沖縄の海に負けない妻夫木聡と長澤まさみの魅力「涙そうそう」 | 忍之閻魔帳

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■DVD:「すべての人の心へ 映画 涙そうそう 兄ィニィと過ごした日々」


「涙そうそう」は、妻夫木聡と長澤まさみという
今最も勢いのある若手二人を主役に据えたTBS製作の作品である。
監督は、「オレンジデイズ」(ドラマ)「いま、会いにゆきます」の土井裕泰。
脚本には倉本聰の富良野塾出身であり、
「Dr.コトー診療所」「恋の時間」「優しい時間」など
数々のヒットドラマを手掛ける吉田紀子。
音楽は「鉄人28号」「この胸いっぱいの愛を」の千住明と、
スタッフの名前を眺めているだけで良作の予感がヒシヒシとしていたのだが、
期待に違わない作品に仕上がっていた。

稲垣洋太郎(妻夫木)とカオル(長澤)は血の繋がっていない兄妹。
幼い頃、父親が失踪し、母親を病気で亡くしたカオルにとって
洋太郎はいつも守ってくれる優しい兄であり、父親代わりでもあった。
ある日、幼いカオルを養うため、高校を中退し本島で働く洋太郎のもとへ
高校進学を決めたカオルがやってくることになった。。。

兄・洋太郎を演じる妻夫木聡と
妹・カオルを演じる長澤まさみ。
この映画は二人の魅力が全てと言い切って良い。
それほど、主演の二人が素晴らしい。
「きょうのできごと」「さよなら、クロ」「ジョゼと虎と魚たち」と、
立て続けに良作に出演した2003年以降、
今ひとつ仕事に恵まれていなかった妻夫木聡だが、
今作は間違いなく彼の代表作になるはずだ。
カオルを演じた長澤まさみも、
現在公開中の「ラフ」と同時期に撮った作品とは思えないほど
伸びやかな演技で、「ラフ」の共演者や監督が
いかに彼女の才能を無駄遣いしていたかを痛感した。
母との約束を守り、カオルを全力で守ろうとする洋太郎と、
洋太郎の愛情を一身に受け、真っ直ぐに成長したカオル。
二人の笑顔が、楽しいシーンの楽しさを何倍にも増幅し、
二人の泣き顔が、悲しいシーンの悲しさを何倍にも増幅している。

ストーリーはベタそのもので、あまり多くを述べると
即ネタバレになってしまうのだが、
盛り上げようと思えばいくらでもドラマチックに出来た後半部分ではなく、
最愛の兄から自立しようとする健気な妹と、
痛恨の思いで妹を見送る兄の「旅立ち」部分に
比重を置いているところに、吉田紀子の上手さを感じた。
沖縄弁のイントネーションに関しては
気になる方も多いとは思うが(特に麻生久美子)、
ストーリー進行を阻害するほどではないので、二人の熱演に免じて見逃したい。

というわけで、お祭り気分な作品の多い夏興行を終え、
しっとり系の作品が増える秋には最適の1本。
「Dr.コトー診療所」や「いま、会いにゆきます」あたりがお好みの方ならお勧めだ。
「ALWAYS 三丁目の夕日」で泣けたというベタ好きなら
迷うだけ時間の無駄である。ハンカチ持参で劇場へ。



■DVD:「深呼吸の必要」


サトウキビ刈りのアルバイト目的で沖縄に集まった若者達の姿を描いた作品。
やっていることはというと、本当に延々とサトウキビを刈り続けるだけ。
刈っても刈っても減らないサトウキビを相手に悪戦苦闘する若者達が
仕事を通して何かを発見していく青春映画。
長澤まさみが端役ながら重要な役どころで出演している。
劇中ではほとんど何も起こらないにも関わらず、
観賞後いつまでも余韻が残る不思議な作品。



■DVD:「ニライカナイからの手紙」


蒼井優主演。
カメラマンを目指し、沖縄竹富島から上京した少女が、
幼い頃家を出た母親との約束を頼りに都会で生きる物語。
タイトルがネタバレになってしまっているので驚きは少ないが、
沖縄の住民同士の繋がりの深さは非常に上手く描かれている。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
  タイトル:涙そうそう
    配給:東宝
   公開日:2006年9月30日
    監督:土井裕泰
    出演:妻夫木聡、長澤まさみ、塚本高史、小泉今日子、他
 公式サイト:http://www.nada-so.jp/
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