原作ファンが安堵する貴重な成功例「サイレントヒル/SILENT HILL」 | 忍之閻魔帳

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ゲームと映画が好きなジジィの雑記帳(不定期)


■DVD:「サイレントヒル」
■DVD:「サイレントヒル プレミアム・エディション」

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リメイクや原作付きの映画化というものは、
多少出来が良い程度では、褒められることはまずない。
先日紹介した「嫌われ松子の一生」のように
まったく別方向からのアプローチであれば
監督の持ち味を活かした作品として楽しむことも可能だが、
「デスノート/DEATH NOTE」のように原作に気を遣い過ぎると、
制作者は制作者で手足を伸ばし切れず、
観客は観客で下手に似ている分、余計に細かな違いが気になるという
ジレンマを生むことになってしまう。
今回紹介する「サイレントヒル/SILENT HILL」は、
「バイオハザード」も「ファイナルファンタジー」も「サイレン」も成し得なかった、
原作ファンの大半が納得出来る(のではないかと思う)、
理想的な映画化を実現した初めての作品かも知れない。

監督は「ジェヴォーダンの獣」のクリストフ・ガンズ。
「サイレントヒル/SILENT HILL」シリーズの熱烈なファンらしく
本作を手掛けることを熱望していたとも聞く。
観れば納得、ガンズの愛情は筋金入りだ。
ガンズは、「サイレントヒル」と「バイオハザード」はどこが違うのか、
「サイレントヒル」のどこが支持されているのかを知り尽くしている。
「サイレン」の堤幸彦のように、監督に決まってから
少しだけ齧ってみたというようなにわか仕込みとは訳が違う。

現実の世界と虚構の世界が入り交じった中で展開するストーリーには
シリーズ最大のウリ(というか単に私が好きな部分)である
「恐さ」と同じ分量の「哀しみ」がきっちりと込められており、
登場人物のキャスティングからクリーチャーの細かな動き、
徹底された美術、ゲーム版のBGMも使用するなど、
ゲーム版のファンなら「よくぞここまで」と唸ること請け合いだ。

ストーリーは、ゲーム版の「1」をベースにはしているが、
主人公が女性に変更されるなど、
映画化にあたり若干のアレンジが施されている。
しかし、ほぼ完璧に再現された「Silent Hill」の街並みを見れば、
そんな些細な変更点はあっという間に気にならなくなってしまう。
自分までが「Silent Hill」に迷い込んでしまったような感覚に陥れば、
あとはエンディングまで一直線である。

ゲームファンの私としてはほぼ文句なしなのだが、
映画ファンの私としては少しだけ文句もある。
まず、原作をプレイしたことのない方、
「サイレントヒル/SILENT HILL」に対して
「バイオハザード」の亜流程度の認識しか持っていない方が
いきなり映画から入るには難解過ぎるのではないかということ。
ゲームをプレイしてから観に行けとまでは言わないが、
トリッキーなシナリオやサイコ・サスペンスにある程度慣れている必要はある。

次に、シナリオに非常にゲーム的な部分がある、ということ。
AVGやRPGで言うところの「おつかい」のようなシナリオ進行は、
ゲームでは許されても映画でやると不自然になってしまう。
本作にも、「どこそこへ行ってヒントとなるアイテムを入手」という
ゲーム的な場面が何カ所かあり、
それが僅かながら違和感を生んでしまっている。
本編を揺るがすほどの難点ではないが、
そこ以外の出来が良過ぎるが故に気になってしまった。

原作ファンと(濃い目の)ホラー映画ファンは
劇場で観ておいて損はない。
私は最低でももう1回は劇場に足を運ぶ予定だ。
気が早いのは百も承知だが、早くDVDが出て欲しい。
そして「2」「3」と、このクオリティでシリーズ化して欲しい。

映画紹介はここまで。
ここからはおまけを。
今回、クチコミサービス「CyberBuzz」様から依頼を受けたので
キャンペーンも紹介しておこう。
現在、「サイレントヒル/SILENT HILL」の公式サイトでは
お持ちのブログを「サイレントヒル」にちなんだデザインに
作り替えることが出来るブログパーツなるアイテムを無料配布している。
抽選でプレゼント等も当たるようなので、
ブログをお持ちの方はダウンロードしてみては如何か。
何やらプレゼントも当たるらしい。
なお、ブログパーツの導入にはJavaを必要とするため
一部のブログサービスでは使用出来ないのでご注意を。

【より深く楽しむための関連商品】


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患者の精神世界へダイブして治療を行う心理学者が
連続殺人犯の脳内に残る「善意」を探し出して
さらわれた少女を救おうとするサイコ・サスペンス。
「ジェニファー・ロペスの映画にアタリ無し」という定説を
覆した記念碑的な作品だ。
「サイレント・ヒル」が好きで観た事がないなら
一度観ておくことをお勧めする。


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鬼才ペドロ・アルモドバルが見出した
ギレルモ・デル・トロが2001年に発表した作品。
日本では2004年になってようやく公開された。
内戦下のスペインを舞台に、ある日孤児院にやってきた少年が
そこで出没する少年の幽霊を救おうとするホラー映画。
恐怖だけでなく哀しみを含んだ内容は
「サイレントヒル」にも通じるが、
本作はさらに「スタンドバイミー」のような味わいも含んでいる。
非常に贅沢かつ濃厚な作りなのだが
知名度がとても低いのが残念でならない。
レンタルでも良いので見掛けたら是非。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
  タイトル:サイレントヒル/SILENT HILL
    配給:松竹
   公開日:2006年7月8日
    監督:クリストフ・ガンズ
   出演者:ラダ・ミッチェル、ショーン・ビーン、他
 公式サイト:http://www.silenthill.jp/main.html
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