では、「支那側軍隊其他の武装団体の状況竝に其の指導概況」に出てまいります「支那側武装団体の整備竝指導要綱」について明らかにし、汪偽政権が操り人形(傀儡)であることを再度指摘します。

         出典は、防衛庁防衛研修所戦史室 著「戦史叢書:北支の治安戦;1」、朝雲新聞社1968年8月発行、455~456頁です。原文カタカナ、旧漢字縦書きですが、現用漢字、ひらがな書きに換えました。

 

1941(昭和16)年1月30日、大陸指第824号です。

日本政府大本営連絡会議で決定された昭和天皇の勅令です。

 

 

(1) 解説

 

  赤字で書いたところ

         解説・本文中の赤字で書いたところが「操り人形(傀儡)である」ことを示すものです。

 

  青地で書いたところ

1.  「各地方の特性を考慮」とは何か?

         この地図は、汪偽政権ができる前にあった日本の傀儡政権の大まかな地図です。政権が三つに分かれておりますのは、占領した現地日本軍が違うからです。

         占領日本軍の違いという特殊性を考慮するということです。

 

①     一番北は、当時察哈爾(ちゃはる)省・綏遠(すいえん)省という省でした。中国東北占領軍(関東軍)が侵略し、さらに盧溝橋事件(七七事変、1937年7月7日)以降、日本は山西省北部を侵略し、1937年10月に偽蒙古聯盟自治政府を作りました。これが、汪偽政権下でも存在し、蒙疆聯合委員会として「高度の自治」を持ちます。この政権について、広中一成は、自らの著「傀儡政権:対日協力政権」では、論述しておりません。出来なかったのでしょう。

 

②    中央は、当時の河北省・山西省中部・山東省になります。この地域は日本軍華北派遣軍が占領します。1937年12月13日、南京陥落の翌日に結成されます。偽中華民国臨時政府と言いました。地図では南の政権と繋がっておりますが、つながっておりません。河南省への侵略は1938年になります。山東省南部は1941年秋の中原会戦(中条山戦役)まで中国軍が支配しております。

         ここの占領者は華北派遣軍ですから、汪偽政権下では、華北政務委員会と言い、「高度の自治」を持ちます。  

 

③     一番下は、浙江省を中心とした地域です。日本軍華中派遣軍が占領した地域です。1938 年 3 月 28 日に偽中華民国維新政府として成立させます。政府事務所はホテル内に作られました。この政府は、1940年3月30日に、汪偽政権ができた時、吸収合併されます。

        要するに、汪偽政権と違う日本軍占領地域では、「高度の自治」を持つことを現地の日本占領軍が求めた訳です。

 

2.  今一つの青地は、傀儡軍の「正規の軍隊」です。

      華中方面      約10万以内

      華南方面        約1万以内

      華北治安軍  約10万以内

      蒙軍                  約1万以内

       となります。華北・華中・蒙軍以外に、華南軍があります。華南軍は、福建・広東地区に作られました。

         これらの軍は、旧政府から接収した部隊、既に日本軍に帰順していたものを継承した部隊、直接新政府に帰順を願い出た部隊、遊撃隊及び捕虜、極少の応募兵などです。従って一般に素質は悪く装備も雑多で、不統一でした。

 

(2)本文

 

  中国側武装団体整備竝指導要綱

 

 第一    方針

一  中国側武装団体は当分の間我が占拠地域の治安粛正に協力するを主とし    併せて国民政府政策遂行の支柱たり得るを目的とし  特に規定あるものの外  各地方の特色を考慮し郷土の自衛安民を以て整備及指導の主眼となす

 

二  将来事変処理の進捗、国民政府の発展に伴ひ  逐次占拠地域全部に亘り統合整理して軍容を刷新し    日本軍を後拠として独立して治安の維持に任し  為し得れば日本軍の作戦に協力し得るに至らしむ

 

三  整備、指導竝に運用の大綱等は実質的に日本軍之を統制す

 

  第二    指導要領

一  中国側武装団体は国民政府直轄軍隊、華北治安軍、蒙軍及其の他の武装団体とし「国民政府、華北政務委員会若くは蒙古聯合自治政府等に隷属せしめ」各地方の特性を考慮し在来の武装団体を整理統合すると共に所要の団体を整備又は編合する等に依り逐次に体系を整ふ

 

二  整備量は国民政府、地方行政機関等の財政状態、地方の特性、治安の状況等を考慮して決定し当分の内左記を標準とす

 

1 正規の軍隊

イ  国民政府直轄軍隊

      華中方面      約10万以内

      華南方面        約1万以内

ロ  華北治安軍  約10万以内(剰共軍等を含む)

ハ  蒙軍                  約1万以内

 

2 正規の軍隊以外の武装団体

前記の諸条件を考慮し地方毎に決定す

 

三  編制は差当り整備の目的に鑑み正規の軍隊に在りては特に規定あるものの外    歩兵を主体とし其の装備は小銃、拳銃を主体とするの外軽、重機関銃及迫撃砲を以てし    其の他の武装団体は徒歩に依るものを主とし    其の装備は小銃及拳銃を主とし共に大なる編合を避く

 

四  航空(部)隊は当分之を設けざるを趣旨とす

 

五  装備の為の兵器及資材は主として日本軍より交付する鹵獲品に依り  巳むを得ざるもののみ新に購入す    而して之が補給源は極力日本に保持せしむるものとす

        兵器の修理、補給機関は中国側負担の範囲内に於て施設経営せしむることを得

 

六  日本軍と中国側武装団体との関係は各地方の特性に応じて定むるも    治安粛正上の重要事項に関しては日本軍所在の指揮官は実質的に中国側武装団体を指揮し得る如く律するものとす

 

七  治安維持の為各団体の配備、行動等は日本軍の実施する治安粛正に適合する如く日本軍の統制下に実施せしむ

 

八  教育練成は前号の目的を達成し得るを目途とし各地方の実情に即し主として幹部教育を行ふ  之が為中央政府及各地方政務機関等に於て所要の教育機関を設置す

 

九  中国側武装団体の指導機構は左記に準拠す

国民政府に関する武装団体は中国派遣軍総司令官又は関係軍司令官の命令又は指示に依り    国民政府軍事委員会顧問及之に属する機関等を以て之を指導す

         華北政務委員会及蒙古聯合自治政府に属する武装団体は北中国方面軍司令官、駐蒙軍司令官の命令に依り当該軍所属の顧問、教官等を以て指導す

 

十  経費に関しては左記に準拠す

 

1   中国側武装団体の為所要経費は団体の性質、所属等を考慮し中央政府又は地方の行政機関等中国側より華出するを本則とす

 

2   帰順工作及之に伴ふ経費は地方の実情、帰順部隊の性質等を考慮し適宜中国側より華出せしむるを本則とす