告白から6日が経って 2/2 | 片思いという名の試練

告白から6日が経って 2/2

20時、彼と待ち合わせ。居酒屋へ。
いつも通り、色々な話をする。
こちらは海外生活の話。向こうはフリーター生活の話。
彼の話を聞きつつも、自分も話をしつつも、
たぶん集中力の4割は、これから告白するんだ、
という気持ちに向いていた。

焼き魚を注文した。
1つの皿に乗る1匹の魚を2つの箸で一生懸命つつく。
共同作業。なんちゃって。
こんな場面、もうないんだろうな、と考える。

周りのお客さんがいなくなっていき、
食べ物のラストオーダー、飲み物のラストオーダーになる。
「じゃあ最後に」と3杯目を注文する。
ああ、これを飲み干したとき、居酒屋を出なきゃいけないんだ、
告白するんだ、と考える。
お店のBGMの歌のフレーズ、こんな時に限って。
「あなたが好きだった」

会計を済ませ、外へ。
暖簾を外すお姉ちゃんが気になったけど、
しばらくそこで立ち話。

帰る方向は全く別だったけど、
「少し歩こうか」と彼の帰る方に向かって歩く。
歩きながら告白するのと、立ち止まって告白するの、
身体感覚的にどっちの方がやりやすいんだろう、
なんて考えながら、彼の話を6割くらいの集中力で聞いている。

前を見ると、キリのいいコンビニが近づいてくる。
でも彼も話してたし、なんとなくタイミングを逃す。

次の信号のところが最後のチャンスかもしれない。
段々と信号に近づいていく。
彼がふと聞く。
「いつ海外に戻るんですか?」
「…明日だよ」
日本最後の夜に飲みに誘ったことが怪しまれないかと思い、
特に言っていなかった。

信号のところで、ちょうど立ち止まって彼が言う。
「俺は向こうですけど、どうしますか?」
「じゃあここで別れようか」
そして自分が留学から帰り、彼が留学へ向かう日を確認しあう。
次に会うのは来年の夏。
「じゃあ次の8月に!」と彼が言ってくれる。
よく覚えてないけど、それでも
なんとなく別れる雰囲気ではなくて、
さらに5分くらい立ち話。

ふと沈黙になった。
彼の前で思いを声にするのか、と
改めて、気持ちの一押しが必要になる。
さらに間延びして話のネタを考えることもできず、
ただただ「じゃあ次の夏だね」と
ひたすら笑顔で何回もうなづく自分。
言うセリフもなくなって、ただただうなづくだけの人になっていると、
「それじゃ」と言って彼が去ろうとする。
それがきっかけになって、とっさに
「あのさ」と彼を呼び止める。

呼び止めても、5秒くらい彼から視線を外して沈黙してしまったが、
視線を上げて彼の目を見て言った。
「XXのこと好きだったんだ」

驚いた様子。それから5秒くらいして
「あのー、俺はその気持ちにこたえられないんですよね。」

そんなのわかってたよ、
っていう自分のせめてものプライドなのか、
下を向いて、でも笑って何回もうなづく自分。
その反応に気づいて、彼も少し笑って上のセリフを言う。

それから彼は、今まで誰とも付き合ったことがないこと、
告白されてもみんな断ってきたことを語る。
こっちを納得させるためだろうか。
それから、男の人に告白されたのは初めてだとも言った。
お互い、クスッと笑う。

「近くで見てたわけじゃないし、全部知ってるわけじゃないけど、
物知りなところ、真面目なところ、真面目じゃないところ、
サークルに真摯に取り組んでたところ、
感心してたし、尊敬してた」

でも本当だ。
こんな場面で、顔がいいから(彼はかなりのイケメンだ)、かわいいから
なんてわざわざ言わないだろ。

彼がこっちを大学院生の先輩として慕ってくれてたのに、
こっちは彼のことを物知りだ、感心して尊敬してた、と言うから
驚いたんだろう。
彼は謙遜して首を横に振る。

「片思いだってわかってたから…」
と再び自分が切り出すと、彼はうなづく。
ああ、いつか自分が彼に気になる女の子のことを
聞いてたことに合点が行ったんだろう。
「わざわざ言わなくても、自分が黙っていることもできたし…」
と言うと、
「でも言うのはタダですよ」
と彼から突っ込みが入る。
言うのはタダだけど、言うには責任があるし、
言われた方の気持ちもあるから、とすぐ言い返して続ける自分。
「XXも知らないままの方がいいと思ったし…」
「でもこうやってXXさんの人間らしいところが見れてよかったです」と彼。
笑っていいのか、悪いのかよくわからないが。
自分が人間らしく彼には映っていなかったとは思わないが、
おそらく、告白を切り出す時の迷いとか
人を好きなこととか、あの場の自分を見て彼が思ったことだろう。

「これまで通りに先輩・後輩の…」と言うと、
再び彼から突っ込みが。
「でも、なかったことにもできますよ」
この彼の言葉の真意が何なのか、
理解できなかったので、とりあえず話を続ける。

「でも色々考えて、やっぱり伝えたいと思った。
これはエゴ以外の何物でもないし、
ある意味XXのこと、騙していて申し訳なく思う」
先輩として慕ってくれてたから、
ある程度の下心?を持っていたことは、少し後ろめたく感じていた。
でも彼は、そんなことないっすよ、とでも言いたそうに、
首を横に振ってくれた。

それから彼はなぜかこんなことを言う。
「俺は結構功名心とか出世欲が強いんです。
XXさん、絶対出世してください。偉い人になってください。
お互い頑張りましょう」

なんか、この片思いの1年半に
自分の彼への思いが、自分の研究の源になってたことが
見透かされてるみたいだった。
現に、この1年は研究者としての今後に大事な1年だった。
彼に思いを伝えて、事実上フラれて、羽を失ったけど、
その代わりに、この彼の言葉が自分の糧になるんだろう。

お礼を言って(その言葉と、告白を来てくれたことに対して)、
お互いの健闘を祈る。
彼は「出世してください」(こういう言い方もどうなのかと思うけど)、
自分は「サークル乗り切れ。留学が充実するといいね」

そうやって別れた。たぶん気持ちよく。
あの夜は涙は一滴も出なかった。

あの夜から彼には会わないので、
今改めて彼があの告白をどう受け止めたのか、
わからない。
それなりに思い出してくれてるんだろうか。
ゲイに好かれて、不快な気持ちはないか。

彼が友達にこのことを話すかわからないし、
気まずさが残るのかどうかは、
自分と彼が日本に戻って、
再び会うときに初めてわかるだろう。
その時、これまで通り、気まずさがなく、
先輩・後輩としていい関係を取り戻せていたなら、
その時初めて本当の意味で
この片思いという試練が乗り越えられるんだろう。
そしてその時の自分が、
彼からの言葉を糧にして、目標を達成していること。