ウシュアイア
懐かしい針葉樹林の山中をぐにゃぐにゃと進み、ウシュアイアに着いたのは夜中も21時を過ぎた頃だった。
薄明るい夜のためか町は全体がブルーがかっており、海沿いからすぐに勾配のきつい坂道が山の方にむかって続く。
「さて、今日の宿は…」とバスの中で妄想を膨らませてはいたものの、群がってくるはずの客引きはわずか数人、条件にあうものもない。
人の多そうな市街へ足を向け、重い荷物を背負いながらよたよたと坂道を上る。海岸と平行してメインストリートはみやげ物屋が軒を連ね、どの店の店頭にもペンギンが飾ってある。薄暗くて良く見えない中を手当たり次第当たってみることにしたが、一軒目通りに面した3ツ星ホテル。シングル・ダブル・トリプル全て満室。2軒目、満室…
薄暗かった町がどんどん暗くなり始め、人通りも減りつつある。南の果ての観光地をなめていた。
想像していたより宿は少なく、中心部から少し離れたバッパー宿の扉をダメもとで押した。先客の対応と電話応対で忙しそうなフロントで順番待ちをする。
「思えば遠くへ来たもんだ」なんて旅情に浸る余裕もなく、逆さまの地球儀を眺めていると急に喉が渇いてきた。考えてみれば、バスに乗ってコーヒーを飲んで以来、水分を取っていない。もともと私は水分がなくても気にならないほうで、高校時代に脱水症状でぶっ倒れて以来、水分をこまめ摂るように言われていたのを思い出した。
ようやくアラブ系の男性の手続きが終わり、応えは予想通りの「Full」、首を横に振られる。
しかし順番待ちの間、ガブガブ水を飲む私をよほどのアホかと思ったのか、親切なフロントの兄ちゃんは忙しそうな中2,3軒電話をし、あいているバッパー宿を紹介してくれ、この日の宿はなんとか決まった。