花束 | 忍之閻魔帳

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ゲームと映画が好きなジジィの雑記帳(不定期)

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先日、知人がオープンする新店(飲食関連)の手伝いをしていた時のこと。
前日の夜から泊まり込みの作業だったので、
私も夕方から夜の9時頃まで手伝い、仮眠を取る為に一度帰宅した。

深夜3時過ぎ。
作業を続行しているであろうスタッフ達への差し入れ等を買い込み、
再び現場へと向かった。
電車でも3駅ほどの所だったので、眠気覚ましに自転車で向かったのだが、
さすがに深夜だけあり、街はゴーストタウンのようであった。

買い物に手間取ったせいで時間は既に午前4時前、
「3時半頃には戻ってくるから」と言って帰宅した私は
ペダルをこぐ足に力を込め、現場へと急いだ。
どうせ誰もいないのだからと車道に飛び出し、さらにスピードを上げる。

と、

左側がやけに気になる。
スピードを上げているせいで首でも疲れたかと思ったのだが
どうも違うようだ。
この感覚には覚えがある。
私は「何かを見た」というほどのことはあまり経験が無いのだが、
街を歩いていると「気持ちの悪い場所」に出くわすことがある。
裏通りでもなく、人が山のように行き来している場所でも、
「気持ち悪い」と感じる場所があるのだ。
そう、その感じに似ている。

と思った瞬間、私の左足首をグイ、と何かに掴まれた感覚が走った。
驚いた私は急ブレーキをかけ、自転車を止めた。
足首には、まだ指の感覚が残っている。
自転車を降り、周囲を見回すと、十字路の脇に1本の電柱があった。
電柱の足下には、小さな花束が供えられていた。
いくつかの花を組み合わせて作られた花束であることが、
薄暗がりながらおぼろげに分かる。
その花束を見て、ようやく私は納得したのだ。
「注意された」のだと。

その後、無事現場へと戻り、差し入れを広げ
何事もなかったかのように知人達と馬鹿話に花を咲かせていた。
誰かが、「自分だけデザートが足りない」と騒いでいる。

当たり前だ。
ひとつお礼に置いてきたのだから。