チリへ
チリのプエルト・ナタレス行きバスは満員で、隣はよくしゃべるスペイン人の男性だった。この男、とにかくよくしゃべる。私が車窓からの眺めを楽しみたいことに気づくと、通路を挟んだ女性にひたすら話しかける。おまけに見せてくれたデジカメの画像は、すべてカメラ目線の笑顔で決めポーズ。
これまでの日記を整理しながら、ザックに残っていた干からびかかったパンを口に放り込み、山に近づくにしたがって増える緑を眺める。やがてアンデスを抜ける辺りでチリへの入国。全員バスから降り、手荷物・大荷物を持ってイミグレーションへ向かった。
機械的なアルゼンチンの出国手続きに比べるとチリは入念さが違い、パスポートチェックの後は荷物の検査がある。大きな台で係官が荷物を開き、手を入れてはゴソゴソと中を探る。60人以上いる乗客乗員全員に対して数人の係官でこれをするのだから、たいした手間になる。
「これは長いな…」
この先のプエルト・ナタレスでの宿探し、今日の晩御飯はまたパンと水か…など時間つぶしと実用を兼ねた考え事はしていたけど、まさか自分が長引かせる張本人になるとは、このときは気づいていなかった。
