ドロシー
中心街を抜け住宅街を通り過ぎ、湾に面した小高い丘の上にホテルはあった。チェックインを済ませると、フロントのカウンターには宿泊者名簿がある、私の泊まる部屋の番号を探した。3人部屋ということは、おそらく船室も同じメンバーなのだろうか。もしそうなら、その面子次第でこれから先の良し悪しは少なからず左右される。
「えーと、ドロシー…と、へ?ヘッツェル?」
オズの魔法使いの主人公とドイツ系らしき女性二人。若いのか、年上なのか、気が強いのか、のんびりしているのか、神経質だったら厄介だなぁと、どんな人なのか気になる。しかし想像ばかりしても始まらない。荷物はポーターが部屋まで運びドアを開けてくれた。広々と清潔で落ち着いた部屋が用意されてる。そして部屋の奥に開かれた明るい窓際の大きなベッドに一人、小さなお婆さんが膝を立て不釣合いなくらい大きく見える本を読んでいた。
「バッ…、婆さんかい…。」
これが正直な気持ち。
赤みがかった白髪のお婆さんは見たところかなりの高齢で、「おや、まぁ」と言った具合にこちらに気づくと本をたたみ、しゃがれた声のゆっくりとした英語で話しかけてきた。一通りの会話を交わすけど、しばらくスペイン語ばかり聞いていたので英語の会話に違和感がある。どちらにしろまともに話せないのでレベル的には大して変わらないけど、ついスペイン語の返事がでそうになり、頭の中はちゃんぽん状態で、これがドリーとの出会いだった。