が設定されており、
3つのモードをやり込むことによって徐々にポイントが溜まっていき、
一定数に達すると、新たなマジックが出現する仕組みになっている。
が、これは要らなかったように思う。
「マジック大全」を「誰かを喜ばせるためのツール」として購入した
ユーザーにとって、最初から全てのマジックが選べないことは
無駄な足枷にしかならない。
1日で得られるポイントに制限があることも大きなお世話だ。
「脳トレ」や「常識力」と同じ考え方でこういう設定にしたのかも知れないが、
毎日プレイすることで効果を得られるトレーニング系のソフトと
買ったその日に披露したくなる「マジック大全」を
同じ時限装置システムで縛ったことは明らかに誤りだ。
「ひとりでマジック」と「不思議トレーニング」まではギリギリ許せるが、
「魅せるマジック」だけは
最初から全てオープンにしておくべきだったのではないか。

とはいえ、「すごいすごい!」と驚きの声をあげる
お子を見ているのは単純に楽しいし、
「うわ、気持悪っ」と知人に言われるのも、やはり楽しい。
その笑顔が見たくて、私は今日も地味なモードをやり込んでいる。

ひとつだけネタバレ。
「まわるメイドインワリオ」「ピクミン2」に続き、
本作でも「ラブテスター」が登場する。
しかも、今までで最も初代「ラブテスター」に近い形で収録されており、
ジジィはそっと微笑したのであった。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
  タイトル:マジック大全
  メーカー:任天堂
   発売日:2006年11月16日
    価格:3800円(税込み)
 公式サイト:http://www.nintendo.co.jp/ds/ajqj/index.html
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★