参院選で党の躍進を (しんぶん赤旗2022年2月17日2面) を読んでいて、ラジオ日本の「岩瀬恵子のスマートNEWS」の岩瀬氏の疑問は、国民からぬぐい切れないのだなあと実感し、

「歴史としての社会主義 / (岩波新書(新赤版) : 239) / 和田, 春樹 著 / 1992年8月 / 岩波書店」を読み返していた。

 

1. 小池氏は「野党としての共産党の役割は認めても、政権に入ることが気になる人はいる」として、共産党への積極的支持者を広げていくために「そこをきちんと解決していくのは大事な課題だ」と述べました。

 

 そこで世界の共産党で政権政党と与党政党を調べると、

の6党しかない。(Wikipediaから製作)

 

 ソ連共産党が解体を歓迎し、中国共産党を覇権主義として否定する日本共産党は、「発達した資本主義国での社会改革が社会主義・共産主義への大道である」と綱領を改定した(2020年1月第28回大会)。

 既に、2004年の綱領改定で、「資本主義から社会主義への移行の必然性、革命による政治権力の奪取、プロレタリア独裁論を否定した」(61頁:以下和田文献からの引用は頁数のみ示す)。つまり19世紀末のベルンシュタイン(Bernstein, E.)の「社会主義の前提と社会民主党の任務(Die Voraussetzungen des Sozialismus und die Aufgaben der Sozialdemokratie)」と同じ道を、21世紀の日本共産党は修正主義の道を歩んでいる。

 

2. 小池氏は「共産党が政権に入れば、天皇の制度を廃止するのでは」という疑問について、綱領で「憲法の全条項を守る」と決めていて、将来も天皇の地位は国民の総意に委ねていることを説明。

岩瀬氏は「そんなに恐れることはないんですね」と答えました。

 

 それでも日本共産党への国民の反共主義はぬぐえない。それは、幸徳秋水の大逆事件(1910年, 検察によるでっち上げがある)以来、1世紀以上の根強い支配勢力の共産党攻撃にある。

 

 なぜか? ポツダム宣言受諾から無条件降伏、その後も昭和天皇は、天皇主権を貫いている。日本国憲法下でも吉田茂によって内奏が行われる。

 1945年8月17日に天皇東久邇宮稔彦(なるひこ)王内閣は、戦前の鈴木貫太郎内閣の「国体護持」を方針とし、10月3日に山崎巌内務大臣は、イギリス人記者のインタビューに答え、「思想取締の秘密警察は現在なほ活動を続けてをり、反皇室的宣伝を行う共産主義者は容赦なく逮捕する」方針を明らかにした。

 ために、1945年10月4日に伝えられたGHQから指令が出された。いわゆる「人権指令」(「政治的, 公民的及び宗教的自由に対する制限の撤廃に関する覚書」)が問題となった。この指令は、人権確保のため、治安維持法(1928年6月29日公布の緊急勅令), 宗教団体法などの廃止や政治犯, 思想犯の釈放、特別高等警察(特高)の解体、「日本共産党員や違反者の引き続きの処罰」を明言した山崎巌大臣始め内務省幹部の罷免などを内容とした。

 しかし、東久邇宮内閣はこの指令を実行することによって国内での共産主義活動が再活発化し革命が起こることを危惧(きぐ)し、指令の実行をためらい1945年10月9日に内閣総辞職に至った。

 

 つまり、戦前と戦後の間に、天皇主権を否定する考えは、何もなかった。次の内閣、幣原喜重郎内閣が10月15日、昭和20年勅令第575号『「ポツダム宣言ノ受諾ニ伴ヒ発する命令ニ基ク治安維持法廃止等ノ件』(ポツダム命令)を制定し、治安維持法は廃止され、特別高等警察(特高)も廃止せられた。

 

日本人にとって、稔彦(なるひこ)王内閣の「一億総懺悔(ざんげ)から出発して、軍部だけに責任を負わせるのが気楽であった」(214頁)

 

3.  小池氏は自衛隊について、今すぐなくすようなことは主張しておらず、外交的努力をはかり、将来アジアが平和になり、国民の圧倒的多数が「自衛隊がなくても大丈夫だ」という状況になった時、憲法9条の理想に向けて踏み出そうと提案していると説明。

 

 

 しかし自衛隊は、「日本国憲法第9条第2項 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」を、連合国軍最高司令官総司令部(SCAP)が指示して、警察予備隊を作らせたことに始まる。

