LILIの家
町で一通りの用事を済ませ、この日の夕食のヨーグルトとパン、そして缶詰の桃がのったケーキを一切れ買って宿に戻った。ここの建物、町外れの民宿でバラックのような外見ながらドミトリーとシングルを備えており、中はきれいに片付けてある家庭的な雰囲気。というか、客引きの彼の家族らしき人が大きなテーブル状のストーブのあるダイニングでくつろいでいる。
案内された部屋は壁がこってりした黄色で、明かりは裸電球が一つ。窓は天井に煙突のようなでっかい穴があり、そこにトタンがかぶせてある。
「2,3日滞在するならこれでいいや」とは思ったものの、前述したようにまずドアが閉まらない。床に敷いてある絨毯がゴリゴリひっかかり、どう頑張っても5㎝ほどの隙間が出来る。開け閉めするには両手で力いっぱい押さなければならない。
そして強烈なのは夜の冷え込みだった。宿の共有空間のリビングは暖房がガンガン焚かれ、半袖短パンでビールを飲んで過ごせる位の暖かさ。しかしドミはじめ個室は寒い。なんせ北半球で言えば北海道よりはるかに北の地域で、ストーブがない部屋とはいかほどのものか想像ができるだろうか。
日記を書くにもベッドで4枚重ねの毛布に包まっていなければ、ガタガタと震えが来る。しかもベッドの真上の「天窓」から隙間風が吹き込んでくる。安いし宿の雰囲気も家庭的でいいのだけど、この部屋はたとえるなら座敷牢。
ところで、この宿で私の面倒を何かと見てくれたのは流暢な英語を話すフアンで、右手首から肘までにタトゥーを入れ、どこかとぼけた印象。ドミの一室に寝泊りしチャウチャウを飼っている。しかし、どうみてもこの家族とは違うようで客引きの兄ちゃんとは友人で居候なのか。ともかく彼にはいろいろとお世話になった。