 当初の67,000人に始まる部隊の指揮にあたる人材を要したことから、「旧軍人が多数入隊した」。現在22万人の軍隊。

 

(第9章「自衛官になること/であること」 / 佐藤, 文香 著 / 社会のなかの軍隊/軍隊という社会 / (シリーズ戦争と社会 ; 2 ) / 2022年1月 / 岩波書店 / 217頁)。

 

 旧軍人を幹部(士官)に雇用していることから始まるのであるから、違憲であるのは疑い得ない。自衛隊が現実にあるということと、違憲であることを曖昧にしている。これは自民党の政治哲学と同じである。

 

4. さらに小池氏は「安保法制による集団的自衛権の行使は海外での戦争に参加していくことになる」と指摘し、野党連合政権の緊急課題は安保条約の廃棄ではなく、戦争法の廃止だと主張しました。

 岩瀬氏は「岸田首相は自民党では『ハト派』と言われているのでは」と質問。

 小池氏は「岸田首相はハトのふりをしたタカだ。歴代政権で、施政方針演説で『敵基地攻撃能力の保有』を初めて明言した。安保法制と敵基地攻撃能力を組み合わせると大変危険なことになる」と述べました。

 

 政府見解は、1981年では

個別的自衛権=必要最小限度の範囲内の自衛措置=合憲

集団的自衛権=必要最小限度の範囲を超える自衛措置=違憲

であった。

 そこで、2014年7月7日15時まで防衛省のWeb page上には、集団的自衛権は認められないと掲載されていた。

 

 ところが安倍内閣首相は、2015年、集団的自衛権を行使するために必要な法案(防衛省設置法, 自衛隊法, 武力攻撃事態法, 国民保護法, 周辺事態法, PKO協力法, 海賊対処法, 船舶検査活動法, 米軍行動円滑化法, 国家安全保障会議(NSC)創設関連法)を、集団的自衛法として、一括して国会に上程した。

 

 2015年9月15日、参議院平和安全法制​特別委員会は中央公聴会を開いた。SEALDsの奥田愛基氏, 元最高裁判事のの浜田邦夫氏, 小林節慶応義塾大学名誉教授(憲法学), 松井秀郎名古屋大学名誉教授(国際法)は意見と見解を表明した。

 しかし自民党, 公明党の政府与党は、

参議院平和安全法制​特別委員会で強行採決し、2015年9月19日未明(法律は9月18日成立としている)、参議院本会議で強行採決した。

 

 この違憲の法律は現在運用され、「箍(たが)が外(はず)れ(緊張や束縛がとれ、しまりのない状態になる=広辞苑)」になっている。アメリカ軍基地には、オーストラリア軍, イギリス軍が自由に往来する事態になっている。

 

5. 小池氏は参院選の比例代表で650万票、10%以上の得票、5人全員当選を目指すと表明。「32の1人区では最大限、野党候補者を一本化する努力をしていく。共通政策という旗印を立てることが大事だ。政権問題では、立憲民主党と総選挙で確認したことは国民への公約だ」と述べました。

 

 ところが、日本共産党の人口比の得票率は、大きく変わっていない。

 前回の総選挙の有権者数105,622,758人 投票率 55.93%であった。この時、日本共産党の得票数は4,166,076票であった。これが人口比で3.94%である。

 

 650万票は6.15%で、2014年総選挙の得票数6,062,962票、人口比5.83%よりさらに50万票多い。取れない数字ではない。しかし、2021年総選挙得票数より2,333,924票より多い。

 

 時代は、自民党, 日本維新の会をリベラルと思う状況になっている。2.26事件の連中を、革新派将校と言うのと同じだ。
 現憲法を逸脱しても良いという雰囲気が醸成されている。

 

中日新聞2022年2月21日掲載の政党支持率(1月22,23日調査)

無作為抽出電話。回答率42.3%

時事通信社速報(2月11~14日2,000人に個別面接。有効回収率62.8%)

 

 基本的に投票行動と同じく約半数は回答していない。驚くべき回答は自民党の支持理由の首位が、「他の政党が駄目だから」である。

 中日新聞社と時事通信社の世論調査の差異は、「支持政党なし」が、15.4%、60.6%と、大きく違う。またその差を中日新聞社の調査では、自民党と日本維新の会が主に吸収している。

共産党は2.4%である。人口比にすると2,534,946人である。とすると、650万票に対し400万票足らないことになる。昨日は1.5倍の活動をどうやって行うのかと考えていたが、そうではない。2.5倍の活動が必要ということになる。大変けわしい道になる。